COVID-19の国内移動に与える影響

2020年度 人口問題協議会・明石研究会(2020年12月2日開催)
「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)が人口に与える影響」より

発表者:
国立社会保障・人口問題研究所人口構造研究部 部長
小池 司朗

総務省統計局の「住民基本台帳人口移動報告」などにより、人口移動の変化を観察した。

これまでの傾向を追うと、基本的には東京・名古屋・大阪の3大都市圏への転入超過が続いており、特に高度経済成長期にはこれら3大都市圏に人口が大量に流入したが、80年代以降は東京圏のみで転入超過が続いている傾向にある。東京圏への転入のピークは1962年、1987年、2007年だが、2019年もバブル期並みの15万人弱の転入超過を記録した。

東京圏の転入超過の内訳を見ると、バブル期は周辺3県(埼玉・千葉・神奈川)が大幅な転入超過である一方、東京都は転出超過の傾向が続いていたが、近年では周辺3県の転入超過が停滞し、都心部の転入超過が増えている。

2014年から2020年の移動動向を、1月〜9月の期間で比較すると、東京圏への転入は2020年に伸びが鈍化し、名古屋圏はやや転出超過が拡大しているのに対し、大阪圏ではわずかに転入が増加している。さらに4月から9月にかけての東京都の転入超過数を見ると、2014年から19年まで、2万5000人〜3万人ほどの転入超過が続いていたが、2020年には約5500人の転出超過となった。周辺3県の転出入に大きな変化はなかったが、東京圏に隣接する県で転入超過数が増加する傾向が見られた。

一方、同じく4月〜9月期での名古屋圏・大阪圏の府県別転入超過数の推移を見ると、愛知県では2019年から転出超過、大阪府では2018年から転入超過となり、2020年にはその傾向が拡大した。

東京都と周辺3県の男女別の転出数・転入数を2019年4~9月と2020年4~9月で比較すると、東京都では転出については大きな変化がないものの、男女ともに転入が減り、もともと多かった女性の転入超過がほぼゼロ、男性は転出超過となった。

周辺3県については、男性の転入超過は横ばいとなり、女性の転入超過がやや減っている。これを年齢別にみると、東京都で20代〜30代の転入超過が大幅に減少している半面、未成年層の変化はより小さく、主に単身世帯や夫婦のみの世帯の移動傾向に変化があったと見られる。

周辺3県については、大きな傾向の変化は見られないが、女性の20代〜30代の転入がやや減少している。

同じ期間を対象として転出元・転入先の地域別で見ると、東京都からの転出数はあまり変わらないが、東京都への転入数はどの地域からのも減っている。周辺3県については、東京都への転出の減少が特に目立つとともに、東京都からの転入が増え、他の地域からの転入超過が減るという形になっている。

東京都内の市区町村を見ると、23区は昨年の転入超過数を大幅に下回るところが多く、市部でも全般には同様の傾向があるが、都心から離れた地域を中心として一部では昨年の転入超過数を上回っている。

これらの傾向をまとめると、次のようになる。2020年4月以降に東京圏、特に都心に近い地域では人口移動傾向の変化が顕著である。2019年と比較して、転入超過数は東京都で大幅減、周辺3県でやや減少、北関東・甲信などでは増加した。多くの企業が来年度の新卒採用を抑制していることなどから、2021年も東京圏の転入超過数の減少が継続する可能性が高いと考えられる。

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