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COVID-19と高齢者:国際的動向

2021.2.15

2020年度 人口問題協議会・明石研究会(2020年12月2日開催)
「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)が人口に与える影響」より

発表者:
国立社会保障・人口問題研究所 名誉所長
人口問題協議会代表幹事
阿藤 誠

国連人口部が2020年10月に公表した「世界人口の高齢化2020ハイライト:高齢者の居住形態」の要点を紹介する。

日本において、COVID-19による死亡数の約8割は、60歳以上の高齢者となっている。国連人口部による各国の年齢別死亡率の試算でも、COVID-19死亡率は高齢になるほど極端に上昇する。しかし、国によって死亡率の絶対水準だけでなく、青壮年層(20歳〜59歳)と高齢者(60歳以上)の死亡比率も異なる。

例えば、平均寿命の長いヨーロッパ諸国などでは高齢者の相対的な死亡水準が高く、寿命の短い国では低い(ベルギーや韓国では高齢者の死亡率は青壮年層の40倍だが、バングラデシュでは4倍に留まる)。

この違いの原因として、最も重要なのは各国による感染抑制策のタイミングと強度だ。

アジアの一部諸国では早期に対策を開始し、感染抑制に大きな効果があったが、欧米やイラン、ブラジルなどでは対策の遅れにより感染抑制に失敗した。

それに加えて、①(感染後の死亡リスクに影響する)個人の虚弱性や、②(感染リスクに影響を与える)高齢者の居住形態も、COVID-19による高齢者の死亡率の国ごとの違いをもたらすと考えられる。

個人の脆弱性は加齢や、加齢とともに増加するさまざまな疾患と、それによる死亡のリスクを指し、ある国の全死因死亡率(普通死亡率)はそのまま、その国全体の全ての病気に対する虚弱性(死亡リスク)を表すと考えられる。

これを年代別に見たときに、高齢者層と青壮年層の全死因死亡率の比率は、死亡リスクを持つ虚弱者がどれだけ高齢者に集中しているかを示していると捉えることができる。

その上で、各国の「高齢者と青壮年層の全死因死亡率比(虚弱者の高齢者集中度)」と、「高齢者と青壮年層のCOVID-19による死亡率の比」の関係を表にしたところ、寿命の長い国では全死因で高齢者が相対的に高い死亡率を示し(虚弱者が高齢者に集中しており)、COVID-19の死亡者も高齢者に集中しているが、寿命の短い国では虚弱者が全年齢に拡散しているために、COVID-19の死亡リスクも全年齢に拡散していることが示唆された。

一方、居住形態も他者との接触度合いに影響を与えることから、高齢者の居住形態はCOVID-19の感染リスクに影響を与えると予測できる。

単身世帯やカップルのみの世帯の高齢者に比べ、多世代同居世帯や親族と近くに住んでいる高齢者のほうがCOVID-19の感染リスクは高くなり、さらには高齢者介護施設に居住する高齢者ではより一段リスクが高くなると考えられる。

この仮定に基づき、高齢者の介護施設入居率と、高齢者のCOVID-19による相対的死亡率水準を見ると、「施設入居率が高い国では高齢者のCOVID-19相対死亡率は高く、施設入居率が低い国では低い」という強い相関が示された。

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