2024年4月6日

世界のSRHRニュース:8 タイ、アフリカ

世界で起きているセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)関連のニュースをお届けします。

News1: タイで同性婚合法化へ

【出典】
2024年4月2日   フランス24 ”Thailand moves closer to legalising same-sex marriage as bill sails through senate

【概要】
2024年4月2日、タイの国会上院は、下院通過を受けて、同性婚を認める法案を賛成多数で可決した(賛成147人、反対4人、棄権7人)。同性カップルに男女の夫婦と同等の法的権利を認める内容で、今後国王の承認を経て実現すれば、台湾、ネパールに続きアジアで3例目となる。

LGBTQの活動家たちは、10年以上にわたって同性婚の権利を求めてきたが、度重なるクーデターやデモによって実現が阻まれてきた。

タイのセター首相は3月27日、X(旧ツイッター)に「法案可決はタイ社会の総意であり、社会平等を目指し、違いを尊重しながら共に歩むタイにとって誇らしい瞬間だ」と投稿した。

【参考】
Marriage For All Japan「世界の同性婚

News2: アフリカを取り巻く中絶アクセスの状況

【出典】
2024年4月2日 仏AP通信 ”Abortions are legal in much of Africa. But few women may be aware, and providers don’t advertise it

【概要】
アフリカでは近年、中絶の規制を緩和している国が20カ国以上に増えているが、多くの女性は必要な情報を得られず、適切な中絶手段にアクセスできずにいる。ガーナでは1985年、コンゴ、モザンビーク、エチオピアなどでも中絶は合法化されているが、近年はバックラッシュの勢いが増し、警戒心を強めている医師や看護師が、積極的に中絶手術の情報を開示していないことが一因とされている。

2005年に発効された「アフリカ人権憲章に基づく女性の権利議定書(マプト議定書)」では、アフリカ連合に加盟する55カ国中、議定書を批准した42カ国に対し、性的暴行、近親相姦、母体や胎児の精神的・肉体的健康を脅かす行為があった場合、薬による中絶を受ける権利を女性に認めるべきだとしている。このような議定書があるのは、世界でもアフリカだけだが、中絶へのアクセスを法律で認めていない国もある。

世界37カ国、アフリカ全土でSRHR支援をしているイギリスのNGO、MSI Reproductive Choicesは、エチオピア、ナイジェリアなどで、反中絶団体から職員が繰り返し攻撃を受けていると報告している。これらの団体は、保守的なキリスト教系団体から資金提供を受け、近年では組織化が進んでいるという。

また、世界最貧国の一つであるコンゴでは中絶が合法化されているにもかかわらず、中絶を望む女性に向けたパンフレットに書かれている情報が、わかりにくく暗号化されている。さらにMSIの調査によれば、米Google社、Meta社は、ガーナ、ナイジェリア、ケニアや中南米、アジアなどでも中絶を含むSRHRに関する正確な情報へのアクセスをブロックする一方、反中絶団体の誤った情報や広告を承認しているとのこと。

ガーナで中絶を求めた25歳のエファは、信頼性の高い情報にアクセスできず、家族にも手術のことを話せず、中絶費用(約77ドル)も大きな負担になったとし、これは多くの女性たちが直面していることだと語っている。

【参考】
2024年3月27日 英MSI Reproductive Choices “Digital Disparities: The global battle for reproductive rights on social media

News3: コンゴ、コバルト鉱山周辺に住む女性にSRH関連の健康問題が急増

【出典】
2024年3月28日 英ガーディアン紙 “Staggering’ rise in women with reproductive health issues near DRC cobalt mines

【概要】
コンゴ民主共和国のコバルト採掘地域に住む女性や少女たちの間で、流産、性感染症や先天異常などの、生殖に関する深刻な健康問題が急増している。イギリスの人権団体Rights&Accountability in Development(Raid)と、コンゴのNGO Afrewatchによると、コバルト鉱山地域に住む144人を対象に調査したところ、半数以上(56%)が、自身や家族のSRH(性と生殖に関する健康)について何らかの問題があると回答した。

原因と見られているのは、付近の川の水である。2024年3月の調査結果によると、すべての河川と湖の水のpH値が低く、科学者は、こうした水質の酸性化の原因は明らかに工業汚染によるものであり、魚類は生息不可能となり、人や動物にとって有害だとしている。中でも家事を担っている女性は、炊事、掃除、洗濯などで水を使う機会が男性よりも多く、たとえ飲んでいないにしても、婦人科系の問題が起こりやすい。

また、報告書によると、どの鉱山会社も国の法律で義務づけられている最低限の給水場所を設置しておらず、世界保健機関(WHO)が定めている、飲用および衛生状態を保つために最低限必要な水、1人あたり1日20リットルの基準も満たされていなかった。

コバルト鉱業と先天異常の相関関係については、2020年に医学誌ランセットが、銅山やコバルト鉱山で働いていた親の子どもは、先天異常の割合が大幅に高いとの調査結果を報告している。

コバルトは、電気自動車や家庭用品の電池に使用されており、グリーン・エネルギーへの移行とともに近年増産されてきた。しかし、漁業と農業に従事する地元の人々の生活は貧しく、水の汚染がそれに拍車をかけている。

【参考】
The Lancet “Metal mining and birth defects: a case-control study in Lubumbashi, Democratic Republic of the Congo

(編集後記)
いくつか観てきた女性のエンパワーメント映画の中でも、インドのドキュメンタリー作品「燃えあがる女性記者たち(Writing with Fire)」は秀逸でした。カースト制で差別を受ける女性たちが新聞社を立ち上げ、SNSなどを活用してさまざまな挑戦をし、大きなうねりを生み出す。女性記者たちの凛とした姿勢と自信をつけて輝きを増していく姿に心を打たれました。日本とは環境が大きく違うのに、「家族」の中での女性たちの悩みが同じというところにハッとさせられます。(すなみ)

ジョイセフ 編集室