「妊産婦・新生児保健ワンストップサービス」プロジェクト

6人のパイオニア、ザンビアから来日: 日本の経験やノウハウを学ぶ

2016年9月6日

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ザンビアのワンストップサービスのさらに力強い推進のために

ジョイセフは現在、ザンビアのコッパーベルト州の2つの郡で標題のプロジェクトを2014年12月から3カ年計画で、実施しています。外務省の日本NGO無償資金協力の支援等を得て妊産婦・新生児(MNCH)の「ワンストップサービス」の実現を目標としたプロジェクトです。

本プロジェクトの今年度の活動として、日本の経験や知見を学ぶためジョイセフは8月10日~24日の間、ザンビア共和国の中央・州・郡政府レベル、および現地協力団体のIPPFザンビア(ザンビア家族計画協会:PPAZ)から6名の代表者を受け入れました。日本の地域(長野県須坂市、長野市等)における市町村レベルの母子保健推進活動や思春期ピア活動、また、産む立場に立ったお産のあり方(ソフロロジー分娩)を学びました。日本の経験や知見を学ぶことが目的でした。本プロジェクト実施期間後半の大きな課題である、「自立発展性(サステナビリティー)」の強化に向けて多くのノウハウや戦略のヒントを来日中に得ることができたようです。それらをもとに、最終日までにアクションプラン(行動計画)の作成につなげました。

プロジェクト概要
目的 ザンビア農村部のプロジェクト地区において、妊産婦・女性による質のよい保健サービスの利用が増加する。
現地協力団体 IPPFザンビア(ザンビア家族計画協会 PPAZ: Planned Parenthood Association of Zambia)
対象地域および人口 コッパーベルト州(州都ンドラ市)
マサイティ郡5地区(人口117,393人)、ムポングウェ郡5地区(人口241,875人)、
対象地域合計人口:241,875人(2016年現在)
支援連携協力
外務省、日本の企業・団体・個人からの寄附、国際家族計画連盟(IPPF)
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    世田谷区長表敬訪問(左から3人目が保坂展人区長)
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    文京区長表敬訪問(左から3人目が成澤廣修区長)

産前から乳幼児までの「継続ケア」の
包括的なアプローチの実施を目指して

ザンビアの地方行政は、村レベルには保健省の所管による保健クリニックが地区ごとに一カ所設置されていて、助産師、看護師数名が駐在し運営しています。ただし、保健クリニックの管轄区域が広く、場所によってはクリニックから自宅まで数10キロも離れていて、クリニックにたどりつくのに何時間も歩かなければならないというのが一般的です。また、
保健施設の助産師、看護師が十分に訓練されていない、施設の機材が整っていない、コミュニティの住民が十分な知識を得ていないなど、妊娠中の女性は産前から出産、産後そして育児に向けて「継続的なケア」を受けることが大変困難な状況にいます。

ジョイセフは上記の課題を受けてザンビアでは産前から乳幼児までの「継続ケア」の包括的アプローチの実施を目指しています。本プロジェクトの大きな特徴は3つです。

1.保健スタッフ/ボランティアの能力強化と住民のエンパワーメント:保健スタッフ(助産師、看護師など)の再研修事業、母子保健推進員(SMAG)の育成と再研修、若者によるピア・エデュケーター(PE)の育成、コミュニティの参加の推進(プロジェクト実施10地区の運営委員会(LSC)の設置(村長、教師、宗教指導者、女性代表、保健スタッフ等10名で構成)と支援、マタニティハウスのメンテナンスと壁面へのメッセージ・ぺインティング活動等。

地区レベル運営委員会(LSC):プロジェクト実施地区単位で運営委員会(LSC)を設置しプロジェクトの運営調整業務を行っています。これは、既存のCommunity Neighborhood Committee(行政を担う委員会)を最大限活用しています。プロジェクトのLSCにはSMAGや若者PEのメンバーも参加し、構成されています。

2.リプロダクティブヘルスサービスの向上:母子保健施設(母子保健棟、マタニティハウス、ユースセンター、助産師住居等の建設群)の建設および改善、を柱としています(機材供与も含まれています)。

ワンストップサービスサイト:ワンストップサービスプロジェクトで安全な分娩を確保できる母子保健棟や、遠距離から事前に移動し出産まで待機できるマタニティハウス、それに助産師の宿泊棟を建設し居住性の改善ができ助産師の24時間態勢がさらに充実し、へき地でも派遣を希望する者も増えました。さらには新しいチャレンジとして、若者のためのユースセンターを新規に設置し、若者PEによる思春期保健の活動推進が可能となりました。

3.地域の母子保健推進のための運営委員会のマネジメント能力強化と環境づくり:地域での母子保健活動の推進のために、運営委員会のメンバー(各10名)の運営能力の強化を実施しています。また、運営委員会などを通じた地域の母子保健推進のための環境づくり、啓発活動なども重要な課題となっています。

企業・団体・個人からの支援

このプロジェクトの特徴として、もう一つ、日本の多くの企業や団体、個人が参加して妊産婦と新生児の保健改善のために支援する連携協力を挙げることができます。

たとえば、医療資機材の供与やSMAGやPEの研修支援(テルモ)、水タンクの設置(グライド・エンタープライズ)、ソーラーパネルの設置(資生堂、ミネ、ヴィリーナジャパン)、SMAGへのユニフォーム(Tシャツ)の提供(VIRINA)、マタニティハウスのメンテナンス支援(VIRINA)、人力発電自転車の提供(JKA)、産後健診や家族計画セッションの実施支援(to mothers みちのく)、赤ちゃんやお母さんの衣料品や子ども靴(赤ちゃん本舗、ユニクロ、そごう・西武など)とそれぞれの企業・団体の理念と合致する社会貢献活動(CSR)やプロジェクト実施支援を手助けしています。PPP(Public, Private, Partnership、官民連携)とよく言われますが、このプロジェクトでは、そのうえにC(Community:コミュニティ)を加えて、C+PPPと呼んでいます。地域(C)に根差した母子保健活動を官民連携で支えるという構想です。

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    VIRINA表敬訪問
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    そごう・西武表敬訪問
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    商船三井訪問

これら多くのアプローチによって関係機関や関係者の連携協力体制により、プロジェクト地域では施設分娩の増加、家族計画実施者の増加、また300名に及ぶSMAGや60名の若者PEの育成により、住民や若者の行動変容のためのコミュニケ―ションや健康教育活動がきめ細かく行われています。それにより、地域の妊産婦および住民レベルの妊娠や出産、思春期保健に関する知識や情報の向上をみることができ、地域の人々の健康を求めるのための行動変化が起こっています。徐々にコミュニティによる当事者意識(オーナーシップ)も強くなってきています。

ザンビアンナイトの開催:報告とお礼の会

今回は、支援して下さっている企業や団体、個人に対する進捗報告や支援への感謝を伝えるために時間の許す限り、直接訪問して報告をしました。また、進捗報告の会としてジョイセフフレンズや支援企業に対して「ザンビアンナイト(ザンビアの夜)」を開催し、総勢約50人の参加者を得て、ザンビアの女性・妊産婦・新生児の状況やワンストップサービスプロジェクトの進捗を報告しました。

アフリカのザンビアそしてコッパーベルト州、マサイティ郡、ムポングウェ郡、直線距離で13,000キロを感じさせない、臨場感あふれる報告会となりました。

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    ザンビアンナイトの様子
  • zam07『子育てひろば』高甫地区

日本で学んだこと:ザンビアで生かす

今回の来日メンバーは、ザンビアの中央政府・保健省から母子保健リプロダクティブ・ヘルス専門官、コッパーベルト州保健局長(州は日本の県にあたる)、プロジェクト郡(マサイティ郡、ムポングウェ郡(郡は日本の市町村に当たる)の郡保健局長、連携協力NGOであるIPPFザンビアの事務局長および本プロジェクトの担当者でした。まさにプロジェクトの各レベルの中核となる責任者ばかりで、彼らは、これからもザンビアにおける妊産婦・新生児保健ワンストップサービスの「パイオニア」として活躍してくれることを期待されています。

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    三木正夫須坂市長(中央)
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    保健補導員さんと
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    須坂市健康福祉部と保健補導員さんと一緒に

彼らは、長野県須坂市をはじめとした日本の多くの人々との交流から多くのノウハウを学び、それらのポイントは以下の通りでした。
1.住民参加:住民たちのイニシアティブ・オーナーシップ、住民の健康は自分たちが守るという強い意志と責任感
2.リーダーシップとチームワーク:市長をはじめとした、各レベルのリーダーたちの住民のニーズを満たそうとする強いコミットメント(責任感)、そして保健関係機関および保健師などを含む関係者のあらゆるレベルでのチームワーク
3.ボランティアスピリット:とくに金銭的な見返りを求めない無償の地域愛、住民愛、地域に尽くす喜びをもつ人々
4.学ぶ姿勢・人材養成:一人ひとりの保健ボランティアが常に新しい知識や情報を得ようとする向上心、そしてそれに応えようとする保健や行政スタッフとの連携、また、それらの相乗効果、等。
5.産む立場に立った出産:産院による「妊婦一人ひとりに合った安心できるお産」の提供
6.エビデンス(根拠となる統計数値統計)の活用方法:統計を活用して地域分析及び地域の事業戦略の立案に活用

新しいアクション:さらなる飛躍へ

これらを踏まえて、プロジェクトの後半へのさらなるインプットが最終週に議論されて、以下のような方向性がまとまりました。

1.住民参加:住民参加をさらに促すとともに、住民同士の互助精神を推進するための啓発活動や行動変容のための広報活動をさらに強化する
2.リーダーシップとチームワーク:地区運営委員会の組織とオーナーシップの強化をさらに図り、また保健スタッフとの連携強化のもと、次のリーダーを育成する。地域による収入創出活動を促進しノウハウを伝えて、経済的自立も含めた、長期的な自立達成を図るチームワークを強化する
3.ボランティアスピリット:SMAGやPEの地域での貢献に対する認知度を上げるため尽力する
4.学ぶ姿勢・人材養成:保健スタッフの技術向上による質的サービスの強化、SMAGやPEの知識・情報の向上を含めた再教育を強化する。そこにはサービス提供側の質の向上、妊産婦の(産む立場に立った)適切な情報とケアの提供を強化。施設の管理強化(5S等)を含め、保健スタッフの能力強化を行う。
5.エビデンス(根拠となる統計数値)の活用方法:活動や事業を的確に計画通り実施するために、活動計画に合わせた統計を取り、地域の人々に「見える化」するための統計掲示板を設置するなど、も加えられました。

SMAGやPEの選抜基準の見直しも再検討することになっています。須坂市では保健補導員の任期を2年として交代しており、その蓄積で、多くの市民が保健の推進活動に参加することができています。ザンビアでは研修の予算等に限りがあり、難しいのですが、今後のSMAGやPEの活動の継続への再検討が始まります。PEはドロップアウトが多く対応策が求められています。

これらの行動計画を地道に一歩一歩実施することにより、プロジェクトのサステナビリティ(自立発展性)にしっかりと繋がっていくことが期待されています。今回の日本での学びで、多くの経験や応用可能なノウハウを得ることができたと6人は最終日に報告してくれました。

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    長野県ピアカウンセラーの皆さんとライフライン作成
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    丸山産婦人科医院:渡邊智子先生を囲んで
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    長野県ピアカウンセラーの皆さんと

ジョイセフは引き続きザンビアの農村地域での妊産婦や乳幼児の保健の向上に向けて、現場の取り組みへの技術支援を続けていきます。高いオーナーシップを持っているザンビアの人々なら、さらなる成果が期待できると思っています。

ザンビアの妊産婦や乳幼児の命や健康を守るための活動に対して皆さまの引き続きのご協力ご支援をお願するとともに、本プロジェクトの成果を今後も長い目で見守っていただければまことに幸いです。

(ジョイセフ 常務理事 鈴木良一 2016年9月、東京にて)

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