タンザニア:安全でない中絶-妊産婦死亡の主な原因

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2016.4.30

グッドマッカー研究所ならにタンザニア国立医療調査研究所等による、タンザニアの中絶の実態調査結果が公表されました。

それによると、タンザニアにおける2013年の中絶総件数は全国で40万5000件、そのほとんどが安全でない中絶(非合法の中絶)でした。またタンザニアでは年間に約100万件の「意図しない妊娠あるいは望まない妊娠」があり、そのうち39%が中絶という手段を選んでいることも今回の調査で分かりました。

その中の6万6600人の女性が中絶後のケア(ポスト・アボーション・ケア)を保健医療施設で受けていることも分かりましたが、一方で約1万人は何らの医療ケアも一切受けていないことが分かりました。政府はこれをもとにして、命を救うための中絶後のケアについて、さらに強化しなければならないとの方針を打ち出そうとしています。

また、中絶率についての地域別の調査もあわせて行われました。全国平均では、妊娠可能年齢の女性の1000人あたり36でしたが、これは東アフリカ諸国と類似の数値でした。また地域(Zone)によってその差があることも今回の調査で判明しました。Lake(湖) ゾーンでは51、南ハイランドゾーンでは47、ザンジバルでは11と、地域差がありました。地域ごとの違いは避妊実行率と反比例となっているようです。つまり避妊実行率が高い地域では望まない妊娠が少なく、それによって中絶率も低いということが証明されました。
避妊方法の選択肢を広げることや家族計画カウンセリングを充実・拡大することが重要であると提言しています。中絶が法律によって認められていないタンザニアでは、安全でない中絶が女性の命を脅かしていることが明らかです。また、中絶後のケアについて適切な技術や医薬品の不足も改善されなければならないと述べています。

あわせて、今後、タンザニアの中絶に関する法的な整備が早急に求められます。また、どのような状況においても安全で、法律によって認められた安全な中絶が女性の命を救うという認識を持つことが求められます。また、5人に1人の割で家族計画の満たされないニーズも明らかになりました。今後もさらに家族計画サービスの充実が必要です。

タンザニアの事例は、アフリカにおいては、決して特殊な事例ではありません。女性の命を救うために避妊へのアクセスや安全な中絶の確保も含めた、普遍的なセクシュアル/リプロダクティブヘルス/ライツ(SRHR)へのアクセスが求められています。

(ジョイセフ常務理事 鈴木良一 2016年4月、東京にて)