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「高齢の女性は子どもが産めない」発言における3つの問題点 ー参議院議員選挙2025ー

2025.7.4

参院選の投票を前に、改めて私たちが考えなければならない問題が浮き彫りになりました。ある政党の代表による「高齢の女性は子どもが産めない。若い女性に子どもを産みたいなと思う社会状況を作らないといけないのに、働け働けとやり過ぎた」という発言は、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)の観点から見て、深刻な問題を含んでいます。

第一に、女性を「産む機械」として捉える人権意識の欠如

「My Body, My Choice(私のからだは私のもの)」という言葉が示すように、自分の身体に関する決定を下すのは自分自身です。女性には教育を受ける権利があり、キャリアを選択する自由があります。いつ、誰と子どもを持つのか、あるいは子どもを持たない選択をするのかも、すべて個人の自由です。誰もそれを強制することはできません。

しかし、ジョイセフの独自調査によると、「子どもを産めるのに産まないのは、わがままだと思う」と回答した29歳以下の若者が、男性30%、女性15%に上ることが明らかになりました。この結果を受けて、日本の教育や少子化対策の影響により、「産むべき」という社会的圧力が存在するのではないかと考えられます。

第二に、出産を選択しない背景には「経済的要因」

夫婦共働きで経済的に安定している世帯の方が、子どもを多く持つ傾向があるという調査結果が発表されました。女性が働くことで世帯収入が安定し、産後も復帰できる環境があることが、安心して子どもを持てる重要な条件となっているのです。

ジョイセフの独自調査でも、「子どもを持たない」理由として、若者の4割が「経済的な不安」を第一に挙げています。この結果から、出産を選択しない背景には明確な経済的要因があることが明らかになっています。

第三に、制度の矛盾と政治の責任 ー 真の少子化対策とは

自分の名前を変えたくないために結婚を躊躇したり、事実婚を選んだりしている人たちが現実にいる中で、選択的夫婦別姓の導入に反対しながら、結婚・出産を促進しようとするのは論理的に成り立ちません。この制度改革に反対することは、結婚・出産の障壁を自ら作り出していることにほかなりません。

国の役割は、すべての人が自分の人生を自分で選択できる環境を整えることです。女性に特定の役割を強制したり、身体の自己決定権を侵害したりすることではありません。
私たちは、政治家が発する言葉の重みを改めて考える必要があります。選挙では、SRHRを理解し、すべての人の人権を尊重する候補者を選ぶことが重要です。

ジョイセフは、SRHRを推進している国際協力NGOとして、SNSをはじめウェブサイトで引き続きSRHRに関する情報を発信してまいります。
一人ひとりの声と選択が、より良い社会を築くための第一歩となります。選挙の前に皆さん、立ち止まって考えてみてください。

Author

小野 美智代
カンボジアの友人が出産により命を落としたことをきっかけにジョイセフへ転職。これまで広報グループ長、市民社会連携グループ長、デザイン戦略室長、事務局次長を歴任し、2025年4月からはパートナーシップグループのディレクターとしてコミュニケーション・ブランド強化とファン拡大に取り組む。自他共に認める熱血&お調子者で、走りながら考え、創造することが得意。チャリティーピンキーリング、ホワイトリボンラン、I LADY.を発起。 プライベートでは、2人の娘と同い年の夫との4人家族。2005年から事実婚の形を選び、新幹線通勤を続けている。