2023年10月5日

ガーナから、10年後の便り~

2023年9月、長崎大学大学院 熱帯医学・グローバル研究科の相賀裕嗣教授から、私の同僚に届いた一通のメールに、嬉しさで胸が一杯になりました。
「仕事でガーナ、イースタン州に行ってきました。ジョイセフのプロジェクトの活動が、コミュニティーまで浸透して、維持されていることが確認できました。」というのです。相賀先生の目的は別にあって、たまたま知り得た状況とのこと。であれば嬉しさ倍増です。ありがたいことに、同行されていたJICA(国際協力機構)ガーナ事務所の方が、ジョイセフの現地スタッフに電話をしてくださり、そのことを伝えてくださったとのことでした。現地スタッフも、さぞかし喜んだと思います。

今から約10年前、2011年後半から~2014年後半の3年間、ジョイセフが、ガーナ保健局と協力して実施したプロジェクトの後日譚です。

場所は、アクラから北へ車で約4時間のイースタン州コウ・イースト郡。当時は、住民のニーズに応えるための保健施設がない農村地域でした。そこに、日本の外務省の資金によって、妊産婦さんたちが産前産後健診を受けて、安心して安全に出産できる施設を作りたいと、助産師が常駐するリプロダクティブヘルス(RH)センターを建設しました。また、その周辺の(といっても、歩けば何時間もかかる場所ですが)プライマリヘルスケアが地域の人たちに届くようにと、3カ所の村に診療所を設置しました。施設の建設だけでなく、保健スタッフの技術向上、地域で活動する保健ボランティアの育成や教材の制作など、様々な活動を実施しました。

保健ボランティアは、大変な仕事で、無償で地域の人たちの健康のために活動することが期待されています。家庭訪問して、妊婦さんに健診にくるように伝えたり、人びとを集めて、保健の知識を伝えたり、正直、日本で、私が同じように活動できるかと問われたら、とんでもなく難しいと思います。強い気持ちや責任感がないとつとまりません。

完成したRHセンターは、遠くからでも木々の間に緑色の屋根が見える立派な施設でした。保健ボランティアさんたちも、張り切って活動すると言ってくれました。

プロジェクトは無事に終了。あとは現地の人たちに任せて、日本人は立ち去ることがお約束。施設の維持管理、質を担保した保健サービスの継続には、ガーナ保健局が予算を確保しなければならないし、地域での保健ボランティアの活動には、コミュニティーの協力が継続されることが必須です。ガーナの人たちにとって、本当の活動はそこからなのです。プロジェクトが終われば、簡単には訪問できなくなり、首都アクラかも遠い現地がどうなっているのか、実際の様子を知ることが難しくなります。

だからこそ、10年後に届いた相賀先生からのメールに、私たちは感激したのです。

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勝部 まゆみ
UNDPのJPOとして赴任したガンビア共和国で日本の国際協力NGOジョイセフの存在を知り、任期終了後に入職。日本赤十字でエチオピア北部のウォロ州に赴任するために一旦ジョイセフを退職、3年後に帰国・復職。ジョイセフでは、ベトナム、ニカラグア、 ガーナ、タンザニアなどでリプロダクティブ・ヘルスプロジェクトに携わってきた。2015年から事務局長、2017年6月から業務執行理事を兼任し、2023年6月に代表理事・理事長。