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宮崎県男女共同参画センターの外山さんに聞く「学び続ける場」としての役割と広がるSRHRの取り組み

宮崎県男女共同参画センター

外山 有美

2025.9.1

ジョイセフはホワイトリボンランをはじめ、女性の健康と権利を守る活動を行っており、各地の男女共同参画センターとも連携しています。

今回インタビューに応じてくださったのは、宮崎県男女共同参画センターで長年活動を続ける外山有美さんです。

2002年から勤務し、主にジェンダー平等の啓発に携わってきました。

ホワイトリボンラン宮崎拠点の立ち上げにも関わり、近年では、包括的性教育(SRHR)の普及にも力を入れています。

偶然のきっかけから始まった男女共同参画との関わり

Q:外山さんがセンターに関わるようになった経緯を教えてください。

2002年から宮崎県男女共同参画センターで働いており、今年で23年目を迎えます。大学では福岡で心理学を学び、卒業後は病院に勤務していました。

働きながら、心理や相談に関する勉強会に参加していました。ある時、男女共同参画センターで相談員を募集していることを知り、面接を受けました。

ただ、当時はまだ若かったため、相談員は難しいと判断され、啓発部門を担当することになったんです。

しかし、市民向け講座や学習会に携わるなかで、「大人になっても学び続けることの大切さ」に気づけたのは大きな収穫でした。

契約満了を迎える頃には宮崎でも男女共同参画センターが立ち上がり、縁あって帰郷。以来、現在まで勤務を続けています。

男女共同参画センターは「学び」と「相談」の拠点

Q:男女共同参画センターはどのような場所だと説明されますか?

センターは「大人になっても学び続けられる場」だと考えています。学ぶことで新しい気づきが生まれ、行動が変わっていく。その変化を後押しするためのサポートやアイデアを提供する場所です。

もう一つの柱は「相談」です。悩みを一人で抱えていると解決が難しいものですが、誰かと一緒に考えることでモヤモヤがほぐれ、気持ちが整理されます。

必要に応じて情報を提供しながら、一歩前に進むためのお手伝いをしています。

青島から全国へ広がったホワイトリボンラン宮崎拠点

Q:ジョイセフやホワイトリボンランとの出会いを教えてください。

ジョイセフの方から声をかけていただき、宮崎でも拠点をつくろうということで、2018年から参加することになりました。

はじめてのRUNイベントは不安でしたが、爽やかな青島の早朝に新しい参加者と出会えたことがとても嬉しかったのを覚えています。

以来、毎年続けています。青島の地域の方々ともつながり、ヨガやランニング指導を取り入れるなど、だんだんと広がりを感じています。

初経キット配布が生んだ新しい気づきと共感

Q:ホワイトリボンランでは初経キットも配布されましたね。反応はいかがでしたか?

とてもポジティブでした。男性の参加者も興味を持って自然に受け取ってくださいました。長年「隠すもの」とされてきた生理のこと。これを知る機会は、男性にとっても必要なんだと実感しました。

その後の「ミモザフェス」でも配布し、小さなお子さんと一緒のお母さんたちが喜んで受け取ってくださいました。

防災に関するイベントでも配布しており、防災士や自治会長など男性の方々も真剣に受け取ってくださっています。

ピア・アクティビスト研修で若者と地域をつなぐ

Q:昨年度から宮崎でも始まったI LADY.ピア・アクティビスト養成研修について教えてください。

性教育やジェンダー教育の遅れを日々痛感しており、もっと継続的に学ぶ機会をつくりたいと考えていました。

そんなときにジョイセフのI LADY.ピア・アクティビスト養成研修を知り、「これだ」と思ったんです。

翌年には、県立看護大学の協力も得られ、ようやく実現にこぎつけることができました。
研修には若い世代や地域の男女共同参画推進員、助産師さんなど、多様な人々が参加し、新しいつながりも生まれました。

一方で、学生は実習等で多忙なため、グループ活動を続けるのが難しい面もありました。
それでも、アンケートには、たくさんの気づきや「自分をもっと好きになろうと思った」と書いてくれた人が多く、自己肯定感の向上につながったことは大きな成果だったと感じています。

宮崎ならではの課題は中絶率の高さと検診率の低さ

Q:宮崎県ならではの課題は何でしょうか?

人工妊娠中絶の割合が高く、性感染症が多い一方で、女性特有のがん検診の受診率は低いといった特徴があります。

背景には、女性が自分の健康を後回しにしてしまう傾向が強いことがあげられるのではと感じています。

女性の人権に関わる取り組みをしていると、「女性の方が強い」なんていわれることもありますが、実際には、家族など周囲を優先する人が多く、その結果として自分を大切にできていないのではないでしょうか。

自分も周りの人も大切にできるよう意識を変えていくことが、今後の大きな課題だと思います。

自分を大切にすることが、人を大切にすることにつながる

Q:今後取り組んでいきたいことを教えてください。

包括的性教育やSRHRをさらに広げていきたいと考えています。同じ問題意識を持つ人たちと顔の見える関係を築き、協力しながら取り組みを進めていきたいですね。

また、防災の分野にも男女共同参画の視点を広げていきたいと思います。男性が多い領域だからこそ、そこから関心を持ってもらえる可能性があると感じています。

さらに、センターの認知度をもっと高めることも大切です。SNSなど新しい発信方法にも挑戦しながら、一歩ずつ着実に広げていきたいと思います。

Author

JOICFP
ジョイセフは、すべての人びとが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:SRH/R)をはじめ、自らの健康を享受し、尊厳と平等のもとに自己実現できる世界をめざします