
3月21日は「ランドセルの日」です。
卒業シーズンにあたるこの時期と、「3+2+1=6」で「6年間ありがとう」という意味が込められています。6年間の思い出が詰まったランドセルに、感謝の気持ちを伝える日です。
そのランドセルが、海の向こうで新たな役割を果たしていることをご存じでしょうか。
ジョイセフが2004年に開始した「思い出のランドセルギフト」は、日本で役目を終えたランドセルをアフガニスタンへ届け、子どもたち、特に教育の機会に恵まれにくい女の子たちの就学を後押ししてきた国際協力活動です。
ランドセルは単なる学用品ではなく、「学校に行くきっかけ」になります。日本から届いたランドセルが、貧しい家庭の親にとっても子どもを学校に通わせる後押しとなり、親子の「希望」となってきました。
しかし今、そのランドセルを届けることができなくなっています。
昨年10月、アフガニスタンとパキスタンの関係悪化により、これまで使ってきた輸送ルートが閉ざされました。
ジョイセフは情勢を見極めながら他ルートの模索を続けていましたが、追い打ちをかけるように、イスラエルとアメリカによるイラン攻撃が始まり、中東全域が不安定化。伝統的にアフガニスタンとパキスタンの仲介役を担ってきたイランも自国の存亡をかけた戦いに引きずり込まれ、今年2月末からはアフガニスタンとパキスタンの戦争もさらに激化しています。
地域全体の緊張の高まりは、物流だけでなく、人の移動や支援活動そのものにも影響を及ぼしています。
いま中東では、アフガニスタンとパキスタンの戦争、イスラエルとアメリカによるイラン攻撃、イランによる周辺国への攻撃、イスラエルによるレバノンへの攻撃…と、複数の戦争が同時進行しています。
その中で、すでに多くの市民の命が失われています。

これらの戦争は、誰に、何をもたらすのでしょうか。
日本に暮らす私たちにも影響が及びます。
エネルギー供給の不安定化は、日本における物価上昇や石油由来の必須医療品の供給など、私たちの生活にも深刻な影響を与えることが危惧されています。
また、ジョイセフの国際協力の現場への影響も懸念されます。これまでアフリカへの渡航は中東経由のルートに支えられてきましたが、その安定性が揺らいでいます。今後、原油不足に伴う航空運賃の上昇が続けば、私たちも現地渡航が難しくなり、コロナ禍の際のように、遠隔での事業実施を余儀なくされる可能性もあります。
こうした戦争がもたらすものー
ジョイセフから見えるのは、
学校に通えなくなった女の子たち、
医療を受けられなくなった女性たち、
戦禍によって生活を奪われ、貧困や飢餓に直面する人々、
そして命を落とす多くの市民の姿です。
もともと医療や情報へのアクセスが限られているアフリカの遠隔地などでは、支援が届かなくなることが、そのまま命に関わる問題になります。妊娠や出産、中絶、感染症など、本来であれば防げたはずの理由で命を落とす女性や若者が増えてしまう現実があります。
強大な武力を持つ国々の身勝手な指導者のエゴに振り回され、結局最も大きな影響を受けるのはこうした人達です。公の場でどんなに攻撃を正当化しようとしても、一般市民の命や生活が奪われることは、正当化されるものではありません。

ランドセルの日に願うこと…
ランドセルの日に、「ありがとう」と感謝を伝えること。
その気持ちは、いまこの瞬間にも「学びたい」と願いながら、その機会を奪われている子どもたちへと思いを向けることにもつながります。遠く離れた出来事ではなく、同じ時代を生きる子どもたちの現実として、私たちはそれを受け止めています。
平和が戻り、再び安全にランドセルを届けられる日が来たとき、ジョイセフは「思い出のランドセルギフト」活動を必ず再開します。
そのときには、もう一度、一緒に。より多くのアフガニスタンの親子へ、学びの希望を届けていきましょう。
戦闘が一日も早く終わり、奪われた日常が取り戻されることを。
そして、すべての子どもたちが、恐れることなく学べ、未来を描ける社会が実現することを。
その日を、ただ待つのではなく、願い、声を上げ続け、つながり続けること。
それが、いま私たちにできる行動だと信じています。
- Author

山口 悦子
ジョイセフ事務局長。2004年にジョイセフ入職後、一貫してアジアとアフリカでSRHRを推進する国際協力プロジェクトに従事している。特にHIV/エイズ、妊産婦保健、男性参加、若者のエンパワーメントといった分野で、コミュニティを中心とした仕組みづくりに携わる。JICAのHIV/エイズ専門家としてガーナで5年の経験、JICAインドネシア事務所の保健分野の企画調査員経験を持つ。第二の故郷はガーナ。趣味は犬(ガーナ生まれ)とテニス。
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