
子どもたちが、性交や避妊、性的同意について、学校で正しく学べるようにするにはどうしたらいいのでしょうか。
いま、その学びのあり方を左右する「学習指導要領」の次期改訂に向けて、文部科学省が意見を募集しています。締切は2026年11月5日(木)23時59分です。
学習指導要領は、全国の学校で何を教えるかを定める国の基準で、およそ10年に一度改訂されます。今回の意見募集は、これからの子どもたちが学校で何を学べるのかについて、私たち一人ひとりが声を届けられる機会です。
この記事では、学習指導要領の基本や、性に関する学びをめぐる課題、意見の出し方を、初めての人にもわかりやすく紹介します。
学習指導要領ってなに? 教科書と授業の「もと」になる国の基準
全国どこの学校に通っても、一定の水準の教育を受けられるように国が定めているのが、学習指導要領です。小学校、中学校、高校などの学校ごとに、各教科で何を学ぶか、どのような力を育てるかが書かれています。
教科書は、この学習指導要領に沿ってつくられます。各学校の授業や時間割も、学習指導要領をもとに組み立てられます。つまり、子どもたちが教室で何を学び、何を学ばないかの大枠は、ここで決まるのです。
学習指導要領と一緒に、文部科学省は「学習指導要領解説」も作成しています。要領に書かれた内容の趣旨や、授業での扱い方をくわしく説明したもので、先生たちが授業を準備するときの手引きになります。
学習指導要領は、社会の変化に合わせて、およそ10年に一度改訂されます。現在の学習指導要領は、小学校では2020年度、中学校では2021年度から実施されているものです。そして今、次の改訂に向けた議論が大詰めを迎えています。
「審議まとめ」は、次の学習指導要領の設計図
次の学習指導要領づくりは、2024年12月、文部科学大臣が中央教育審議会(中教審)に検討を依頼したところから始まりました。教育の専門家などで構成される中教審の部会で議論が重ねられ、2026年10月5日に公表されたのが、今回の「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」です。
審議まとめには、改訂全体の基本的な方向性と、教科ごとの改善の方向性が示されています。全体を貫く考え方として挙げられているのは、「主体的・対話的で深い学び」の実装、多様性の包摂、実現可能性の確保の三つ。各教科の授業時間を学校の判断で調整できる仕組みなど、大きな見直しも盛り込まれています。
ここで集まった意見も踏まえて、中教審は今年度中に「答申」をまとめる予定です。その後、文部科学省が新しい学習指導要領を正式に定め(告示)、小学校では2030年度、中学校では2031年度から全面実施。高校では2032年度の入学生から順に実施される見込みです。
今回のパブコメは、答申の前、つまり方向性がまだ固まりきっていない段階で、私たちが意見を届けられる機会です。

性に関する学びと、いわゆる「はどめ規定」
性に関する学びは、主に体育・保健体育の「保健」の授業や、理科などで扱われています。思春期のからだの変化、受精や妊娠、性感染症の予防などです。
その一方で、現在の学習指導要領には、いわゆる「はどめ規定」と呼ばれる記述があります。
- 小学校5年の理科
- 人の受精に至る過程は取り扱わないものとする
- 中学校の保健体育
- 受精・妊娠を取り扱うものとし、妊娠の経過は取り扱わないものとする
精子と卵子のこと、妊娠のことは学ぶのに、その間をつなぐ性交については扱わない。1998年の学習指導要領改訂時にできたこのはどめ規定が、学校で性交や避妊について教えることをためらう一因になっていると、教育や医療の現場、弁護士会などから指摘されてきました。
文部科学省は、この規定について、発展的な内容を教えてはいけないという意味ではなく、すべての子どもに共通して教える内容ではないという意味だと説明しています。けれども実際の教育現場では、「教えてはいけない」と受け止められる場面が少なくありません。
次の学習指導要領で、この規定はどうなるのでしょうか。2026年7月の報道によると、中教審の作業部会では、規定の是非には触れないまま、中学校保健体育の規定を維持する方針が了承されました。ジョイセフ事務局長の山口悦子は、この報道の中で、学習指導要領の解説や学校への通知などを通じて、性に関する必要な指導が妨げられないことを明確に示すよう、引き続き文部科学省に求めていく考えを伝えています。
方向性が固まりつつある今だからこそ、パブコメで「この点を見直してほしい」「現場が迷わないよう明確にしてほしい」という声を、改めて届けることに意味があるのです。
「必要だけれど、扱いにくい」。学校現場からの声
「はどめ規定」は、学校現場でどのように受け止められているのか。NPO法人ピルコンは2026年5月29日から6月18日にかけて、ジョイセフの協力のもと、インターネットでアンケート調査を行いました。回答したのは、教職員143人と、保護者や若者、医療従事者など142人です。
教職員の回答では、性交、避妊、性的同意、性感染症、ジェンダー平等など、どの項目も7割以上が「学校で学ぶ必要がある」と答えました。その一方で、「必要性は感じるが、学校で扱いにくい」内容として最も多く挙がったのが「性交・性行為」(72.7%)です。
扱いにくい理由のトップは、「いわゆる『はどめ規定』があるため」(62.2%)。規定やその解釈によって、性交や妊娠、避妊などを扱いにくいと感じたことが「ある」「どちらかといえばある」と答えた教職員は、合わせて8割を超えました。
自由記述には、こんな声も寄せられています。
”教科書には、コンドームを正しく使えば直接の接触を避けられるとある。でも、「正しく使う」とはどういうことか、そもそもコンドームとは何かが、教科書ではわからない”(中学校 養護教諭の回答を要約)
個別に質問に来る生徒には答えられても、わからないまま卒業していく生徒のほうが多いのではないか。この養護教諭は、そう案じています。
この結果をもとに、ピルコン及びSRHR for ALLアクション!(事務局ジョイセフ)は2026年7月9日、文部科学省に要望書を提出しました。求めたのは、次の3点です。
1. 次期学習指導要領の改訂で、いわゆる「はどめ規定」の削除・見直しを行うこと
2. 今の制度のもとでも、性交や避妊、性的同意、性暴力の予防などを一律に禁止する趣旨ではないことを、通知やQ&Aなどで明確にすること
3. 標準的な教材や指導案、保護者への説明資料、研修動画などを国として整え、学校や地域による学びの差を小さくすること
※この調査は、SNSなどで回答を呼びかけた任意回答の調査で、性に関する指導に関心の高い人が多く回答している可能性があります。

意見の出し方:締切は2026年11月5日(木)23時59分
今回の募集は、法律で定められた手続きではなく、文部科学省が任意で行う意見募集です。提出は専用のウェブフォームから。電話や郵送では受け付けていません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 案件名 | 次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(文部科学省) |
| 募集期間 | 2026年10月6日(火)14時〜11月5日(木)23時59分 |
| 資料と提出先 | e-Gov パブリック・コメントの案件ページ(審議まとめ本文、抜粋資料、意見公募要領、提出フォームへのリンクがあります) |
| 分類番号 | 性に関する学びへの意見は「㉑ 情報・技術、情報、㉒ 体育、保健体育、㉗ 特別活動」が目安 |
| 個人情報 | 氏名や年齢、連絡先の記入は任意 |
| 文字数 | 意見には理由を添え、1,000字を超える場合は要旨も書く |
送るまでの4ステップ
- 1. 意見公募要領を読む
- 提出のルールがまとめられています。最初に目を通しておくと安心です。
- 2. 審議まとめの該当箇所を開く
- 本文は長文ですが、すべて読む必要はありません。体育・保健体育の部分は第2部にあります。
- 3. 下書きをつくる
- フォームに直接書き始めるより、メモ帳などで下書きしてから貼り付けると安心です。
- 4. フォームで送信する
- 分類番号を選び、意見を貼り付けて送ります。締切直前は混み合うこともあるので、余裕をもって。
意見の骨組みの例
書き方の基本は、パブコメ入門記事で紹介した「どこについて」「なぜ」「どうしてほしいか」の三つです。ここでは、性に関する学びについて意見を書く場合の骨組みを紹介します。いちばん大切なのは、②にあなた自身の経験や、身近で見聞きしたことを一文でも足すことです。
| ① どこについて | 審議まとめ第2部の「体育、保健体育」のうち、保健に関する記述について。 |
|---|---|
| ② なぜ | 子どもたちがインターネットなどで偏った情報に触れる前に、自分と相手のからだや気持ちを大切にするための正確な知識を学ぶ必要がある。(ここに、あなたの経験や身近で見聞きしたことを一文) |
| ③ どうしてほしいか | 次のどちらか、または両方を求める。
|
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