【活動報告】宮崎市の包括的性教育を、行政と議員それぞれの視点から学ぶ
2026.10.27
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7月22日と8月7日の2回にわたり、「地方議員のためのSRHR勉強会」を開催しました。
今回のテーマは、宮崎市立小中学校で進められている「包括的性教育」の取り組みです。
学校教育における性教育の不足は、長年にわたり指摘され続けています。子どもの発達段階に合わせて体系的に学ぶ「包括的性教育」を、自治体として学校教育に位置づけ、継続的に実施している事例は、全国的にもまだ多くありません。
そうした中、宮崎市では2026年度から公立小中学校4校(小学校2校、中学校2校)でモデル実施を開始し、令和9(2027)年度には市内の全公立小中学校へ展開する計画を進めています。2026年4月には、この取り組みを伴走するため、宮崎市教育委員会とジョイセフが連携協定を締結しました。
今回の勉強会では、第3回に宮崎市教育委員会の松浦誠氏をお迎えして「行政職員の視点」から、第4回には宮崎市議会議員の黒田奈々氏をお迎えして「議員の視点」から、宮崎市における実践のプロセスと背景を学びました。
どうやって包括的性教育を学校教育に取り入れたのか(行政の視点)
第3回では、宮崎市教育委員会保健給食課の松浦誠氏より、包括的性教育を市内の学校教育へ導入するに至った経緯や、具体的なカリキュラムづくりのプロセスについてお話しいただきました。
宮崎市では、「新しい授業を一つ増やす」のではなく、既存の複数の教科の中に包括的性教育の要素を組み込む方法を採用しています。カリキュラムに「薄くスパイスを加える」という考え方を採ることで、学校現場や教員の負担感に配慮しながら導入を進めています。
指導案の作成にあたっては、教科書や指導書、国際的ガイダンスなどをもとに、AIを活用して素案(たたき台)を作成。その後、指導主事による確認や、検討委員からの意見を反映させながら内容を練り上げました。さらに、保護者への丁寧な情報発信や、助産師・産婦人科医といった外部専門家との役割分担など、現場でスムーズに運用するための工夫も共有されました。
全国から参加した地方議員からは30件を超える質問が寄せられ、宮崎市の先進的なアプローチに対する関心の高さがうかがわれました。
なぜ宮崎市で取り組みが進んだのか(議員の視点)
第4回では、宮崎市議会議員の黒田奈々氏より、議員としての関わりや政策化に向けた動向についてお話しいただきました。
宮崎市でこの取り組みが加速した背景には、地域が抱える切実な課題がありました。同市では過去に人工妊娠中絶率が全国ワースト1となった経緯があり、若者を取り巻く性や健康の課題が、地域全体で向き合うべき重要テーマとなっていたのです。
※ジョイセフの考え
ジョイセフでは、人工妊娠中絶を「意図しない妊娠をした人が元のからだに戻るために必要な医療ケア」と捉えています。また、意図しない妊娠を防ぎ、誰もが自分の身体に関する権利を行使できるようSRHRの理解増進に努めています。
勉強会の中では、他の地域の議員からも「深刻な事件や出来事が起きたことをきっかけに、性教育やSRHRの取り組みが動き出した」という事例が共有されました。政策が動く背景には、常に地域が抱える課題と、そこで暮らす子どもたちの現実があります。
一方で、「悲しい出来事が起きてからでは遅い」という強い危機感を持ちながらも、具体的にどう取り組めばよいのか悩みや焦りを抱えている議員が少なくない実態も浮かび上がりました。
「どうしたら進むのか」―地方議員の悩みを共有し、力に変える
今回の勉強会では、宮崎市の事例を学ぶだけでなく、「自分の地域ではどうすれば進められるのか」という具体的な相談や課題を共有し合う場となりました。
- 議会で質問しても、なかなか行政が動かない。
- 必要性は感じているけれど、地域の理解をどう得ればいいのかわからない。
- 一緒に取り組んでくれる人が見つからない。
SRHRを推進したいという思いを持ちながらも、議会内で孤立しながら取り組んでいる議員も存在します。だからこそ、先行事例を知り、同じ志を持つ仲間と悩みを分かち合うこと自体が大きな支援となります。
参加者同士の対話からは、次のような具体的なヒントが共有されました。
- 地域の関係者(医療従事者・NPO・保護者等)を巻き込む
- 諦めずに議会で何度も質問を重ね、記録を残す
- 最初から完璧を目指さず、できる小さな一歩から始める
セッションの終わりには、「次の定例会で一般質問に立ちます!」という力強い宣言も飛び出しました。宮崎市の実践を知ることが、参加者一人ひとりの「自分も動いてみよう」というアクションにつながる機会となりました。
「宮崎市だからできた」で終わらせない。「我が町ならどうする?」
今回、宮崎市の事例を取り上げたのは、単に「素晴らしい先進事例」として称賛するためではありません。
大切なのは、成功例を踏まえた上で、「では、自分の自治体で何ができるのか」を考えることです。
地域によって、抱えている課題、行政の組織体制、議会構成はそれぞれ異なります。他自治体の手法そのままコピーするのではなく、自分たちの地域の実情に合わせて、応用することが重要です。
大きな制度を一から作らなくても、地域の人々を巻き込み、議会で問い続け、今できることから積み重ねていく。
その一歩一歩が、確実に地域の政策を動かしていきます。
第2回の勉強会で共有された「良い政策はどんどん真似をして、横に広げていく」という言葉の通り、宮崎市の取り組みが全国の地方議員にとってSRHRを推進するための貴重な教材となることが期待されます。
地域からSRHRを進めるために
SRHRは、時に「国際的な理念」や「抽象的な人権概念」として捉えられがちです。しかし、今回の勉強会を通じて見えてきたのは、SRHRが私たちの身近な暮らしに直結する極めて実践的なテーマであるということです。
- あらゆる世代の性暴力根絶と安全の確保
- 子どもたちが自分らしく成長するための学びの保障
- 若者が安心して不安や悩みを打ち明けられる相談窓口づくり
- 誰もが心身ともに健やかに暮らし、働き続けられる環境の整備
地域の実情に即した政策を作り、動かしていく上で、現場の声を取り込める地方議員の役割は極めて重要です。
「地方議員のためのSRHR勉強会」は、単に知識を習得する場にとどまらず、地域で孤軍奮闘する議員をエンパワーし、横のつながりを育むプラットフォームを目指しています。ジョイセフはこれからも全国の実践事例を共有し、議員同士が共に学び合い、全国各地でSRHRが進展するよう支援を続けてまいります。