「触れるケア」の原点を考える

2015年12月11日

  • お知らせ
  • ジョイセフコラム

ナイチンゲールの看護の原点

看護のパイオニアと言われるフロレンス・ナイチンゲール(1820-1910、英国人)が、看護の原点について、看護とは人間の持つ「自然治癒力」を高めることにあると述べています。そして、看護師の使命はまさにそこにあるとも言っています。

クリミア戦争の時も、患者の自然治癒力を高めるために、患者のおかれていた環境を変えることを率先的に実践し、患者の自然治癒力を高めたという記録が残っています。具体的には、患者の包帯を衛生的なものに取り換えたとか、病室の喚起や自然光の導入に努めたとか、カーテンを洗って気持ちのよい環境をつくったなど多くの逸話が残っています。患者の治療はもとより心のケアとか良好な環境の整備に努めることも看護師の使命であることを示したのです。

ナイチンゲールは患者の手をしっかりとにぎりしめて、優しいまなざしで患者を見つめ、時には優しく話しかけ、時には勇気づけ、元気づけたのではないかと想像できます。そして、そこに私は看護の原点を見るような気がします。

触れるケアで救われる人びと―未熟児から認知症患者まで

今、改めて、スウェーデンで1960年代に開始された「タクティールケア」(タクティールとは「触れる」ことを意味するラテン語)という看護の手法が注目を集めています。これは、当時、未熟児のケアに当たっていた看護師たちが、保育器の赤ちゃんに「触れる」ことで、生存率を上げられることに気付いたことに始まっています。日本でも「手当て」するということが、重要な看護やケアの原点であると言われています。その後、スウェーデンでは、手を触れることによって、不安や怒り、イライラといった精神症状を緩和することがわかり、いまでは広く応用されているとのことです。ハグ(抱きしめられる)することで落ち着きを取り戻すということもわたしたちの日常生活でも多々あります。

機械文明、医療技術や検査技術の発展は目覚ましいものがあります。それらの発展によっていかに多くの命が救われているかは計りしれません。しかし、患者は「病気そのものではなく」、その前に、これらのことは、人間であることを教えてくれています。

人としての尊厳が守られることや、人から人に伝わる心のふれあいが、人の気持ちや患者の自然治癒力を高めるということがさまざまな角度から証明されているのです。

タクティールケアは、最近では、認知症の患者へのケアにも応用されています。認知症の患者に対して、手や足、背中を手でやさしく、やわらかく包み込むように、ゆっくりとなでることによって、患者の意識や体調に劇的な変化を見せることがあると言うこともわかってきました。

「触れる」とか「手当て」について、そのもつ奥深い意味を改めて考えてみたいと思います。

(2015年12月、東京にて)

↑

寄付する

×閉じる