妊産婦の健康改善ワークショップ 8カ国から11人が参加

2017年7月11日

  • 活動レポート
  • 人材養成

ジョイセフはJICAの委託を受け、妊産婦の健康改善ワークショップ(A)を2017年5月17日~6月10日に実施しました。アフガニスタン、ガイアナ、スーダン、タジキスタン、ニウエ、フィリピン、ミャンマー、モルドバの8カ国11人が、日本の母子保健向上の歴史や取り組み、研修員同士の情報交換からヒントを得て、帰国後の活動計画を完成させました。

日本の離乳食の展示(静岡県三島市)

11人は行政組織やNGOに所属しています。研究機関や病院などで、マネージャー、医師や看護師として活躍する一方で、保健分野の予算不足に伴う人材不足、緊急時の患者の搬送の橋渡しや照会(レファラルシステム)の未整備、適切な医療が受けられないことによる妊産婦死亡率の高さ、結婚年齢が低いことや家族計画のアクセスが難しいことによる若年妊娠や多産、正確な統計のとりにくさ、女性性器切除(FGM)といった有害な慣習など、それぞれの国や地域の課題に頭を抱えています。

今回のワークショップでは、それぞれの課題の解決に向け、どのように最初の行動を起こすか、自分ができることを見つけることを最大の目的としました。最初は大きな課題に目がいってしまった研修員も、各国の課題共有とディスカッション、葛飾赤十字産院(東京)の訪問のほか、静岡県・市・町の視察(乳幼児の栄養指導、母親の個別相談、思春期保健、静岡独自の体操や緑茶を利用した健康増進プログラム、保育所・病院・特別支援学校・高齢者福祉施設などが集まった掛川市のワンストップサービス施設「希望の丘」など)、や静岡県立こども病院のクライアントフレンドリーサービスの学びなどを通じて、自ら取り組める活動計画を作りました。

葛飾赤十字産院(東京都葛飾区)で妊婦エクセサイズを体験

静岡県庁で知事と意見交換

フィリピンのアブラ州ルバ市保健事務所医務官のアンセア・マリー・ガバオエンさんは、フィリピンは妊産婦の健康は改善傾向にあるものの、思春期のセクシュアル・リプロダクティブヘルスサービスが不十分なため、活動計画に、若者がイベントなどを通じて集まったり、相談したりできる施設の整備や、同年代のボランティア活動の強化を入れました。

タジキスタンの国立産婦人科・周産期科学調査研修所の産婦人科医のロージヤ・オシュールママドバさんは、出産後の女性のケアが不十分である現状を受け、周産期医療センターから退院後まで、女性の継続的なケアのために、同センターとコミュニティ保健センターとの連携強化を目標としました。

ミャンマーの保健スポーツ省モン州公衆衛生局長のゾウ・ミン・トゥンさんは5Sに感銘を受け、活動計画に含めました。5Sは「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の各ステップの頭文字をとって名付けられた標語です。机の整理や、ラベルなどを用いた書類の分類など、個人ででき、職場環境全体の改善にもつながるので、職員の自信や職場全体のモラル向上にもつながり、お金もあまりかかりません。(参考)

ゾウさんは、帰国直後から、さっそく事務所で5Sチームを任命し、ゴミ分別も始めました。実は、これまで事務所は整頓されておらず、探し物が大抵すぐには見つかりませんでした。10年前のポスターまで貼ってあったそうです。
今後は、実践状況を写真に撮ってモニタリングします。また事務所だけでなく、管轄する支部など、より広い地域でチームを組織し、多くの職員に5Sを伝えたいと考えています。

研修員の皆さんの感想や活動計画を紹介します。

  • ソジュード・マフムッド・モウサ・イスハグさん/
    アフメッド・アミン・モハメッド・アフメッドさん
    (スーダン)


    日本の経験や知識を教えてもらうだけでなく、討論など双方向で研修ができて、学びが深まった。日本は保健システムが機能し、乳幼児から高齢者まで、関係者の連携やレファラルシステムがよい。スーダンも保健関係者は熱心で、妊産婦死亡率の削減や女性性器切除(FGM)撤廃などに熱心に取り組んでいるが、関係者間の連携ができていないことがある。コーディネーションの役割がとても重要だと思う。

  • ファルザナ・カユミさん/
    シェケバ・ニアズィさん
    (アフガニスタン)


    アフガニスタンでは病院のレファラルシステムがあまり機能せず、救急搬送ができずに流産で妊婦が危険な状態になったり、乳がん治療で国外に行かざるを得ないこともある。医師は都市に偏在し、農村部少ない。三島市の出産後の細かいケアや、掛川市の「希望の丘」からは特に学ぶことが多かった。アフガニスタンはJICAなどが母子健康手帳の普及をしているので、効果的に使うための取り組みを活動計画に含めた。

  • ゾウ・ミン・トゥンさん / トゥン・ミンさんさん
    (ミャンマー)


    3度目の来日。10年前と比べて英語を話せる日本人が増えた印象がある。妊婦健診はミャンマーではなかなかできていない。夫の理解が深まるような研修や、クライアントフレンドリーサービスを普及したい。ミャンマーでは皮肉なことに助産師などがNGOや国連組織のたくさんの同じようなトレーニングで疲弊し、患者にきちんと向き合えなくなっている。
  • ロージヤ・オシュールママドバさん
    (タジキスタン)


    母子健康手帳がとてもよい。タジキスタンでも同様の取り組みはあるが、一度手帳を取りに来るだけで、その後のフォローが不十分だ。また、若者向けクリニックや相談施設、出産前後の両親学級や家庭訪問もよい。タジキスタンの地方部ではそのような取り組みは難しい。家族計画など多くのセミナーをしているが、参加者が集まらない。また女性は副作用を恐れて経口避妊薬を使わない、男性は使用感が悪いとコンドームを使わないことも多く、農村部では、多産になりがちだ。
  • セーデル・ヴォン・マクワットさん
    (ガイアナ)


    多くの国の研修員からも学べてとてもよかった。日本では「acceptability」「affordability」「availability」「accessibility」の4Aが実践され、自治体の取り組みも進んでいる。また、静岡の健康寿命の長さには驚いた。ガイアナの平均寿命は約66歳。ガイアナは地域によって医療格差が顕著なことが問題で、沿岸部の都市に高度医療施設が集まり、内陸部の貧困層は質の高い医療にアクセスできない。活動計画には、HIVの母子感染を減らすことを含めた。
  • ミハイル・ストラトゥラットさん
    (モルドバ)


    日本には子どもから高齢者まで、細やかな健康維持や改善に向けた対策がある。モルドバでは、母子保健というと医学的なアプローチに偏りがちなので、子育て支援の環境整備や母親のストレス軽減など、社会的・心理的な問題へのアプローチが少ない。日本人は優しくて時間に正確だった。
  • アンセア・マリー・ガバオエンさん
    (フィリピン)


    クライアントフレンドリーサービスや病気予防など健康の啓発事業が印象的だった。フィリピンは出産時の施設の利用や技術が高い助産師の配置などは普及している。しかし、思春期へのアプローチはまだ弱い。若者に親切な、沼津市の思春期健康相談室「ピアーズポケット」のような活動を強化したい。
  • テスル・タニア・ジャンスリア・ソファイ・タハファヴィリアムさん
    (ニウエ)


    ニウエは人口1600人ほどの国で、大きな病院が一つだけ。国の規模を考えると無理もないが、病院内で分野がきちんと分かれていないので、日本のように、高度医療や専門医療など、細かく分担ができるとよい。活動計画は子宮頸がん予防(HPV)ワクチンの男女とも学生への接種。保健関係者で合意を得るのは簡単でも、学校や行政などの関係者の理解を得るのが難しいので、ていねいに説明したい。日本人のきめ細かくて優しいところが好き。

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