GIRL meets GIRL College 第7回 青木愛氏 光畑由佳氏 「Work 知っておきたい、仕事のこと」
2014.7.8
- イベント
- レポート
講義前の恒例となった、ジョイセフスタッフによる途上国支援活動・ミニ講座。今回はタンザニアでリプロダクティブ・ヘルスサービスの強化プロジェクトに携わる開発協力グループの矢口が、支援活動のことや現地の女性の働き方などについて話をしました。
子だくさんが尊ばれ、1人あたり7~8人子どもを産むのが珍しくないタンザニアの中でも、妊産婦死亡率をはじめ、あらゆる開発(保健)指標が悪いことから、2011年よりプロジェクトが始まることとなったシニャンガ州シニャンガ県。
「①正しいリプロダクティブ・ヘルスの知識を村の人たちに伝える。②保健施設で提供されるリプロダクティブ・ヘルスサービスの質を上げる。③保健施設と村の連携体制を強化する」。
これらの活動を通じ、プロジェクト地域の女性のリプロダクティブ・ヘルスの向上を目指していることなどが語られました。また、現地女性たちは貧富の差が激しく、大学での教育まで終えて、ベビーシッターを雇ってバリバリと働く人がいる一方、小学校にすら満足に通えず、職業の選択肢がない女性たちが多く存在することが紹介されました。
「プロジェクト地域の女性たちの権利が低く、自分で決められることの範囲がとても狭いのが現状です。結婚の結納としてもらえる牛のために、親によって学校を途中で辞めさせられる女の子もいます。でも、そんな女の子たちは皆いつも笑顔で、お客さんが来ると言っては、とてもキラキラした幸せそうな笑顔で私たちを迎えてくれる。だからこそ、少しでも大切にしていかなくてはならないことを伝えていけたら、と思っています」と、矢口は最後に、力を込めて思いを語りました。
第7回GIRL meets GIRL Collegeは、ヴィリーナジャパン株式会社代表取締役の青木愛さんと、有限会社モーハウス代表取締役の光畑由佳さんによる2本立ての講義でした。
それぞれ、起業へのきっかけや、子育てしながらのワークライフバランスなどについて、熱くお話しされました。
最初に登壇した青木愛さんは、女性の人生において最も変化の大きい妊娠・出産・育児期間に焦点をあて、女性が楽しく美しく輝けるよう全面的にサポートすることを目的に、2006年にヴィリーナジャパン(株)を設立しました。
起業する前には、雑誌編集者としてキャリアを積み上げていた青木さん。中学生のころから憧れ続けた雑誌『ELLE』の編集者になる夢を叶えた30歳の時、大きな転機を迎えました。「憧れの雑誌の編集者になるという夢は叶いましたが、仕事が忙しすぎて、子育ても満足にできない。親が手伝いに来てくれていたが、どんどん疲弊していく家族を見て、これでいいのか」と疑問を持つようになったと言います。ベビーシッター代が月に60万を超える日もあり、自分の月収を超えることも。すっかりくたくたになっていた時、思い出したのは、2003年に1年間、日本の出版社を休職し、NYで『ELLE Girl』の編集職に就いていた時のことでした。職場で目にしたのは、子育ても仕事も颯爽とこなす女性編集者たち。徹底した成果主義のもと、やることをやれば子連れ出勤も許容するアメリカの出版社の方針にとても惹かれたと言います。
「人は夢を叶えると、次に進みたくなるもの」。仕事を辞め、起業することを決意しました。
青木さんが始めたのは、産後もドレスとして着用できるマタニティ商品や子ども服などの輸入販売。大きなお腹を隠すのではなく、上品に見せるドレスは多くの妊婦さんの支持を得て、2011年には広尾に路面店をオープンさせました。また、ジョイセフと協働し、開発途上国や東北の女性支援に力を入れていることにも触れ、「自分だけでなく、誰かを幸せにできる流れをつくることを思い描いて何かを成すのは、とても大切」とご自身のモットーを展開。これから起業や就職など、それぞれのカタチで羽ばたこうとしている受講生たちに、はなむけの言葉を贈りました。続いて、(有)モーハウスの光畑由佳さんが登壇し、授乳服の製作・販売を手がけるきっかけになったご自身の経験や、授乳服を通して女性たちに伝えたい思いなどについてお話しいただきました。
光畑さんがモーハウスを立ち上げるきっかけとなったのは、1997年、当時0歳のお子さんと外出したときのことでした。電車の中で泣き出した赤ちゃん。あやしても、何をしても泣き止まず、光畑さんは最後の手段として、車内で授乳することにしました。恥ずかしくて、いたたまれない思いに満ちた苦い思い出。この経験から、子育て中のお母さんたちが、いつでもどこでも、周りに気を遣わせることなく、授乳できる洋服を作るという発想が生まれました。
しかし、多くのお母さんたちに拍手喝采とともに迎え入れられると思った授乳服は、まったく売れなかったと言います。「女性はお母さんになると同時に、自分のために何か購入するのは贅沢だと思うようになります。だから、販売するのをやめました」。
光畑さんは考えを切り替え、情報発信に力を入れるようになりました。ショッピングセンターで、通りすがりのお母さんに授乳服を着てもらい、皆で授乳ショーをしたり、銀座の町を授乳しながらパレードしたり。子育て期間を積極的に楽しむライフスタイルの提案をしていきました。「授乳服は子育て中のお母さんを社会とつなぐ道具」という考え方は、徐々に浸透し、現在は表参道に路面店を持つまでに成長しました。
モーハウスは、従業員の働き方にも変革をもたらし、「子連れ出勤」を可能にしました。赤ちゃんを抱っこしながら仕事をする従業員の姿は、多くのメディアの注目を集めました。2014年4月には、北京で行われた「APEC(*)女性と経済フォーラム」において、モーハウスの子連れ出勤について、世界に発信してきたそうです。光畑さんは講義の終わりに、赤ちゃんの頃から母親と一緒にモーハウスに出勤していた女の子の写真を見せながら、こう語りました。「人形を抱き、手には紙とペンを持ち、ワーキングマザーごっこをして遊んでいます。仕事をする母親と過ごすことは当たり前だと思っています。この子が大きくなったとき、どんな未来を描くのか…。楽しみですね」。
新しいことを始めることを恐れず、「育児」も「仕事」もこなし、今もなお新たな可能性を想像しながら事業を展開し続ける二人の起業家の姿に、受講生たちも大いに刺激を受けた2時間となりました。
*:APEC(アジア太平洋経済協力会議)
その他の講義はこちら
http://www.joicfp.or.jp/jp/2014/03/31/22267/