知るジョイセフの活動とSRHRを知る

「人づくり」が、世界を変える

2026.5.11

95カ国、3,000人以上。ジョイセフが半世紀以上かけて育ててきた、保健・医療の変革者たちの数です。
一人ひとりが正しい情報とヘルスケアにアクセスし、自らの意思で選択できる社会へ。
その変化は、研修から生まれます。
JICAとともに1968年から続けてきた人材育成の現場を、ここからご紹介します。


「教える」から「ともに生み出す学び」へ

研修では、日本と各国の経験を相互に共有します。日本は母子保健分野において、妊産婦死亡率や乳児死亡率の大幅な改善を実現してきました。その経験を多角的に紹介するとともに、「教える」から「ともに生み出す学び」への転換を意識し、参加型ワークショップなどの工夫を重ねています。

研修は短期・中期・長期の視点で設計しています。特に重要なのは、学びを「やりっぱなし」にしないことです。


研修のクライマックス ー MAPをつくる

3~4週間の来日研修には、1~2週間のフィールド視察が組み込まれています。各国の背景や課題は千差万別。研修員がそれぞれ捉えた課題を、実現可能な規模の活動計画(Mini Action Plan:MAP)に落とし込む作業が、来日研修のクライマックスです。

最終日には、国ごとにMAPを発表します。オンラインで各国の関係先ともなるべく繋ぎ、帰国後の活動を継続的に支援できる体制づくりを整えています。

2025年度は、研修で3つのコースを運営しました。

  1. IMH_妊産婦の健康改善コース_視察先:長野県(JICA東京センター)
  2. MCN_母子栄養改善コース_視察先:北海道(JICA帯広センター)
  3. CoC&UHC_母子継続ケアとUHCコース_視察先:岩手県(JICA東京センター)

主な対象者は、各国の保健省や地方自治体で、母子保健や栄養政策を担当する職員です。

帰国後は約3週間後にオンラインレビューを実施し、進捗を共有します。そして帰国後1カ月のタイミングで、全員が再びオンライン研修に集まりました。

これまでに15カ国22名からアンケートを回収し、さらにインタビューを通じて活動の進捗を確認しました。その結果、研修で得た知識は各国で実践され、MAPも課題を抱えながら着実に進んでいることが明らかになりました。共通していたのは、所属先と計画を共有し、最初の一歩を踏み出している点です。中には「わずか3週間でここまで進むのか」と驚くような進展を見せる事例もありました。

オンライン報告会には上司を招くなど、主体的かつ意欲的に取り組む姿も多く見られ、参加者同士が互いに刺激を受け合う好循環が生まれています。


広がり続けるネットワーク、「大きなファミリー」

過去の研修員にも声をかけると、10年以上前の参加者も参加し、日本での学びを今でも鮮明に覚えてくださっています。現役研修員に対し、先輩研修員が自身の経験をもとに助言する場面では、その言葉が自然と伝わり、深い学びにつながっていく様子が印象的です。

こうしたつながりを通じて育まれるネットワークは、年々広がり続けています。私たちにとっても、この「大きなファミリー」の存在が、次の挑戦への原動力となっています。
 


 

研修後の活動計画 MAP(Mini Action Plan)

以下、2025年度3研修から2つのMAPをご紹介します。

東ティモール:ジトさん

保健省ボボナロ市保健局 
非感染性疾患管理・疫学サーベイランス・統合保健パッケージ課(医師)
母子栄養改善コース

東ティモールは総人口130万人ほどの小さな国。ジトさんは、ボボナロ市地域保健局で統合保健パッケージ課を担当する医師です。

研修後、帰国したジトさんが取り組んだのは、「貧血予防のための農村部妊婦を対象としたパパママ教室」の立ち上げです。研修後わずか3週間のうちに保健局長へ計画を説明し、保健・教育・行政の関係と協議。既存施策との整合性が評価され、後押しを受けられるようになりました。現在は2026年6月の教室開始に向けて、実施計画の効率化と既存教材などの資源共有を進めています。

東ティモールでは、 男女ともに貧血予防に関する十分な情報を持っていないため、 多くの妊婦は貧血の状態にあります(2024年:貧血スクリーニング324名中41.1%)。その結果、出血合併症による母体死亡率も高い状況です(東ティモール国勢調査:2010年:570/10万人、2015年:426/10万人、2022年:413/10万人0)ジトさんが担当するボボナロ県では、母子手帳の普及も始まったばかりです。

東ティモールの家庭では男性が主な意思決定を担うことが多い一方で、母子の栄養を支えるための知識や関わりはまだ十分ではありません。そのため、妊産婦の貧血改善にも課題があります。こうした状況から、母子の栄養改善には男性の意識や行動の変化が重要であり、夫婦で一緒に学ぶ「ママパパクラス」に大きな意義があるとジトさんは考えました。 研修中、先輩研修員の経験談やMAP進捗報告のプレゼンテーションを聞いた後で、皆で食事をしながらジトさんとお話ししました。

「自分も母子保健分野の良いリーダーになりたいんです。今日、オンラインで活動実績やMAP実践の経験談を共有してくださった先輩研修員のように、自分も近い将来、実践模様を次の参加者の皆さんに伝えられるようになりたい。どうしたらその夢が実現できますか?」

このように、穏やかにかつ真剣なまなざしで質問をくださったのが、とても印象的でした。

また、ジトさんは、「すべての男性が、妊婦健診にもっと積極的に関わり、支えてくれることを願っています」というコミットメントを掲げられました!

研修後も、同期の研修員・専門家の講師陣の皆様、そしてジョイセフ研修スタッフは、メッセージアプリのWhatsappで繋がっています。ジトさんにも、日々の進捗をぜひそのコミュニティに、アップロードしてほしいとお伝えしました。一歩一歩をたたえ合い、励まし合い、刺激し合える仲間がいる。2025年研修のご参加者のお一人お一人のご活躍が、本当に楽しみです。
 


 
※十勝毎日新聞2026年2月22日:母子栄養改善コース視察先の北海道にて
 食育を実践している愛国小学校訪問2025年12月3日
(ジトさんが小学生に東ティモールを紹介している様子)

 


 

ソマリア:ナイマさん

連邦保健福祉省 家族保健局 母性・リプロダクティブヘルス課 課長
妊産婦の健康改善コース

ソマリアからの参加者、ナイマさん。ソマリアの妊産婦死亡率は世界6位(2023年)、日本の187倍です。(※出典:worldbank.org

ナイマさんが作成したMAPのテーマは「出産時のケアの質と尊厳向上」です。ソマリアでは、多くの女性は自宅で伝統的な助産師(産婆・TBA)のもとで出産をしますが、病院出産への付き添い者(バースコンパニオン)を推進することで、出産時の支援の重要性を啓発しています。

「出産は女性一人だけの経験ではなく、家族みんなで支えるものだと思います。WHOも、女性が希望する家族などの同伴者と一緒に出産に臨むことを推奨しています。安心できる人がそばにいることで、不安が和らぎ、より安心して出産できるからです。現在、バースコンパニオンは一部の利用者に限られています。一方で、多くの妊婦さんが夫や家族の付き添いを希望しています。私は、妊婦健診を通じて分娩同伴の大切さを伝え、男性の母子保健への参加を広げることで、安心して出産できる環境づくりにつなげたいと考えています。」と語ったナイマさん。

帰国後1ケ月の間には、MAPをより広く伝えることを目的に、テレビ出演もされました。

ナイマさんはとても積極的で、女性としての誇りを持って研修に臨まれました。意見をはっきりと述べ、帰国後も前向きに活動を推進しています。2026年3月、ケニアで開催された母子手帳シンポジウムにも参加し、研修から半年を経たケニアでの再会の様子も、写真で報告が入りました。

来日研修中、長野県の視察から東京センターに戻り、「1、2、3……」と研修員の人数を声に出して確認していた研修担当の有山。その様子を他の研修員から「庭のひよこを数えてる村のお母さんみたい~」と笑われる場面もありました。そんなやりとりの中に、3週間をともに過ごした研修員との温かい空気が宿っています。

世界各国から集まった研修員のみなさんが互いに打ち解け、それぞれの課題に向けたMAPへの意見交換や助言をし合う中で、新しい視点と、「同志」とも言える仲間を得ること。それが、研修の醍醐味でもあります。
 


 
※須坂新聞2025年8月23日:妊産婦の健康改善コース
2025年8月1日長野県須坂市保健センター訪問

 


 
持続可能なコミュニティのための「人づくり」は、ジョイセフが長年取り組んできた分野です。
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持続可能なコミュニティをつくるための『人づくり』

Author

JOICFP
ジョイセフは、すべての人びとが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:SRH/R)をはじめ、自らの健康を享受し、尊厳と平等のもとに自己実現できる世界をめざします