2016 年伊勢志摩サミットに向けた「世界人口開発議員会議(GCPPD2016)」 に参加して
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2016.5.16

会議の意義:63カ国139名の国会議員が参加

2016年4月26日と27日の両日、標記会議が東京で開催され、ジョイセフもNGOとして参加してきました。今年2016年は、日本政府が議長国となる「G7伊勢志摩サミット」が5月26・27日の2日間開催されます。それに先だって人口と開発に関する国会議員の国際会議が開催され、63カ国から国会議長、国会議員などで形成される世界各地域議員連盟の代表139名の最年少26歳~最年長70歳代までのオールジェネレーションの国会議員がアジア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ、アラブ地域等から一堂に会しました。

あわせてこの会議には国連人口基金(UNFPA)、国際家族計画連盟(IPPF)、世界銀行など関係国連・国際機関等の代表約50 名並びに日本国内からも 外務省、厚生労働省をはじめ、政府代表、国立社会保障・人口問題研究所など人口開発研究関連分野の多くの研究者、多数のNGO代表がオブザーバー参加をし、その数は優に150名を超えました。2日間の国会議員会議では、5月のG7伊勢志摩サミットに向けた提言を届けるべく大変熱い議論が交わされました。

会議は「日本で開催されるG7伊勢志摩サミットは、さまざまな開発分野の努力を統合した『持続可能な開発のための2030 アジェンダ(SDGs)』の採択後初めて開催されるサミットである」と位置付けられており、サミットの1カ月前という絶妙のタイミングで開かれました。63カ国139名の国会議員によるサミットに向けた発信は大変影響力のある意義あるものになったと考えられます。

日本側からも、高いコミットメントが表明されました。安倍晋三内閣総理大臣はその基調演説で、人口問題や国際保健の課題、女性や若者活躍を推進することなど持続可能な開発のための2030アジェンダへのコミットメントを改めて訴えました。また、日本の考え方であるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)も織り込まれていて、G7サミットをはじめとして、G7保健大臣会合やTICADⅥの一連の機会を通じて、日本に対する期待に応えるべく貢献していくことを述べました(安倍首相の演説へのリンク→http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2016/0426gcppd.html

大島理森衆議院議長、山崎正昭参議院議長、塩崎恭久厚生労働大臣、谷垣禎一衆議院議員・国際人口問題議員懇談会(JPFP)会長、武見敬三参議院議員・人口と開発に関するアジア議員フォーラム(AFPPD)議長、福田康夫JPFP名誉会長、並びにJPFP所属の国会議員が多数参加しました。各議員とも、日本がホストとなるG7サミットにおいて世界の国会議員の高いコミットメントがよい成果を生むであろうことを表明していました。国会議員が国民を代表するものとしての役割も強調されました。

4月26日の開会式
  • ①
    基調演説を行った安倍晋三内閣総理大臣は、国際保健への日本の貢献を述べ、UHCを含めた保健分野でのODA支援を継続することを表明しました。国際保健の課題として国境を超えた感染症への対応が挙げました。「だれも取り残さない」の目標のもとにUHC、女性と若者への支援の継続を約束しました。
  • ②谷垣禎一衆議院議員JPFP会長は、人間の尊厳を基本とした人口と持続可能な開発が重要であると強調しました。
  • ③福田康夫JPFP名誉会長による歓迎挨拶では、SDGsが始まった今年は、世界の国際協力の重要な年である。世界の人口問題はまだまだ未解決であり、リプロダクティブ・ヘルスの推進、望まない妊娠を防ぐ、女性の教育など、一人ひとりの幸福のために今こそ未来を見据えた議論をする時期であると訴えました。
  • ④歓迎挨拶をする大島理森衆議院議長、国民に選ばれた国会議員の責任と役割が重要であると強調しました。
  • ⑤2日間にわたり会議全体のまとめ役を務めた武見敬三参議院議員の貢献は会議参加者から賞賛されました。
  • ⑥挨拶をするババトゥンデ・オショティメインUNFPA事務局長は、SRHRの普遍的アクセスの保証を訴えました。

3つのアプローチの提示

今回の会議は、2030 アジェンダの基本理念である「人間の尊厳の保たれる社会の構築」を達成することは、日本が長年にわたり取り組み、世界に提唱してきた「人間の安全保障」の実現と軌を一にするものです。主催のJPFPとAFPPDが世界の各地域に展開する議員連盟と連携協力し、日本で開催のサミットに向けてSDGs に示された包括的な視点から、彼らが採用した3つのアプローチを提示し、サミットに示唆を与えることになりました。
それらは、

  1. ジェンダー平等と女性の活躍、およびリプロダクティブ・ヘルス/ライツの保証
  2. 若者への投資
  3. 活力ある健康長寿社会の実現

を大きな枠組みとして提示しました。
人口と持続可能な開発に各国や国際社会がいかに取り組むかという問題提起と戦略の提示を国会議員の立場から闊達に行ったものとなりました。

セッションテーマ

今回の会議のセッションテーマは、

  • ⑫セッション1
    RH、UHC,女性のエンパワーメント、ジェンダーの平等
  • ⑬セッション2
    若者への投資、健康、教育、雇用と人口問題
  • ⑭セッション3
    経済的に活力ある高齢化
  • ⑰1セッション4
    人間の安全保障と感染症危機管理体制の確立
  • ⑯セッション4(分科会1)
    医療者も巻き込まれる感染症ケア
  • ⑮セッション4(分科会2)
    市民社会と国会議員の対話-G7、TICADを経てSDGs達成へ
  • ⑰2セッション5
    SDGs期におけるグローバル・パートナーシップに向けた国会議員と議員ネットワークの役割
  • ⑰3
    集合写真

でした。

また、現在、世界ではテロの脅威が覆いかぶさっていて、世界平和に負の影響を与えています。そのことも緊急課題として取り上げられました。しかし、テロの脅威が他の重要な課題を払拭してしまうことのないようにバランスのとれた平和構築のさまざまな課題に取り組むことも再確認されました。社会の基礎となる多くの課題を解決しなければ、テロを生む温床を改善できないことも認識しなければなりません。若者の教育、保健、雇用、自分の所属する社会への帰属と愛着を持つこと等も基本的な条件であることを考える、各地域から参加した139名の国会議員にとってもよい機会となったと考えます。

難民問題、環境問題などの国際的課題について、全体会議での話合いの中ではもの足りなかった国会議員もいたようですが、SDGs全体においては重要な課題であることは確認されました。来年2017年のイタリアサミットでは、難民問題は重要な共通課題として話し合われるとのコメントがイタリア代表からありました。

G7サミットに向けて宣言文の発表

これらの議論をまとめた宣言文では、各セッションでの議論を踏まえて、伊勢志摩サミットへの提言・宣言にまとめ、世界の国会議員の役割を再確認し、SDGs達成に向けた“Declaration and Recommendations ” (宣言と提言)として、4月27日にまとめて全会一致で承認、発表されました(http://gcppd2016.org/jp/declaration/)。会議の詳細や提言宣言については、JPFPとAFPPD、またGCPPD2016のWeb上に掲載されています。
この宣言文は、会議終了後の27日に安倍総理、岸田外務大臣に手交されました。

また、今回の会議においては、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)が主流化されたと言っても過言ではありません。日本が1961年に開始した国民皆保険を世界状況に普遍化し、UHCとしてまとめられた国際保健の理念戦略として、世界の国々が、取り組んできていることが要所、要所でコミットメントの表明として表れていたことは特筆に値すると考えます。

ジョイセフは、サミットに向けて、他の多くの関連NGOや市民社会とともにアドボカシー活動を行っています。SRHRのアクセスの保証、UHCの推進、女性のエンパワーメント、ジェンダーの平等、具体的には、毎日830人の女性が妊娠と出産によって命を落としている現状を踏まえて、世界の女性と妊産婦の命や健康を守るあらゆる分野の積極的な取り組みを、日本のNGOとして、あらゆる力やリソースを結集して推進していきたいと思っています。

(ジョイセフ常務理事 鈴木良一 2016年5月、東京にて)

  • ⑦山崎正昭参議院議長、今回の会議で発表された宣言文の重要性を確認しました。
  • ⑧塩崎恭久厚生労働大臣、UHCを含めた国際保健への取り組みについてはG7神戸保健大臣会議の議題となることを述べました。
  • ⑨アーサー・エルケンUNFPAコミュニケーション・戦略パートナーシップ局長、妊娠出産が原因で毎日830人の命が失われているとのべ、妊産婦や女性の命を守るための取り組みが重要であることを強調しました。
  • ⑩テウォドロス・メレッセIPPF事務局長、世界170余カ国でSRHRの推進にコミュニティで取り組むIPPFの役割はますます重要であると述べました。
  • ⑪次期G7サミットホスト国代表、サンドラ・ザンバ議員(イタリア)、次期会議では人道支援の課題、とりわけ難民問題はヨーロッパ諸国での重要課題であると来年のG7の展望を述べました。