ミャンマー保健医療協力への日本の役割

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2014.8.15

2014年7月6日、東京において「ミャンマーと日本の国際医療国際協力に係る今後の展開」と題するシンポジウムが国際医療福祉大学院などの共催で開催されました。満席300人を超える参加者を得て、ミャンマーの医療保健分野が、いま「熱い」という印象をあらためて持つことのできるシンポジウムとなりました。
ジョイセフの長年の友人であるティン・ティン・テー保健副大臣がユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を実現するためのVision 2030を含む基調講演を行うなど、ミャンマーの保健医療事情について、官学民の多岐にわたる角度からの中身の濃い討論となりました。ミャンマーの国立医療系3大学の学長も参加したパネルディスカッションもタイムリーな情報を得るよい機会となりました。
ミャンマーの8割近くを占める農村地域では医療・保健サービスが住民に十分に届かず、妊産婦死亡率が出生10万対200、5歳未満児死亡率は出生千対63(世界人口白書2013)を示しています。まだまだ改善すべきことが多くあることが報告されました。とりわけ、医師、看護師、助産師などの医療保健分野のさらなる人材の育成が急がれるととともに、彼らの現場での雇用の拡大も喫緊の課題であることが報告されました。実は、政府系の病院等では予算が限られていて必要な人材さえも雇用できないことが長く続いているのです。そのような状況下で日本がどのような支援協力ができるか十分な検証が必要であることも再確認されました。  
当日の国際協力機構(JICA)の発表でも、現在ジョイセフがJICAの支援を得て、エヤワディ管区のチャウンゴン・タウンシップで実施している草の根技術協力事業の紹介もされました。助産師と母子保健推進員の地域における妊産婦支援活動に高い評価をいただくことができました。保健システム強化が目下重要な課題となっていますが、上から下へのシステムだけでなく、下から上に向けてのシステムの強化が重要であると私は思っています。そこで、今回、プライマリヘルスケアに新たな焦点が当たっていることは、長年ミャンマーを知る者にとってうれしいことでした。
ミャンマーでは、無医村どころか無助産師村が多く存在しています。ミャンマーでは専門技能者の立ち会いの下での出産が約71%(同上)で、約3割の妊産婦が依然安全でない出産環境におかれていると推測できます。
ミャンマーは、4年前の2010年に20年振りの総選挙が行われ、テイン・セイン大統領のもと、民主化・市場経済を解放する方針が打ち出されて以来、諸外国の経済制裁も解かれ、今まさに経済投資が熱くなっています。併せて、海外からの援助協力も増加し、保健や医療分野もその重要な対象になっています。
しかし、一気に起こった投資ブームでミャンマー政府の受け入れ態勢も混乱していると思われます。今こそミャンマー政府がしっかりと「オーナーシップ(主導権・主体性)」を持ち、関係国や関係機関とのバランスのとれた「パートナーシップ」が望まれます。そのためにも、主要支援国としての日本のイニシアティブが期待されているのです。
ジョイセフもリプロダクティブヘルス分野のリーディングNGOとして、妊産婦や女性の命や健康を守る、地域参加型・住民参加型のきめこまかな草の根協力活動を引き続き行っていくとともに、全ての人々の健康を目指す保健システム強化の一助になればと思っています。
(2014年8月、東京にて)