2024年3月11日

世界のSRHRニュース:6 ガーナ、フランス、アフガニスタン

世界で起きているセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)関連のニュースをお届けします。

News1: ガーナで反同性愛法が成立

【出典】
2024年2月28日 英ガーディアン誌 “Ghana intensifies crackdown on rights of LGBTQ people and activists
2024年3月4日 ガーナ放送協会 “Female inclusivity in Ghana’s legal systems

【概要】
2024年2月28日、西アフリカのガーナでは、「反同性愛法」が国会で可決された。これは、LGBTQなど性的少数者の権利を厳しく制限するもので、アクフォアド大統領は同性婚を認めない姿勢を示している。

この法案のもと、同性愛行為は禁錮6ヶ月~3年、LGBTQの権利を擁護した場合はさらに厳しく、禁錮3~5年の実刑判決を科される可能性がある。新法は、キリスト教やイスラム教などの伝統的指導者層から幅広い支持を得た。現在アフリカでは約30カ国が同性愛を禁止している。

一方、女性の社会的地位という側面において、ガーナでは女性の地位は上昇の傾向を見せている。特に法曹界における活躍が目覚ましく、最近では女性の最高裁判事が任命された。ガーナ法曹協会の会員の30%以上を女性が占め、検察官や裁判官等の職に就くことも多く、大手企業が女性弁護士を優先的に採用する動きもある。法科大学院への女性の入学者の増加も顕著であり、歴史的に不平等であった男女比が、年々改善されている。この変化が、マイノリティの包摂性の促進へとつながることが望まれる。

News2: フランス、世界初の中絶の権利を憲法に明記

【出典】
2024年3月5日 ロイター「フランス上下両院、中絶権利保障の憲法明記を決議 世界で初めて
2024年3月8日 仏France24 “France seals constitutional right to abortion on International Women’s Day

【概要】
2024年3月4日、フランスは中絶の権利を憲法に明記する世界初の国となった。議会両院の議員たちは、780対72で賛成票を投じ、憲法改正案を承認し、エッフェル塔はフランス語の “My Body My Choice”という文字でライトアップされた。3月8日には正式な式典が行われ、モレッティ法務大臣が19世紀の印刷機を使ってフランス憲法に修正条項を記すと、パリのヴァンドーム広場が拍手に包まれた。

フランスで人工妊娠中絶が合法化されたのは1975年。きっかけは、16歳のマリー・クレールが同級生に強姦され妊娠し中絶したところ、母親、同僚、医師が堕胎罪で起訴されたという1972年の「ボビニー裁判」だった。本裁判の弁護士ジゼル・アリミと弁護側証人として出廷した実存主義哲学者のシモーヌ・ド・ボーヴォワールの尽力によって、マリー・クレールは無罪となり、当時の厚生大臣のシモーヌ・ヴェイユ(アウシュビッツの生存者で、フランスで最も愛された政治家の一人)の働きで中絶の合法化が実現した。

2022年11月の世論調査では、フランス国民の86%が人工妊娠中絶を憲法上の権利とすることに賛成している。今回の決定の背景には、2022年に米国の最高裁がロー対ウェイド裁判を覆し、中絶の権利が簡単に脅かされることが明らかになったことや、他のヨーロッパの国々で中絶を規制する動きが強まっていることに対抗するねらいがあるといわれている。今回の憲法明記により、1970年代初めの三人の女性の多大なる功績は、後世に引き継がれた形となった。

【参考】
2024年3月3日 ジョイセフボイス 勝部まゆみ  「フランス:人工妊娠中絶の自由と権利を憲法に明記
2022年7月18日 「弁護士金塚彩乃のフランス法とフランスに関するブログ

News3: タリバン、服装規定を守らない女性のメディア出演を禁止

【出典】
2024年3月1日 ボイス・オブ・アメリカ(VOA)” Taliban Warns of Ban on Female Media Appearance Without Dress Code Compliance”

【概要】
2024年3月1日、アフガニスタンのタリバン当局のファルーク報道官は、ジャーナリスト、一般に関わらず、メディアに露出するすべての女性は、黒い服装とベールで顔を覆い、目だけを見せるようにしなければならないと警告した。報道の自由を守るアフガニスタン・ジャーナリスト・センター(AFJC)によれば、タリバン当局のハナフィ部長は、服装規定を守らなければメディアで働くこと自体、禁じることもあるとした。すでに、女性はテレビドラマに出演することが禁止され、地方によっては女性の声や電話の放送も禁止、ラジオ局やテレビ局で働くことが制限されている。

アフガニスタンでは、女子が中等教育を受けることが禁じられており、国連はアフガニスタンの女性と女児の状況は、タリバンによる占領以来、「非常に悪化」し、ジェンダーに基づく差別は、他に例を見ないレベルだと報告している。一方、タリバン側は、自分たちの統治はイスラム法とアフガニスタンの文化に沿ったものだとし、批判を拒否している。

News4: 女性器切除、世界で2億3千万人以上

【出典】
2024年3月7日 UNICEF “Female Genital Mutilation: A global concern
2024年3月9日 朝日新聞「女性器切除、2億3千万人以上が経験」

【概要】
ユニセフは、3月8日の国際女性デーに合わせて報告書を発表、その中で、女性器切除(FGM)を受けた上で生存している少女や女性の数が、世界で2億3000万人を超えたとした。この数字は、2016年と比べると約15%増、約3千万人増えたという。FGMは、伝統的慣習として女性器の一部または全体を切り取る行為。感染症や不妊症につながりやすく、死亡するケースもある。国連総会は2012年に人権侵害として禁止する決議を採択した。

地域的に最も多いのは、アフリカ、続いてアジア、中東と続く。FGMサバイバーが15~49歳の女性人口に占める割合が多い国は、99%のソマリア、95%のギニア、90%のジブチ、89%のマリとなっている。

ユニセフは2030年までにFGMを撲滅することを目標として取り組んでいるが、進展ペースは遅く、目標達成には減少ペースを27倍速くする必要があると報告している。

 

(編集後記)
エマ・ストーンがアカデミー主演女優賞を受賞した映画「哀れなるものたち」。主人公ベラの型破りな成長ぶりが爽快かつ圧巻で、まさに「私のからだは私のもの」なストーリーでした。映像と衣装の美しさも堪能しました!(すなみ)

ジョイセフ 編集室