意図しない妊娠を防ぐための緊急避妊薬の市販化(OTC化:医師の処方箋なしに、薬局で販売)を認める方針が、2025年8月29日、厚生労働省の専門家会議で承認されました。2023年11月に全国145の薬局で試験販売が開始され、さらに、2024年に試験期間が延期された(薬局数は339に増加)ことで、OTC化がまた先延ばしになるかと懸念していましたが、ようやく実現に向かうことは、大変嬉しいニュースです。購入できる年齢に制限はなく、未成年者が購入する場合でも親の同意は不要であることも、意図しない妊娠を防ぐために、重要な決定です。そして、日本社会における、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR:性と生殖に関する健康と権利)の一歩前進です。
厚生労働省の発表によると、2023年度の人工妊娠中絶件数は126,734件に上りました。このうち20歳未満は10,053件、15歳未満も153件報告されています。
さらに、中絶は若者の問題だと捉えがちですが、実はその親世代である40代の中絶は、10代よりも多く、12,243件となっています。この傾向は長年続いている状況です。
こうした背景から、緊急避妊薬のOTC化は、女性や妊娠できる身体を持つ人が意図しない妊娠を防ぐための有効な選択肢として期待されています。一方で、緊急避妊薬の価格が現在の試験販売では、7000~9000円と高額であることから、より負担のない金額へ引き下げが必要です。また、対応できる薬剤師や薬局数を増やすことも重要な課題として挙げられており、これらの解決が求められています。
同時に、避妊しなかった、または避妊に失敗した性交の結果である意図しない妊娠を、女性だけが引き受けなければならないということは、非常に大きな問題です。妊娠を望まなければ、性交において男性も責任ある行動を取ることが絶対的に必要なのです。
改めて、女の子も男の子も、すべてのジェンダーアイデンティティの子どもが、幼いときから、コミュニケーションの大切さ、人間関係の構築、自分だけでなく他者の尊厳を守ること、基本的人権などを学ぶための包括的性教育が実施されることを強く望みます。
いえ、今の日本の状況は、大人にも包括的性教育が必須だと思わずにいられません。
包括的性教育を含むSRHRをさらに前進させるために、ジョイセフはこれからも活動していきます。
- Author
勝部 まゆみ
UNDPのJPOとして赴任したガンビア共和国で日本の国際協力NGOジョイセフの存在を知り、任期終了後に入職。日本赤十字でエチオピア北部のウォロ州に赴任するために一旦ジョイセフを退職、3年後に帰国・復職。ジョイセフでは、ベトナム、ニカラグア、 ガーナ、タンザニアなどでリプロダクティブ・ヘルスプロジェクトに携わってきた。2015年から事務局長、2017年6月から業務執行理事を兼任し、2023年6月に代表理事・理事長。