知るジョイセフの活動とSRHRを知る

男性が加われば、SRHRと母子支援はもっと力強く前進する。その仲間を増やすのが使命です

2025.4.1

ジョイセフ パートナーシップグループ マネージャー
柚山(ゆやま)

ジョイセフの原動力は、企業・団体・個人サポーターを始めとする、市民社会との「パートナーシップ」です。多くの支援にエンパワーされ、さまざまな方法で協働しながら、基本的人権であるSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)を皆で一緒に推進。誰もが自分らしい生き方を選択できる世界をめざしています。

このように市民社会との対話しながら、ファンドレイジングや連携強化を担当する部署が「パートナーシップグループ」です。今回、マネージャーとして部署の活動を支える柚山(ゆやま)を紹介します。柚山は、長女を妊娠中だったパートナーの切迫早産をきっかけに、母子の命を守る活動を志してジョイセフに入職しました。「日本じゃなかったら助からなかったかもしれない。SRHR推進や母子支援に参加する男性を増やしたい」と力を込めて語ります。

ーーこれまでのキャリアを教えてください。ジョイセフで働くことを決めた理由は?

最初の就職は一般企業でした。数年働いた後、以前から関心があった国際協力の道に転職。カンボジアで地雷の被害に遭った人々の支援に携わりました。その後、海外の大学院で国際関係学を学び、結婚後は、家計を支えなくてはと思い会社勤めに戻りました。ところが妻の妊娠・出産がターニングポイントとなり、ふたたび国際協力の道へ。

というのは、実は妻が妊娠中、切迫早産になりまして……。寝たきりで絶対安静、24時間点滴という状態が3カ月も続きました。そして無事に長女が誕生したとき、私は喜びと安堵でいっぱいになりつつ、ふと「もし、これが医療の整っていない国だったら?」と考えました。母子ともに命の危険にさらされ、助かっても後遺症が残ったかもしれません。そして、やはり国際協力を一生の仕事にしたい、特に母子の命を守る活動に関わっていきたいという思いが、あらためて強く湧いてきました。

それからインターネットで求人を探して、見つけたのがジョイセフです。アフリカやアジアで女性と母子の命を守る活動に取り組み、妊産婦死亡を着実に減らしてきた実績がある。グローバルなアドボカシーにも力を注いでいる。すごい団体だと思い、さっそく応募しました。

ーーその時は残念ながら不採用になったそうですね。

はい。それでも諦めきれず、ジョイセフに手紙を送りました。「どうしてもここで働きたい」という思いを込めた手書きのラブレターです。それがスタッフの目に留まり、1年後に欠員が出たタイミングで連絡をいただいて、再チャレンジできることに。今度は採用が決まって本当にうれしかったです。

ーー現在マネージャーを務める「パートナーシップグループ」は、どんな部署ですか?

パートナーシップグループは、市民社会とジョイセフをつなぎ、協力して課題解決に取り組む部署です。支援活動のための寄付募集、ホワイトリボンランなどのチャリティ、役割を終えて寄付されたランドセルをアフガニスタンの子どもたちに贈る活動、企業や個人サポーターとの連携事業など、さまざまな取り組みがあります。一緒に走ってくれる市民社会の皆さんがいることで、ジョイセフは多くの国で活動し、目標をめざしていくことができます。

ーー市民社会とパートナーシップを築くために、どんなメッセージを発信していますか。

ジョイセフは半世紀以上、43の国と地域で女性の命と健康を守るために働いてきました。その活動に共鳴し、多くの法人や個人がパートナーになってくださっています。さらに近年、国内でもSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)に関わる取り組みを強化し、SRHRの推進と認知普及の活動支援を呼びかけるようになりました。

ーーSRHRについて、日本ではどのような課題があるのでしょうか?

日本は医療体制が整っており、妊産婦や赤ちゃんの命は守られますが、SRHRの観点で見ると課題が山積みです。SRHRを簡単に説明すると、自分の体、性や生殖について、つまり自分の人生について十分な情報を得て自分で決められること。そして必要な医療やケアを受けられることです。SRHRがあれば、「性」に関わる問題で不幸になることも、人生の選択肢を失うこともなく、自分らしく生きられる。非常に大切な基本的人権なんです。

たとえば、みんなが性の正しい知識を得て、適切な避妊法を選び、性的同意や体への自己決定権の大切さを知っていれば、意図しない妊娠は起こりにくくなる。その結果、早すぎる妊娠による学業中断や、孤立出産から新生児を遺棄してしまう事件など、多くの問題を「予防」できるでしょう。
ところが日本の現状を見ると、包括的性教育の遅れや避妊方法の少なさ、根強いジェンダー格差などによって、女性は心身にダメージを受け、生き方の選択肢を失うリスクにさらされます。男性の方も生きづらく、男らしさの幻想、経済的プレッシャーや競争、長時間労働を強いられ、自殺や過労死が多いのは男性です。

こうした現実を変え、どの性でも自分らしく幸せに生きられる社会にしていくために、ジョイセフは包括的性教育を求めています。身体や生殖のことだけでなく、人権、多様性、思い込みや偏見をなくすことの大切さを学べるようにして、「一人ひとりが尊重されるジェンダー平等な社会」をめざしたいのです。

ーー日本でSRHRへの関心は高まっていると思いますか。

女性の健康や権利、SRHRに関心を持つ人が増えていると感じます。象徴的なのは、毎年、国際女性デーがある3月にジョイセフが開催するチャリティランの「ホワイトリボンラン」です。「走ろう。自分のために。誰かのために」を合言葉に、チャリティ参加者の健康やウェルビーイングを高め、参加費などの収益は国内外の女性支援に役立てられます。このランへの参加者数や活動拠点が年々増え、全国に広がっているのです。
現在、この活動はよりパワーアップした「ホワイトリボンムーブメント」となって、東京マラソンチャリティ、大阪マラソン、名古屋ウィメンズマラソンなど、8つの大会がジョイセフがハブとなって女性の健康とエンパワーのために連帯しています。

ーーSRHRは女性のテーマとして取り上げられることが多いと感じます。男性である柚山さんは、どんな思いでSRHR推進に取り組んでいますか?

実は、SRHRには男性の参加が不可欠なんです。たとえば低・中所得国で妊産婦死亡が多いのは、病院が遠いなどの要因に加えて、女性が出産ぎりぎりまで家事労働を強いられたり、男性に反対されて病院に行かせてもらえなかったりという「男尊社会」も背景にあるといわれます。女の子が学校に行けず、働いて収入を得ることもできず、低い立場に押し込められてしまう。男性が避妊に協力せず、意図しない妊娠が繰り返されてしまう……。
妊娠出産で命を落とすのは女性ですから、こうしたイシューは女性問題に見えるかもしれません。しかし原因に目を向けると男性が関わっている。女性の死を減らすためにも、健康や生き方の選択を守るためにも、男性の協力が必要です。そして女性の幸せは、まわりにいる人々みんなの幸せにもつながっています。

ーー男性に向けてどんなメッセージを送りたいですか?

難しく考えなくても、恋人や家族を大事にするのは「あたりまえ」。私自身、妻が切迫早産になって、あらためてそれに気づきました。カップルでSRHRを考えるのは、おたがいを大事にすること。言葉や行動で相手を思いやり、意図しない妊娠や性感染症を予防してほしい。とはいえ、きっかけがないと、特に男性はこういう問題に気づきにくいです。だから男性にSRHRを説明するときは、相手に「自分ごと」として実感を持ってもらえるようなメッセージを考えます。私のような経験談とか。

ユネスコによる包括的性教育の国際的ガイドラインでは、「思いやり」といった人間関係で大事なことを、小学生のころから教育の一環として学びます。「友達がつらい目にあっていたら、どんな言葉をかける? どうすればおたがいを大事にできる?」というようなテーマから考え始めて、年齢が上がるにつれて性の話も取り入れていく。根底にあるのは、人と人がおたがいに尊重しあって生きていくことです。

私がSRHRについて理解や共感を広げていく方法も、それにならっています。一般の皆さん、とりわけ男性が「SRHR」と聞いても、ピンと来ないのは当然。自分は昭和世代で頭が固い一面があるので、その気持ちがわかります。だからこそ、同世代の男性たちとコミュニケーションを取っていきたいと思います。家族や大切な人を思いやり、おたがいを大事にするというのはどういうことか、同じ目線で一緒に考えてみたい。

ーージョイセフで働くうえで、最も大切なものは何でしょうか。どんな人がジョイセフに向いていると思いますか?

一番は「熱い思い」ですね。営業経験や語学力も役立ちますが、何より大事なのはハート。ジョイセフのスタッフは、SRHRを「人ごと」ではなく「自分ごと」として考え、現実を変えたいという熱意をもって働いています。そのパッションがある人に、ぜひ仲間になってもらいたいです。

また、私が在籍するパートナーシップグループには、いろんな強みを持ったメンバーがいます。SRHRやジョイセフの活動をわかりやすく伝えて共感を生み出す人、誠実で丁寧なコミュニケーションで信頼を得る人、ひたむきな情熱で周囲を巻き込む人、積極的に支援の輪を広げる人……。うちのチームでは、そんな長所をおたがいに見つけたり、伝え合ったりしています。それが一人ひとりの自信やモチベーションにつながり、自分らしくのびのび働ける職場になっていると思います。

私もチームのみんなが楽しく働けるよう、ハイレベル?な冗談(スタッフにはオヤジギャグと言われてるみたいですが)を言ったり、明るいムードをつくるようにしています(笑)。同時にマネージャーとして俯瞰した視点を忘れず、目的に向かって個々の強みが生かされる役割分担や人材配置、協力体制づくりを心がけています。そうした情熱と冷静さ(?)これが自分の持ち味かもしれません。

ーーこれからめざしていることや、目標について教えてください。

私の役割は、SRHRについて特に男性同士で話し、一人でも多くに「自分ごと」として感じてもらい、行動するきっかけをつくることだと思います。そこで大事にしたいのは、正義のように説得するのではなく、「そういう考え方もあるのか」と思ってもらえるように促していくことです。
「妊産婦の命を守る」「意図しない妊娠を減らす」という目的には、誰もが同意するでしょう。でも、たとえば「カップルの2人が平等に育児家事を担う」というのは、ケースバイケースでさまざまな事情や考え方がありそうです。
ですから、私自身も視野を広げて、多様な価値観や視点、考え方を受け入れていけるよう、自分の「器」を大きくしたいと思います。誰かにSRHRのことを伝えるときは、一方通行のメッセージではなく、おたがい理解を深め合いながら一緒に考えていく。そんなコミュニケーションをめざしていきたいですね。

スタッフの一日紹介:在宅とオフィスのハイブリッド勤務の場合

08:00 自宅で始業
    ーメールチェックとスケジュール確認
    ー支援者向け活動報告書やウェブ発信原稿の内容確認
09:30 自宅を出発
11:00 オフィス出勤、業務再開
    ー個人支援者担当チームとの打ち合わせ
    ー寄付プロモーション企画の検討
12:00 お昼休憩
13:00 法人担当チームとの打ち合わせ
    ー法人寄付営業進捗の確認
    ー法人向け勉強会・イベントの企画検討
14:00 移動
14:30 都内支援企業訪問
    ー活動報告と今後の連携の提案
15:30 自宅へ
17:00 帰宅、自宅で業務再開
    ー支援企業への次回提案に向けた課題の整理
    ー法人チームへのフィードバック
18:00 グループ各事業担当スタッフからの相談に対応(ZOOM/Slack使用)
    上長への進捗報告
20:00 終業

自分のために、誰かのために。
あなたの経験が、未来を変える力になります。

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JOICFP
ジョイセフは、すべての人びとが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:SRH/R)をはじめ、自らの健康を享受し、尊厳と平等のもとに自己実現できる世界をめざします