公開シンポジウム 「70億人の世界×70億人のアクション」開催

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2011.10.31

70億人の世界を考える

国連の世界人口推計(2010年版)によると10月31日に世界人口が70億人になりました。

そのカウントダウンに先立ち、10月27日に、私たちは公開シンポジウム「70億人の世界×70億人のアクション」を国連大学で開催しました。

このシンポジウムは、国連人口基金(UNFPA)東京事務所、人口問題協議会、(公財)ジョイセフの共催で、(公財)アジア人口・開発協会(APDA)、NPO法人2050、日本大学人口研究所、
神戸アジア都市情報センター、(社)日本家族計画協会の協力のもとで実施しました。

70億人の世界をどのように考えるのか。人口に関連するさまざまな課題への取り組みが、今、改めて検証されなければならない時を迎えているとの思いで、120名の方々が一堂に会しました。

世界人口は依然として増加していますが、日本は2005年からすでに「人口減少社会」に入り、いわゆる超高齢超少子化社会といわれています。

世界人口は、1987年の50億人から、1999年には60億人に達し、12年後の今年にはさらに10億人が増えました。そして、今後も増加は続き、国連人口部は、2025年には80億人、2083年には100億人を超えると予測しています。人口をめぐって国や地域によって、異なる現象が起こっていますが、世界人口は、増加の一途をたどっています。

世界の人口問題はあらゆる意味で、限られた地球上において、人類の現在未来を考える上で大変重要な課題であると思います。

そこで、今回のシンポジウムは、「70億人」を迎える人類にとって記念すべき年である2011年に、人口とあらゆる関連課題を、さらに掘り下げ、人類の将来のために私たちにできるアクションについて議論を深める絶好の機会となりました。

佐崎淳子国連人口基金東京事務所次期所長(11月1日就任)からオープニングのあいさつがあり、国連人口基金の世界の人口問題への取り組み対する力強いコミットメントが述べられました。

佐崎さん

世界人口白書2011をいかに読むか

引き続き、「「世界人口白書2011・70億人の世界:一人ひとりの可能性」をどう読むか」と題し、阿藤誠早稲田大学人間科学学術院特任教授により、白書の解説がありました。今年の白書は、世界的な人口問題をマクロの視点からもミクロの視点からもしっかりととらえており、人口と食糧、資源、エネルギーなど、また、人口と開発、貧困、また、女性や若者への投資の促進など、バランスよく分析解説しているとのコメントがありました。1994年のカイロ会議(国際人口開発会議)で、女性の視点が強調されたことは、重要でありタイムリーであったが、人口に関連する課題はそればかりではなく、マクロの課題も地球規模的には重要であると指摘されました。

阿藤さん

ひとりひとりのアクション宣言―参加型シンポジウム

今回のシンポジウムのディスカッション・セッションは、「70億人の世界×70億人のアクション」と題して、私たちひとりひとりがこの70億人の世界のひとりとして何をしなければならないか、また、何ができるかを考えてみようというセッションとなりました。

ディスカッサントの横山光弘さん(国際食糧農業機関(FAO)日本事務所長)からは、人口と食糧の視点から、長期的な責任ある効果的な農業投資への提言がなされました。杉山昌広さん((財)電力中央研究所社会経済研究所主任研究員)からは人口と気候変動・エネルギー政策の視点から多岐にわたる分析が発表され、エネルギー面でのさらなるイノベーションの必要性が強調されました。

横山さん


杉山さん

平本督太郎さん(野村総合研究所副主任コンサルタント)からは貧困とBOPの視点から40億人といわれる貧困層へのBoPビジネスモデルの構築が提案されました。白木夏子さん((株)HASUNA代表取締役)からは女性と若者の視点から、特にエシカルジュエリーを通じて起業した経験から、「「人」と「世界」のためにできることがもっとあるのではないか。悲劇ではなく、輝く人を生み出したい」と自分にできるそれぞれのアクションへの参加が呼びかけられました。

平本さん


白木さん

コーディネーターを務めたのが池上清子国連人口基金東京事務所長でした。池上さんの見事な進行で、会場がなごみつつ、一人一人が自分のアクション宣言をカードに書いて発表し、70億人の世界を自分の問題としてじっくりと考え、参加できる雰囲気を作り出し、120名全員参加のシンポジウムとなりました。

池上さん

一人一人が発表した宣言は、国連人口基金東京事務所のホームページでも紹介される予定です。

参加者からの「わたしの「70億人のアクション」宣言」のあと、明石康人口問題協議会会長(元国連事務次長)によるサミングアップが行われ、明石会長は、マクロの視点からもミクロの視点からも日本の国際社会で果たす役割は大きいことの認識を深めるように訴えました。また国際社会の中で名誉ある地位を占めていくべき日本のリーダーシップへのさらなる期待が表明され、10数年にわたるODA(政府開発援助)の減額に次ぐ減額に対しては強く警鐘を鳴らしました。

明石さん

70億人の世界を考えるシンポジウムは、「それぞれ今後のアクションを他の人々や国々へも広げていこう」という池上さんの呼びかけで終了しました。今回の参加者の皆さんからも、ひとりひとりが自分の宣言を発や動画の記録も行いました。

70億人の世界、私のアクションを発表する参加者

私たちは、70億人目の人類を迎える大変記念すべき年に、改めて、「宇宙船地球号」と乗組員であることを自覚し、ひとりひとりの乗組員のできることを、機会ある度に考えていきたいと思います。皆さんのご参加をお願いします。

(ジョイセフ常務理事・事務局長・鈴木良一)