内閣府「第6次男女共同参画基本計画(素案)」へパブリックコメント提出
2025.9.16
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内閣府が策定を進めている「第6次男女共同参画基本計画(素案)」に対して、ジョイセフは、SRHR for ALL-すべての人のSRHRの実現を念頭に、以下の5点に関するコメントを提出しました。
1)すべての人のSRHRの実現
2)包括的性教育の義務教育導入
3)近代的避妊法のアクセス障壁改善
4)刑法堕胎罪撤廃と母体保護法の配偶者同意改正、安全な中絶へのアクセス障壁改善
5)G7におけるジェンダー平等及びSRHRの擁護・保障に関する日本政府のコミットメントについて
2024年に開催された、国連女性差別撤廃委員会における日本政府審査で発出された勧告に基づき、日本社会におけるジェンダー平等実現およびにSRHR推進に向けた法整備を求めるコメントをしました。
- 【意見区分】
- 第二部 第4分野 生涯を通じた男女の健康への支援
- 【該当箇所】
- 基本認識
- 【該当ページ】
- 43ページ
- 【意見内容】
- 本邦で生活するすべての人の性と生殖に関する健康と権利(SRHR)の擁護と、性と生殖を含むヘルスケアへのアクセスを保障してください。
日本で生活する私たちはすべて一人ひとり多様な存在です。
1) 必ずしも男女という二元的な性自認で生活をする人ばかりではなく、「男」「女」という出生時に割り当てられた性別と異なる性を生きる人たちがいます。また同性のパートナーを持つ人もいます。性的マイノリティの人が躊躇なく医療を受けられるよう、医療機関・従事者向けの研修などを実施してください。
調査によるとLGBTQ全体で80%近くが、医療・福祉サービスを受ける際に「セクシュアリティに関連する困難」を経験したと回答。特にトランスジェンダー男性・女性は約8割が困難を経験し、その影響で4割が体調が悪くても病院に行けなくなり、4人に1人が自殺念慮・未遂に繋がる等、深刻な状況です。 10代(LGBTQユース)の約54%が過去1年に自殺念慮あり、約20%が自殺未遂を経験。自傷行為も約42%とシス・ヘテロの若者に比べて医療にアクセスできておらず、心身の健康リスクが高い状況にあります。(認定NPO法人Rebit、「LGBTQ子ども・若者調査2025」)LGBTQを含む性的マイノリティの人々が医療を受けやすい環境を作ることは喫緊の課題です。
2) 2003年に成立した性同一性障害特例法の戸籍上の性別変更の要件における、成人していること、未成年の子どもが無いこと、婚姻していないこと、移行先の性別に近似する外観に手術をすること、(第3条第1,2,3,5号)を現在の医学的知見に沿って見直してください。また女性差別撤廃委員会からの勧告(CEDAW/C/JPN/CO/9、パラ42(f))に基づき、同法律第三条第4号の要件により自己の希望に反して不妊手術を受けた人々が賠償を含む効果的な被害回復を受けられるようにしてください。
3) 就学、労働、ボランティア、あるいは観光などたとえ日本に居住していなくても一時的に日本を訪れる人も、様々な形で日本社会に関わっている存在といえます。海外から日本を訪問した人の中には、自国では薬局やユースセンターなどでアクセスができる近代的避妊法(緊急避妊薬を含む)を日本で入手できず、意図せぬ妊娠のリスクにさらされている人がいます。在留外国人向けの医療通訳サービス、医療機関への同伴やヘルスカウンセリングの充実、「やさしいにほんご」を使った医療情報を提供してください。緊急避妊薬の薬局販売は来年開始される予定と報道されていますが、その前段階においても緊急避妊薬の試験販売の対象者に外国人を含めてください。
- 【意見区分】
- 第二部 第4分野 生涯を通じた男女の健康への支援
- 【該当箇所】
- 1 生涯にわたる男女の健康の包括的な支援
- 【該当頁】
- 49ページ
- 【意見内容】
- 女性差別撤廃委員会の勧告に沿って、包括的性教育を義務教育に導入してください。
子どもや若者が自らの性と生殖に関する健康と権利(SRHR)について学ぶことは、生涯にわたって自らの心と身体を守り、健康的な生活を送り、人生を主体的に選び生きていくために欠かせません。
女性差別撤廃委員会の勧告(CEDAW/C/JPN/CO/9、パラ38(c))に沿って、 若年妊娠と性感染症を予防するための責任ある性行動に関する教育を含む、年齢に応じた包括的性教育が、学校教育課程に適切に組み込まれ、定期的な授業が行われ、その内容や使用される言葉について議員や公務員による干渉がないように対処してください。
素案中に「生命(いのち)の安全教育」が網羅され、幼児期からの発達段階に応じた教育の重要性が明記されていることを評価します。生命の安全教育は、性暴力の「被害者・加害者・傍観者」にならないことに重点が置かれていますが、すべての子どもや若者(障害の有無、国籍やルーツ、性自認・性的指向、その他あらゆる多様な背景を含む)が、生涯にわたって自らの心と身体を守り、健康的な生活を送り、人生を主体的に選び生きていくために、以下の項目を追加してください。(1)避妊、中絶を含む科学的根拠のある性と生殖に関する健康に関する情報、性的同意、ジェンダー、セクシュアリティ、他者との健康的な関係性構築、を含むカリキュラムの明確化、(2) 教職員が適切にSRHRを生徒に教えるための研修実施、(3) 家庭・地域社会との連携促進。
プレコンセプションケア5か年計画に基づく様々な施策についても、SRHRのうちとりわけ「性と妊娠」に関する情報提供、医療支援の施策となっている点、一定の歓迎をいたします。この重要な施策が「少子化対策」のみならず、すべての人のSRHRの擁護・保障を担う、包括的な施策となるよう以下の項目を追加してください。(1)避妊、中絶を含む科学的根拠のある性と生殖に関する健康に関する情報、性的同意、ジェンダー、セクシュアリティ、他者との健康的な関係性構築、を含むカリキュラムの明確化、(2) 教職員が適切にSRHRを生徒に教えるための研修実施、(3) 家庭・地域社会との連携促進。
なにより子どもを持つこと、持たないこと、いずれも、個人の自由な選択が尊重される教育及び社会の醸成に力を入れてください。
- 【意見区分】
- 第二部 第4分野 生涯を通じた男女の健康への支援
- 【該当箇所】
- 1 生涯にわたる男女の健康の包括的な支援
- 【該当ページ】
- 46ページ
- 【意見内容】
- 女性差別撤廃委員会の勧告に沿って、国際スタンダードの近代的避妊法利用の障壁をなくしてください
女性差別撤廃委員会の勧告(CEDAW/C/JPN/CO/9、パラ42(a))に沿って、すべての女性と女児、及び妊娠する身体を持つ人に、緊急避妊薬を含む支払い可能な価格の近代的避妊法への十分なアクセスを提供してください。
WHOが近代的避妊法に分類するもののうち、日本で現在入手可能なのは男性用コンドーム、低用量ピル、IUD/IUSの3つで、不妊手術(生殖腺除去によるものを除く)は母体保護法の要件を満たした場合のみ可能です。女性用コンドーム、避妊インプラント、避妊リング、避妊パッチ、避妊注射など女性が主体的に使える避妊法が、日本では入手できません。日本で一番使用が多い避妊法はコンドームで、避妊・性感染症予防の双方に効果的であるものの、男性が主体の点がデメリットです。女性が主体的に使える低用量ピル、IUD/IUSはいずれも医師の診察と処方、処置が必要で保険適用外なため金銭的負担も大きく、低用量ピルは1サイクルが2,000円~4,000円程度、IUD/IUSは装着に約4万円程度の費用がかかります。女性が主体的に使え、入手時に障壁が少なく、支払い可能な避妊法の導入が必要です。
緊急避妊薬を含む避妊薬(具)へのアクセス改善については、2023年7月の国連の普遍的・定期的審査(UPR審査)においても勧告を受け、政府は、「フォローアップすることを受け入れる」と回答しています。入手可能な避妊法を増やし、入手の障壁をなくし、緊急避妊薬の薬局販売を早急に実現してください。
- 【意見区分】
- 第二部 第4分野 生涯を通じた男女の健康への支援
- 【該当箇所】
- 1 生涯にわたる男女の健康の包括的な支援
- 【該当ページ】
- 46ページ
- 【意見内容】
- 以下女性差別撤廃委員会からの勧告(CEDAW/C/JPN/CO/9 パラ42 c~e)に沿って、刑法堕胎罪を廃止し、母体保護法を改正し、女性が自分の意思で、また強制されることなく、安全な人工妊娠中絶を受けられるよう、障壁をなくしてください
現状日本では堕胎罪を残しつつ、優生保護法(1948年成立、1996年に母体保護法に改正)により、「条件付き」の人工妊娠中絶が可能となっています。妊娠をした人が、元の身体に戻るための医療ケアを受けることに条件を課すこと自体、女性・妊娠する身体を持つ人の生殖に関する権利の侵害ですが、特に配偶者要件は身体の自己決定権に第三者を介入させる重大な問題です。さらに人工妊娠中絶の施術は母体保護法指定医に限定され、健康保険の適用外であるため手術費用は12週未満の初期中絶でも9万円から15万円と高額で、医療ケアとしてアクセスの障壁が非常に高いことも問題です。
2023年4月にようやく厚労省で承認された経口中絶薬は、WHO必須医薬品モデルリストにも含まれ、1988年にフランスと中国で初めて承認されて以降、2023年5月現在、96カ国で使用されている薬剤です(Guttmacher Institute 2023)。WHOは、本薬剤は妊娠12週まで使用でき、服用は本人が安心してリラックスできる自宅等の場所でも可能としている一方、日本では9週までと3週も早い期限が付いているのは利用の障壁を無用に上げており、改善が必要です。さらに日本では、母体保護法指定医がいるクリニックで、入院または2回の受診の上、服用し、服用後は入院(院内待機)が必要とされています。薬価5万円の他に診察代金、病院待機の費用がかかります(NHK 2023)。
意図しない妊娠は、日本のように、利用可能な避妊薬(具)の選択肢が少なく、緊急避妊薬へのアクセスが極めて困難な環境においては特に、誰にでも起こりうることです。医療的ケアの一つとして必要な人が、必要な時に支払い可能な費用で、自分が選んだ方法で中絶を受けられることが重要で、早急な人工妊娠中絶ケアへのアクセス改善を求めます。さらに、意図しない妊娠の一番の予防策は、子どもや若者に年齢に適した、科学的根拠に基づいたカリキュラムベースの性教育を学校教育に導入することであることを、再度提言いたします。
- 【意見区分】
- 第二部 第12分野 男女共同参画に関する国際的会強調及び貢献
- 【該当箇所】
- 2 G7、G20、APECなどにおける各種コミットメントなどへの対応
- 【該当ページ】
- 111ページページ
- 【意見内容】
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日本政府が2023年に開催したG7広島サミットにおいて議長国を務め、G7広島コミュニケの作成に当たっても強いリーダーシップを果たされたことを歓迎します。
G7広島コミュニケの中にはジェンダー平等や女性のエンパワーメント、SRHRの実現についても力強い記述がされたこと、とりわけ以下のパラグラフのような力強いコミットメントを歓迎します。
近年紛争や戦争、格差や分断などによって混迷を深める世界において、ジェンダー平等やSRHRのバックラッシュが顕著になりつつあります。国家が個人の性と生殖に干渉し、個人の自由な選択を直接・間接に阻み、「産ませる」政策を講じ、産まない人は社会的に非難されるような風潮を助長するのは、人々の間にさらなる分断を煽る非常に危険なやり方です。
ジェンダー平等の実現とSRHRの擁護・保障において日本が引き続き強いリーダーシップを示すことを強く望みます。
G7広島首脳コミュニケ、パラ43「SRHRがジェンダー平等並びに女性及び女児のエンパワーメントにおいて、また、性的指向及び性自認を含む多様性を支援する上で果たす、不可欠かつ変革的な役割を認識する。」
同「安全で合法な中絶と中絶後のケアへのアクセスへの対応によるものを含む、全ての人の包括的なSRHRを達成することへの完全なコミットメントを再確認する。」
G7広島首脳コミュニケ、パラ42「(…)多様性、人権及び尊厳が尊重され、促進され、守られ、あらゆる人々が性自認、性表現 あるいは性的指向に関係なく、暴力や差別を受けることなく生き生きとした人生を享受することができる社会を実現する。」