国際協力NGOジョイセフは10月11日の国際ガールズデーに向けて、 SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)に関する情報提供を行う「I LADY.」キャンペーン(http://ilady.world/)の一環として、15-29歳の日本の若者(3266人)と30-64歳の大人(2072人)を対象に、「性と恋愛2021ー日本の若者のSRHR意識調査ー」を「リアルな恋愛観」、「性・セックスの意識」、「避妊・性感染症予防の本音」、「セクシュアル・ヘルスについて」、「自分の人生を決められるか」の5つのテーマ別に実施しました。
2019年に発表した前回調査は、当時の日本の若者の性と恋愛に対する“リアルすぎる”調査結果が大きな反響を呼びました。 2021年は、調査対象を、30-64歳の親世代にまで拡大した結果、世代を超えて刷り込まれているステレオタイプな現象と、大きな世代間ギャップのある調査項目がありました。
調査概要
- 調査対象
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日本国内在住の15-64歳(高校生~シニア手前・現役世代) これまでに恋人・パートナーができたことがある人(未既婚不問)(男性2501人/女性2499人/男女どちらでもない338人)
- 調査手法
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インターネット調査
- 調査日程
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2021/7/21(水)~7/26(月) 調査目的 :恋愛、性、セクシュアル・ヘルス/ライツなど、パートナーとの関係性も含めた意識調査
調査結果から見えてきたことー避妊・性感染症予防の本音ー
男女で異なる避妊・性感染症予防意識
避妊や性感染症への意識の低さが明らかになりました。「あなたは、これまでに、妊娠を望まない性交渉において、避妊をしなかったことがありますか。※腟外射精は避妊をしたことに含みません」という質問に対し、若者(15-29歳)男性は24.7%、若者女性は33%、大人(30-64歳)男性は44.7%、大人女性は44.6%となり、若者では約3割、大人では約5割が避妊をしなかった経験があると分かりました。
避妊をせずにした理由は、男性では「コンドームをつけると快感が損なわれるから」「避妊なしで性交渉しても大丈夫だと思った」「避妊具の用意がなかったから」、女性では「相手に言いづらかったから」「避妊したいと言ったが、相手がしてくれなかったから」「避妊なしで性交渉しても大丈夫だと思った」
の回答が多くありました。男性は快感を求め避妊をしない人がいる一方で、女性は相手に言いにくい・言っても相手がしてくれない現状が明らかになりました。
「もし妊娠したら、どうするつもりだったか」という質問に対し、全体(若者と大人)の3割が「産むつもり/産んでもらうつもりだった」「相手と話し合ってどうするか考えるつもりだった」、2割が「妊娠するとは思ってもいなかった」「何も考えていなかった」と回答。性行為により自分または相手が妊娠する可能性があることを考えず行為をしている現状が分かりました。
緊急避妊薬の認知状況・浸透状況には世代差が顕著
避妊しないで性交渉した場合やコンドームが破れてしまったなど避妊に失敗した場合に行う避妊法である「緊急避妊薬(アフターピル)というのがあるのをご存知ですか」という質問に対し、認知状況・浸透状況には世代差が顕著(若年>大人)であることが分かりました。若者の9割が認知しており、半数近く(47.8%)が「入手先も知っている」結果が分かりました。I LADY.アクティビストたちが立ち上げた市民プロジェクト「#緊急避妊薬を薬局で」のムーブメントもあり、若者世代に認知・普及してきている現状が見えました。
コンドームを使うか使わないか行為で異なる判断基準
「あなたは、セックスのときに、コンドームを必ずつけるようにしていますか。」という質問に対し、「腟性交のときに必ずコンドームをつける」と回答した若者全体は82.5%、大人全体は70%となり、7割以上が毎回必ずつけているということが分かりました。しかし、「オーラルセックスのときに必ずコンドームをつける」と回答した若者全体は28%、大人全体は19.5%となり、コンドームをつけずにセックスをするカップルは、「腟」と「オーラル」で大きな差がありました。
さらに、「コンドームは頼まれなければつけない」と回答した若者男性は21.1% 、大人男性は37.1%となり、避妊や性感染症への意識の低さが浮き彫りになりました。
依然としてコンドームは男性が用意するものという価値観
「男性がコンドームを用意することをどう思いますか」という質問に対し、若者全体の70%、大人全体の60%が「当たり前だと思う」と回答。一方で、「女性がコンドームを用意することをどう思いますか。」という質問に対して「当たり前だと思う」と回答した若者全体は16.8%、大人全体では18%。
また、女性がコンドーム を持っていることに対して「女性がコンドームを用意していたら、引くまではいかないが、驚くと思う」と男性の約4割が回答。性感染症を防ぐ有効な手段であり、日本で最も使われている避妊具であるコンドームを女性が用意することに違和感を持つ人が多いことが分かりました。
産婦人科医・遠見才希子さんからのコメント
今回の調査で特に印象的だったのは、性的同意やアフターピルの認知度におけるジェネレーションギャップです。性的同意は、基本的にキスやセックスをする前にYES・NOの気持ちを言葉で確認し、お互いYESのときだけするというものであり、性暴力を防ぐためにも、安全で満足できる性生活を送るためにも大切なものとして近年注目されています。この同意は対等なコミュニケーションで対話ができる関係性でなければ成立しません。若者世代のほうが性の好みやトラウマなどをパートナーと対話しているにも関わらず、「お互いの同意のもと性行為を行なっている」と回答した割合は大人世代より低かったことから、若者世代のほうが性的同意を認知し、自問自答している可能性や、そもそも大人世代が性的同意を理解しておらず「性行為しているなら相手は合意している」という思い込みがある可能性が考えられました。
また、アフターピル(緊急避妊薬)の認知度は世代差が顕著で、若年層の9割が認知していました。アフターピルは避妊が不十分な性交から72時間以内になるべく早く飲むことで妊娠を防ぐ効果が高まります。海外では約90カ国において薬局で安く購入できますが日本では医師の処方箋が必要です。2017年には「認知度が低い」、2019年には「若い女性には知識がない」といった専門家の意見があり市販化が見送られてきましたが、コロナ禍、アフターピルへのアクセス改善を求める若者の声の高まりとともに認知度が上昇した可能性が考えられました。
遠見才希子
産婦人科医。筑波大学大学院社会精神保健学分野博士課程。
2005年、聖マリアンナ医科大学入学後より中高生向けの性教育活動を始め、これまで全国900カ所以上で講演を行う。
2011年、同大学卒業。2016年、産婦人科専門医取得。
現在、「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」共同代表として政策提言を行う。
近著「だいじ だいじ どーこだ?はじめての『からだ』と『性』のえほん」(大泉書店)。
調査結果を受け、今後「I LADY.」ではより幅広い情報提供を行い、日本の若者がより多くの選択肢を持てるよう活動を続けていきます。
調査結果について
今回の「性と恋愛2021ー日本の若者のSRHR意識調査ー」若者(15-29歳)の調査結果を、I LADY.公式サイト内に掲載しております。
調査結果
「I LADY.」について
恋愛、セックス、避妊、妊娠、産む、産まない―
自分らしい人生を、自分で決めるために。 I LADY. は、特に日本の10~20代に SRHRに関する 幅広い情報提供を行い、アクションのきっかけをつくることで 日本を含むグローバル・ヘルスの向上を目指しています。
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I LADY.事務局
I LADY. は、これまでジョイセフが培ってきた知見を生かし、特に日本の10~20代を対象にグローバルな視野でSRHRに関する幅広い情報提供を行い、一人ひとりのアクションのきっかけをつくるプロジェクトです。Love Yourself(=自分を大切にする)、Act Yourself(=自分から行動する)、Decide Yourself(=自分の人生を、自分で決める)をメッセージに掲げ、活動を展開しています。
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