知るジョイセフの活動とSRHRを知る

ナプキン寄付から、学校に根づく人権教育へ。企業の支援が引き出す「先生」の可能性と、持続可能な社会づくり

2026.10.6

先生たちが、生徒の席に座っています。

2026年8月25日。新潟県立中条高校で、12名の先生方が「17歳」の生徒になりきって授業を受けました。

生徒たちに月経や性について教える前に、まず先生自身が授業を体験する——。ジョイセフスタッフの林未由が講師を務め、校長先生、教頭先生、養護教諭の先生も、ジョイセフオリジナルの月経教育パッケージに触れ、熱心に参加しました。

この研修は、先生方に月経教育を入口としてSRHR(性と生殖に関する健康と権利)を知って頂き、自分もクラスメイトも自分らしい人生を生きるためのライフスキルを、ご自身で生徒たちに伝えられるよう支援するプロジェクトの一環です。

トイレスペースで生理用ナプキンを無料で提供するサービス「トレルナ」を展開する株式会社ネクイノからのご寄付と協働により、ジョイセフが実施しました。

趣のある住宅街の中に現れる中条高校


 

一生で経験する月経は何回?「知っているつもり」が試される現場

生涯で経験する月経の回数を考えるワークでは、数学の先生が素早く計算をして答えを導き出し、数学が苦手なファシリテーターが思わず「さすが!」と言ってしまう場面も。

しかし、子宮や卵巣など体の仕組みを目に見える形で伝えるオリジナル教材「ジョイセフエプロン」を使った模擬授業で小学4年生に分かるように説明しようとトライすると、思わず言葉に詰まる場面も見られました。月経の仕組みは、知識として知っているつもりでも、いざ自分の言葉で伝えるとなると「人に伝わる表現にするのは難しい」と気づかされます。

月経がつらそうな子には睡眠が必要なんだろうけど、授業中に『寝てていいよ』とは言えないし……

校長先生の率直なつぶやきが漏れつつも、先生方の表情は真剣そのもの。一人ひとりが、日々の教室で接する生徒たちの顔を思い浮かべながら向き合っていました。

子宮や卵巣など体の仕組みを伝えるオリジナル教材「ジョイセフエプロン」


 

「ナプキン寄付」と「SRHR」——理念の交差点から生まれた協働

ジョイセフが2025年に実施した「性と恋愛」意識調査では、15〜29歳の若者の18%が「生理用品が高い」と回答しています。学校や自治体での配布は広がりつつあるものの、持続的な仕組みとしてはまだ課題が残ります。

さらに問題は費用面だけではありません。男女別々の授業が行われることもあり、「月経は隠すべきもの」という意識が根強く、悩みや生きづらさが「個人の問題」として片づけられがちです。

しかし、月経について知る機会が限られることの影響は、思わぬ場面にも及びます。たとえば2024年の能登半島地震では、避難所運営を担う男性職員にとって昼用と夜用のナプキンの違いがわかりにくく、一つの避難所に同じ種類ばかり届いたという事例も聞かれました。月経は、性別を問わず誰もが知っておきたいテーマなのです。

こうした課題に対し、ネクイノとジョイセフは、それぞれの強みを活かして立ち上がりました。

ネクイノは、トイレに設置したデジタルサイネージ(電子掲示板)で広告が1分再生されるごとにナプキン1枚を届ける「1minute, 1napkin」プロジェクトを展開。「誰もがいつでも生理用品を手に入れられる社会」を目指しています。

一方、ジョイセフは「すべての人が自分の意思で人生を選択できる世界」を目指し、その土台となるSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)の推進に取り組んできました。

両者の目指す社会像が重なり、ネクイノからの活動資金とナプキンのご寄付を受けて、ジョイセフが学校現場での教育・研修を担うという強力な協働モデルが誕生したのです。

生徒ではなく「先生」に届ける理由——1回限りの授業で終わらせないために

ジョイセフはこれまで、多くの学校で生徒へ直接アプローチする「出前講座」を行ってきました。しかし今回の協働で最も特徴的なのは、支援の対象を「先生」に定めた点です。

外部の専門家が学校を訪れるのは一度きりかもしれませんが、先生は毎日生徒のそばにいます。先生自身がSRHRや月経について自分の言葉で語れるようになれば、その学びは翌年の生徒にも、その次の世代にも永続的に受け継がれていきます。

研修の中でジョイセフの林が繰り返し伝えたのは、先生が知識を教えるだけでなく「生徒が困ったときに相談できる大人」になることの大切さでした。

  • 教室にどのようなバックグラウンドを持つ生徒がいるのか
  • 誰も取り残さない配慮のある言葉遣いとはどのようなものか
  • 地域の婦人科などの医療機関や自治体の相談先と連携してどうサポートにつなげるか

研修は単なる学習で終わりません。研修を受けた先生が自校の生徒へ授業を行い、前後アンケートで意識の変化を検証します。さらに次年度以降も寄付なしでナプキン設置を続けるための校内での議論を通して、生徒たちの教育と環境づくりが両輪で推進されること目指すために、ジョイセフは1年を通じて学校に伴走します。

実際に生徒が相談する先がどこなのか挙げてみる先生たち


 

主人公の名前は「ツッキー」——対話を生み出す包摂的なアプローチ

新潟での研修の前日(8月24日)には、東京都三鷹市の法政大学中学高等学校でも同様の教員向け研修が行われました。同校は本プロジェクトの第1号として、2026年4月からナプキンが設置されている学校です。

法政大学中学・高等学校でのジョイセフ・エプロン実践の様子


 
研修で体験する授業案には、多様性への配慮と深い工夫が凝らされています。

たとえば教材に登場する主人公の名前は「月子」ではなく「ツッキー」。月経のある人を「女性」と決めつけず、トランスジェンダーやノンバイナリーの生徒にも配慮した表現を取り入れています。また、月経の仕組みを学ぶだけでなく、例えば「バイト先の制服のズボンが白。生理の日に履きたくない」、「法律で定められている休暇なのに生理休暇の使用率0.9%」などの社会の中にある月経フレンドリーでない状況の原因に目を向け、性別を問わずすべての人が知るべきテーマとして捉え直します。

中学生が自分たちの言葉で月経の仕組みを説明できるのでしょうか?

現場の先生から上がった不安に対し、ジョイセフの林は過去の出前講座の実例を挙げながら、「完璧に答えられなくても、自分たちで分かりやすく説明しようと試みることが一方通行ではない主体的な学びを生みます」と伝えました。

「ナプキンを置くだけ」では見えない課題にアプローチする

新潟の高校の養護教諭の先生は、設置に際してこう語ってくれました。

ただナプキンがある便利さだけで終わらせず、自分の体や健康に関心を持つきっかけにしてほしいのです。以前は生徒が保健室にナプキンを取りに来ることで教師と話す機会があり、こちらも生徒自身も体調や悩みに気づけましたが、トイレへのナプキン設置によってそれが見えにくくなる。だからこそ、教育とセットで届けることが不可欠だと感じています

また、別の学校ではナプキン設置に対して、一部の生徒から「女子生徒だけが優遇されている。男子生徒は何がもらえるのか」と、疑問の声が上がった例もありました。こうした声こそが、ジェンダー平等の概念や相手を尊重する姿勢を育むための貴重な教育の機会となります。

さらに、地方における医療アクセスの格差(婦人科受診までに片道2時間かかるなど)という地域課題の現実も浮き彫りになりました。中条高校のある新潟県胎内市には、婦人科のクリニックがありません。女性医師のいる婦人科クリニックまでは、車で45分、電車とバスでは2時間半かかります。

月経という身近な入口から、体の仕組み、ジェンダー、人間関係、医療アクセスへと、学びは広がっていきます。月経という一つのテーマからでも、SRHRのさまざまな側面に目を向けるきっかけをつくることができる。だからこそ、ジョイセフは先生方を支え、そのお力を引き出したいと考えています。その一つひとつの学びが、「包括的性教育」(体の仕組みだけでなく、人間関係や人権まで幅広く学ぶ性教育)へとつながっていきます。

研修後、新潟の先生からはこんな力強い言葉をいただきました。 「もっと早く、ジョイセフに相談すべきだった!」

今日の機会を作ってくださった佐藤先生


 

企業のみなさまへ:貴社の事業から、一人ひとりの人生を支える「学び」を始めませんか?

今回は学校でのプロジェクトでしたが、SRHRは生まれたときから、子ども時代、思春期、妊娠・出産、更年期以降まで、人生のあらゆる段階に関わるテーマです。体のことだけでなく、人との関わりや、自分らしく生きることにも結びついています。一方で、正しい知識に触れる機会や安心して相談できる場は、まだ限られています。

SRHRを実現するうえで欠かせないのが、包括的性教育です。自分を大切にし、相手を尊重し、困ったときに助けを求められる力を育む「人権教育」の土台であり、年齢や立場を問わず、誰にとっても大切な学びといえます。

ジョイセフは半世紀以上にわたり、世界43の国と地域でSRHRを推進し、その柱の一つとして包括的性教育に取り組んできました。経験と知見を生かしたプログラム開発力は、教育現場からも信頼を得ています。企業の想いや強みとジョイセフの力が合わさることで、それぞれの場所に学びが根づき、続いていく仕組みが生まれます。

月経、妊娠・避妊、プレコンセプションケア、更年期、ジェンダーの思い込み、性暴力の防止。幅広いテーマは、子どもからシニア世代まで、さまざまな人に向けて事業を展開する企業の領域と深く結びつきます。消費財、IT・テック、製薬・ヘルスケア、飲料・食品、金融・インフラなど、人生や暮らしに関わるあらゆる事業に、SRHRとの接点があります。

「CSR・SDGs活動として、次世代に向けた本質的な社会貢献に取り組みたい」
「自社の製品やサービスを、物品の提供だけで終わらせず、学びとセットで届けたい」
「自社の事業分野とSRHRを掛け合わせた、独自の協働プログラムを企画したい」

そうお考えの企業・団体のご担当者さまは、ぜひお気軽にジョイセフまでご相談ください。貴社の強みや目指す社会の姿に合わせて、最適な連携の形をご提案いたします。

【本件に関するお問い合わせ・協働のご相談】

公益財団法人ジョイセフ(JOICFP)企業連携担当
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info@joicfp.or.jp

Author

JOICFP
ジョイセフは、すべての人びとが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:SRH/R)をはじめ、自らの健康を享受し、尊厳と平等のもとに自己実現できる世界をめざします