2014 思春期保健ワークショップ

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2014.11.18

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ジョイセフが国際協力機構(JICA)の委託事業として実施する「思春期保健ワークショップ」が、2014年5月21日~6月14日に行われました。

「思春期保健ワークショップ」は、若者のリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康/以下:RH)の向上を目的として、開発途上国のNGOや政府の思春期保健関係者を対象に、1999年以来、毎年実施しているプログラムです。今回はウガンダ、スワジランド、ナウル、レソトの4カ国から9名の研修生が来日し、3週間にわたるカリキュラムに参加しました。

若者のリプロダクティブ・ヘルスを取り巻く状況の改善のために

若者の人口比率が高く、半分以上を占める国も多い開発途上国では、若者のリプロダクティブ・ヘルスの向上は大変重要な課題のひとつです。性や保健に対して正しい情報を得る機会やサービスが少ないために、思春期に属する多くの若者たちが、望まない妊娠や出産、安全でない人工妊娠中絶、HIV/エイズを含む性感染症のリスクに直面しているからです。

とりわけ、女の子を取り巻く環境は深刻で、若年での結婚、妊娠、出産によって教育の機会を奪われ、そのことが人生の選択肢の幅をせばめる原因にもなっています。また、妊娠・出産・中絶は、思春期の女の子の主な死因でもあります。

こうしたことから、思春期保健に関する若者にやさしい環境づくりは彼らの命と健康、さらには自己肯定感といった人間の尊厳を守る意味でも、とても大切なことと言えます。

本ワークショップでは、参加国それぞれの取り組みや日本の思春期保健教育(性教育)について共有し、フィールド視察や討議を通して、自分たちの抱える課題を整理し、今後の活動計画を作成、発表してもらうまでをカリキュラムとしています。ワークショップでの学びを自国でどのように還元できるかについて、参加者や専門家と共にじっくりと考察できるとあって、毎年、大変高い評価を得ています。

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3週間にわたるワークショップ 「学ぶ、見る、考える」

研修は大きく3つに分けて行いました。

第1週目:各国の事例の共有と学びの時間

それぞれの国が抱えている思春期保健に関するさまざまな課題を再確認し、若者の健康をサポートする上で必要な要素を抽出しました。その中で挙げられた①正しい情報の提供、②若者に身近で親しみやすいサービスの提供、③各セクターや官民の連携による若者を支援する態勢づくり、の3つの要素について、討議を重ねました。
また、若者が主体となることの重要性や若者クリニックのあり方についても検討が行われました。
ワークショップで迎えた講師陣からは、日本が力を入れる発達年齢に応じて段階的に性とセクシュアリティの情報が提供される性教育の取り組みや、若者への健康教育を生涯の健康につなげて考える視点などについて紹介していただきました。

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県立こども病院

県立こども病院

静岡県知事表敬

静岡県知事表敬

第2週目:フィールド視察

思春期保健に自治体を挙げて取り組んでいる静岡県を訪れ、第1週目で理論的に理解したことを、実際に現場で見て、「実現可能」であると確認してもらいました。

訪問先

  • 思春期健康相談室「ピアーズポケット」
  • 静岡県立こども病院
  • 静岡県庁
  • 焼津市立焼津中学校
  • 静岡県立静岡北特別支援学校南の丘分校
  • 静岡県知事(表敬)
  • NPO法人魅惑的倶楽部

静岡県での研修最終日だった6月5日には、「静岡県研修総括」をグループ討論形式で行い、学びのポイントをまとめました。

最終週:活動計画作成および発表

フィールド視察の後は再び東京に戻り、討議と考察の時間に。帰国後の活動計画を作成し、発表が行われました。

各国の活動計画目標

レソト

 「思春期のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス(ASRH)を改善するために」
2014年7月から2017年7月までに、思春期保健に関する包括的な知識の普及を目的とし、学校訪問(初等学校)やファミリーサポートにより、10歳から12歳の思春期初期の若者が思春期保健に関する正確な情報を入手する割合を20%上昇させることを目指す。

HOW
  • 学校訪問に、年齢相応の包括的な思春期保健に関する情報提供を組み込む
  • ピアエデュケーターの育成、トレーニング強化
  • コミュニティ全体で若者をサポートできる体制づくり

ナウル

「ヘルスプロモーションセンターにおける思春期の若者のエンパワーメント」
ヘルスプロモーションセンターを利用する若者(10~16歳)の割合を2014年12月1日までに15%から75%に上昇させる。

HOW
  • ヘルスプロモーションセンターの開館時間の延長
  • スタッフ研修の実施
  • 定期的な会議、講演の実施

ウガンダ

「ウガンダにおける思春期の若者を対象とした健康教育の強化」
2015年12月末までにIPPFウガンダ(RHU:ウガンダリプロダクティブ・ヘルス協会)および保健省エンテベ総合病院において思春期保健サービスを利用する青少年(10~29歳)の割合を10%上昇させる。

HOW
  • 既存・新規ボランティアの研修の実施
  • 対象地域における教育部門との連携・協力の強化
  • オンライン・電話相談開設

スワジランド

「スワジランドにおける青少年のための革新的なコミュニケーション・アプローチ」
2015年までにHhohhoとManzini地域の選ばれたコミュニティと施設において、青少年(10~24歳)のSRHに関する包括的な知識とカウンセリングの需要率を10%上昇させる。

HOW
  • セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスに関する情報の普及
  • 年齢に応じた教材を増やし、若者の利用を増進
  • 視覚教材を効果的に使用するための指導者に対するトレーニングの実施

帰国後は、活動計画をそれぞれの所属組織において練り直し、実施に向けた改訂版を作成してもらいます。その後、目標ゴールを目指し、動き出すことになります。

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学びのポイントまとめ

学びのポイントまとめ

焼津中学校

焼津中学校

静岡北特別支援学校南の丘分校

静岡北特別支援学校南の丘分校

フィールド視察中にはリラックスタイムも

フィールド視察中にはリラックスタイムも

フィールド視察で訪れた静岡県の取り組みや、人びとの温かさに感銘を受けた参加者の声をご紹介!

訪問先の皆さんは惜しみなく、経験したこと、課題や取り組みを共有してくださいました。心がつながった感じを忘れません。 
~ デッタ(ナウル)

心からの歓迎に感動し、たくさんいただいた情報や学びを大切に持って帰国します。
~ アモティ(ウガンダ)

訪問先の皆さまが歓迎してくださり、私は驚くほど新しい刺激を受けました。そして多くを学びました。皆さんからいただいた親切な対応は生涯忘れることはありません。MATA AIMASHO(また会いましょう)!
~ トゥース(スワジランド)