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日本のジェンダー・ギャップ指数2026。「健康」は世界水準なのに、「権利」が置き去りにされる理由

2026.9.18

2026年9月16日、世界経済フォーラム(WEF)が「ジェンダーギャップ報告書2026(Global Gender Gap Report)」を発表しました。日本の総合スコアは0.670。前年の0.666から、わずかに上昇しています(※対象となる国・地域数が年によって異なるため、順位だけを単純比較することはできません)。
私たちジョイセフがこの報告書を読むときに注目したいのは、順位そのものよりも、その中身です。日本は、ある分野では世界トップクラス、別の分野では下位20%という、両極端な結果を同時に抱えています。

「ジェンダーギャップ指数」とは?

ジェンダーギャップ指数(GGI)は、世界経済フォーラム(WEF)が2006年から毎年発表している、各国の男女格差を測る指数です。WEFは1971年にスイスの経済学者クラウス・シュワブによって設立された国際機関で、本部はスイス・ジュネーブにあります。政治・経済・学術などの指導者が集まり、世界や地域の課題を話し合う場として知られ、毎年1月にダボスで開かれる年次総会「ダボス会議」でも知られています。

この指数は、各国が抱えるジェンダーギャップの課題と、その改善で得られる可能性を世界に示し、格差解消に向けた効果的な政策づくりの土台とすることを目的としています。

ジェンダーギャップ指数のユニークな点は、その国が豊かかどうかではなく、その国の中で男女にどれだけ差があるかだけを測っていることです。経済・教育・健康・政治という4つの分野で男女の比率を算出し、0(完全な不平等)から1(完全な平等)のスコアで表します。日本の総合スコアは0.670でした。これは、男女の差の67%が解消されているという意味になります。

もうひとつ重要な特徴は、育児休業といった制度の有無ではなく、実際にどんな結果が出ているか、たとえば管理職に女性がどれだけいるかが問われるということです。建前ではなく、現実を映し出す指数なのです。

「健康」は世界水準、「政治」と「経済」は下位20%

日本の内訳を見ると、際立った偏りが見えてきます。

教育 68位(0.994)
健康と生存 49位(0.973)
経済参画 119位(0.609)〈労働参加率や賃金格差、管理職に占める女性比率などから算出〉
政治参画 121位(0.105)〈国会議員や閣僚に占める女性比率、女性国家元首の在任期間などから算出〉

教育と健康はほぼ満点に近い水準にある一方、政治と経済になると順位は一気に下がります。この偏りが日本の総合順位を押し下げている最大の要因です。
主要7カ国(G7)の中で、日本は依然として最下位でした。東アジア・太平洋地域で見ても、モンゴル(70位)、中国(96位)、韓国(101位)より低く、地域内最下位という結果です。

教育を受けられる・健康に生きられるという土台は整っていますが、そこから先、政治の意思決定の場や経済の管理職といったポジションにおいて、女性の参画は進んでいません。これが日本の構造的な特徴と言えます。

数字の裏側にある、もうひとつの「日本」

日本の「健康と生存」分野は49位です。教育と並んで、世界的に見ても高い水準にあります。妊産婦死亡率は10万人あたりわずか3人。出産に専門技能者が立ち会う割合は99.8%にのぼります。医療のインフラという意味では、日本は間違いなく世界トップクラスです。

しかしSRHR(性と生殖に関する健康と権利)が問うているのは、医療が「ある」かどうかではありません。SRHRとは、自分の体、性や生殖について、誰もが十分な情報を得て、自分の望むものを選んで決められること、そしてそのために必要な医療やケアを受けられることを指します。重要なのは、自分の身体について自分で決められることなのです。

ここで、日本の評価は一変します。

たとえば日本には、人工妊娠中絶を行う際に「本人及び配偶者の同意」を必要とする法律があります(母体保護法第14条)。同意が不要になるのは、配偶者の所在が分からない場合や、すでに離婚している場合など、限られたケースのみです。つまり制度の上では、女性が自分の身体について決めたいと望んでも、パートナーの同意という関門をくぐらなければならない場面があるのです。

2024年10月、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)は、8年ぶりとなる日本政府審査の中で、この配偶者同意要件を撤廃するよう日本に勧告しました。審査の場では、ある委員から「この要件は、女性が中絶を受けられるかどうかについて、配偶者に事実上の拒否権を与えているに等しい」という趣旨の指摘もあったといいます。

私たちジョイセフも、このCEDAWの審査に関わっています。他の6つの市民団体と連携し、日本のSRHR課題をまとめたシャドウレポートを提出しました。ジュネーブの国連欧州本部にも足を運び、委員に直接その実態を伝えています。今回の勧告には、私たちが届けた声が確かに反映されているのです。

配偶者同意要件の撤廃は、日本への数ある勧告の中でも特に重い位置づけを与えられました。健康分野の勧告が「フォローアップ項目」、つまり2年以内に日本政府が対応状況を国連へ報告しなければならない項目に指定されたのは、今回が初めてのことです。その期限は2026年10月30日。今、まさにその答えが問われようとしています。

声を上げ続けた先に、変化が起きています

配偶者同意要件のように、いまだ動いていない課題がある一方で、実際に市民社会の声が制度を動かした例もあります。緊急避妊薬(アフターピル)です。

2026年2月、緊急避妊薬はついに処方箋なしで薬局での購入が可能になりました。承認から市販化までに費やした歳月は、実に7年にのぼります。

NPO法人ピルコン理事長の染矢明日香さんは、2018年からこの課題の最前線に立ち続けてきました。「必要なのに入手できない」という切実な声を集めてオンライン署名活動を立ち上げ、18万筆を超える署名を集めましたが、それでも議論は繰り返し押し戻されました。

染矢さんはジョイセフが主催した勉強会で、低用量ピルの承認には40年を要した一方、男性のED治療薬はわずか9カ月でスピード承認されたことを指摘しました。かつてこの差は「トロッコと新幹線」に例えられましたが、今回も同じ構図が繰り返されたと、染矢さんは感じているそうです。

この膠着状態を動かすきっかけとのひとつが、CEDAWの対日審査でした。2024年、ジョイセフをはじめとする市民団体はこの機会をとらえ、緊急避妊薬をめぐる課題をレポートにまとめ、国連に届けました。その結果、避妊の選択肢へのアクセス改善と若年層への同意要件撤廃が勧告に盛り込まれ、国内の議論を後押しする力となったのです。
声を上げ続けることは、確かに現実を変えます。7年という長い年月をかけて、それが証明されました。

「健康」のその先へ――2026年10月、問われる真の「権利」

教育と健康で高い評価を得ながら、政治と経済では下位に沈む。この両極端さこそが、日本のジェンダー不平等の実態です。そして、その中でもとりわけ見過ごされがちなのが、ここまで見てきた「自分の身体を自分で決める権利」という視点です。

日本は今、健康分野の勧告として初めて、2年以内の進捗報告を国連の女性差別撤廃委員会から求められています。期限は2026年10月30日。まさに今、その答えが問われている最中です。

私たちジョイセフは、この課題の現場にこれからも関わり続けます。声を上げ続けることが現実を変える確かな力になることを、多くの皆さまに伝え、ともに取り組んでいきたいと思います。

Author

JOICFP
ジョイセフは、すべての人びとが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:SRH/R)をはじめ、自らの健康を享受し、尊厳と平等のもとに自己実現できる世界をめざします