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その1通が、社会のルールを変える力になる。はじめてのパブコメ

2026.10.27

国や自治体が規則や計画を決める前に、私たちはその案を見て、意見を送ることができます。それが「パブリックコメント(通称パブコメ)」です。専門知識も、政治家とのつながりもいりません。この記事では、パブコメの仕組みと書き方を、はじめての人にもわかるように紹介します。記事の最後では、いま意見を募集中の案件もご案内しています。

まずは「モヤモヤ」から

「学校で、からだや性のことをきちんと教わらなかった」

「避妊の選択肢が、もっと身近にあればいいのに」

こうした日々のモヤモヤは、個人の問題に見えて、実は法律や制度、学校で学ぶ内容といった「社会のルール」とつながっています。ルールは、どこか遠いところで決まるもののように思えるかもしれません。けれども実は、決まる前に、私たちが意見を届けられる機会があります。その入り口のひとつが、パブコメなのです。

パブコメってなに? 決まる前に、案を見て意見を言える仕組み

パブコメは、国や自治体が規則や計画を決める前に「案」を公表し、広く意見を募る手続きです。国の場合は行政手続法に基づく「意見公募手続」として定められ、募集期間は原則30日以上とされています。自治体の場合は、それぞれの条例や要綱に基づいて行われています。また国の案件でも、法律で定められた手続きとしてではなく、任意で意見を募る形をとるものもあります。

大切なポイントは3つです。

1. 誰でも出せる
年齢、住んでいる地域、専門知識の有無は問われません。学生や若い世代の声も、同じように受け付けられます。
2. 案が固まっていない段階で届けられる
決まった後に反対するのではなく、決まる前に「ここをこう変えてほしい」と伝えられます。
3. 行政は意見への考え方を公表する
国の多くの案件では、寄せられた意見と、それをどう考慮したかの結果が公表されます。意見を送れば、行政が応える仕組みになっているのです。

国の募集は「e-Gov パブリック・コメント」にまとめて掲載されています。自治体の募集は、各自治体のウェブサイトで確認できます。

「1人の意見で意味があるの?」はじめての人の疑問に答えます

Q. 1人が送っても、意味がないのでは?

A. 意味はあります。パブコメは多数決ではありません。行政が気づいていなかった視点や、現状の案で起こりうる問題などの具体的な指摘は、1通だけでも案を見直す材料になります。また、出された意見と行政の考え方は多くの場合公表されるため、「市民からどんな指摘があり、行政がどう判断したか」が公的な記録として残ります。その記録は、次の制度の見直しのときの手がかりにもなります。

Q. では、件数は関係ないの?

A. 件数にも意味があります。多くの意見が集まることは、そのテーマへの社会の関心の高さを示します。ただし、行政が検討の材料にするのは、一つひとつの意見の中身です。件数は関心の大きさを、中身は論点を伝える。だからこそ、自分の言葉で書いた1通が力を持つのです。

Q. 専門知識がなくても大丈夫?

A. 大丈夫です。パブコメは、もともと広く一般の声を聞くための仕組みです。専門用語を使う必要はありません。生活者としての実感や、当事者としての経験こそ、行政が知りたい情報のはずです。

Q. どのくらい時間がかかる? 長い文章を書かないといけない?

A. 短くて構いません。「この部分について、こういう理由で、こう変えてほしい」という数行の意見でも十分に届きます。

Q. 同じ文章をコピーして送ってもいい?

A. 送ること自体はできますが、同じ文章が大量に届くと、一つひとつの意見の重みが伝わりにくくなります。この記事ではパブコメの文例を紹介していますが、「骨組み」としての活用を想定しています。あなた自身の経験や考えを一文でも足してみてください。

Q. 名前や個人情報は公表される?

A. 氏名・住所などの個人情報 が公表されることはありません。パブリックコメントは行政手続法に基づく制度であり、公表されるのは「意見の概要」と「行政機関の考慮結果」のみです。

Q. 送れば、必ず案は変わる?

A. 変わるとは限りません。それでも多くの場合、行政は届いたパブコメを公表し、「なぜ取り入れたか、取り入れなかったか」を示すことになります。声を届けることは、決める過程を開かれたものにすることでもあるのです。

声が届いた例:緊急避妊薬が薬局で買えるようになるまで

2026年2月2日、緊急避妊薬「ノルレボ」が、処方箋なしで薬局やドラッグストアで買えるようになりました。性交後72時間以内に服用することで、妊娠の可能性を下げる薬です。年齢制限はなく、保護者やパートナーの同意も必要ありません。

この政策が実現する過程で、パブコメは大きな役割を果たしました。2022年12月から2023年1月にかけて厚生労働省が意見を募集したところ、46,312件が寄せられ、そのうち45,314件が市販化に賛成する意見でした。市販化を求める若者や市民グループ、薬剤師や医師など医療者たちは、ワークショップやSNSで意見の書き方を伝え合いました。そして、緊急避妊薬にたどり着けず困った経験をもつ人をはじめ、多くの人が自分の経験や考えを言葉にして届けたのです。ジョイセフも、SRHRユースアライアンスや仲間の市民グループとともに、SNSキャンペーンの実施や、意見を書くためのワークシートの公開などを通して、この動きに加わりました。

多くの人の声で実現した緊急避妊薬の薬局販売ですが、7000円前後と高額であったり、購入時に薬剤師の前で服用する必要があることなど、残された課題もあります。声を届けることは、一度で終わりではありません。

はじめてでも大丈夫。
パブコメを送る5つのステップ

1. 気になるテーマを見つける
性教育、医療へのアクセス、若者の健康、ジェンダー平等など、自分の暮らしにつながるテーマから。
2. 募集中の案を探す
国の案は「e-Gov パブリック・コメント」で、キーワード検索ができます。自治体の案は、各自治体のウェブサイトで。
3. 資料のポイントをつかむ
すべて読む必要はありません。まず「概要」や目次を見て、気になる部分を探しましょう。
4. 自分の言葉で書く
下の「3つの要素」に沿って書くと、まとまりやすくなります。
5. 募集要領を確認して送る
締切の日時と、提出の方法(ウェブのフォーム、メール、郵送など)を確かめて送信します。締切直前は混み合うこともあるので、余裕をもって。
意見は「3つの要素」でまとまる

書き方に迷ったら、次の3つを順番に書いてみてください。

要素 書くこと 書き出しの例
① どこについて 案のどの部分への意見か 「〇ページの『△△』という記述について意見します。」
② なぜ 理由、自分の経験、生活者としての心配 「私は〇〇という経験から、このままでは△△が起きるのではないかと考えます。」
③ どうしてほしいか 具体的な改善の提案 「そのため、〇〇を明記することを求めます。」

いちばん力を持つのは、②の「あなた自身の経験や実感」です。「中学生のとき、困ったときの相談先を知らなかった」のように、一文でも具体的な場面があると、読む人に伝わりやすくなります。

あなたの1通が、誰かの選択肢を広げる

社会のルールは、誰かに決められたものを受け入れるだけのものではありません。私たちが日々の暮らしで感じる違和感や「もっとこうなってほしい」という思いは、ルールをよりよくするための出発点です。

すぐに大きな変化が起きなくても、届けた声と、それに対する行政の考え方は、記録として積み重なっていきます。緊急避妊薬の例のように、その積み重ねが、いつか制度を動かす力になるはずです。

一人ひとりが、自分のからだと将来について考え、選択できる社会へ。まずは1通から、一緒に声を届けていきましょう。
 

【いま募集中】子どもたちが学校で学ぶ性教育に、意見を届けられます
案件名 次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(文部科学省)
締切 2026年11月5日(木)23時59分
提出先 文部科学省の意見提出フォーム(文部科学省のお知らせページからアクセスできます。電話や郵送では受け付けていません)
提出のポイント 意見の分類番号を一つ選びます(性に関する指導は「㉒ 体育、保健体育」が目安)。氏名や年齢、連絡先の記入は任意です。意見には理由を添え、1,000字を超える場合は要旨も書きます。

学習指導要領は、全国の学校で子どもたちが何を学ぶかを定める国の基準です。およそ10年に一度改訂され、今回の「審議まとめ」は、令和10年度以降に順次実施される次の学習指導要領の方向性を示すものです。

今の学習指導要領には、いわゆる「はどめ規定」があります。たとえば中学校の保健体育では、受精や妊娠は扱っても「妊娠の経過は取り扱わない」とされています。この規定が、性交や避妊について学校で教えることをためらう一因になっていると指摘されてきました。

ジョイセフも協力し、NPO法人ピルコンが2026年5〜6月に実施した調査(「はどめ規定」の運用課題に関するアンケート調査)では、教職員や保護者、若者から、性暴力の予防や性的同意、予期しない妊娠の防止などを、今こそ丁寧に学ぶ必要があるという声が多く寄せられました。

意見の骨組みの例(自分の言葉を足してください)

①どこについて:審議まとめ第2部の「 ㉑情報・技術、情報」、「㉒体育、保健体育」 「㉗特別活動」に関する記述について(264、270、272ページ他)。

②なぜ:子どもたちがインターネットなどで偏った情報に触れる前に、自分と相手のからだや気持ちを大切にするための正確な知識を学ぶ必要がある。(ここに、それぞれの経験や身近で見聞きしたことを一文)

③どうしてほしいか:次のどちらか、または両方を求める。

発達段階に応じて、性交や避妊、性的同意、性暴力の防止を学べるよう、いわゆる「はどめ規定」を見直すこと。

学習指導要領の解説や通知などで、性に関する必要な指導が妨げられないことを明確に示すこと。

 
「学習指導要領ってなに?」「今回の改訂で何が変わるの?」という方は、こちらの解説記事もご覧ください。
学習指導要領の改訂をわかりやすく解説
 


 
出典

Author

JOICFP
ジョイセフは、すべての人びとが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:SRH/R)をはじめ、自らの健康を享受し、尊厳と平等のもとに自己実現できる世界をめざします