「ネウボラ」(フィンランドの子育て支援プログラム)に学ぶ:

シンポジウム「妊娠から子育てを地域で支える!~産後ケアを考える」 に参加して

2016年10月7日

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  • ジョイセフコラム

日本では、少子高齢社会における妊娠、出産、育児・子育てなどにおいて、どのようにやさしく家族や親子に寄り添う体制やプログラムを作るかが喫緊の課題となっています。

日本の母子保健行政は世界でも卓越したものであるということは間違いありません。しかし、今日少子高齢社会において、さらなる子育て支援を行う上での課題は残されています。

2016年9月15日、標記シンポジウムが開催され、「妊娠・出産包括支援モデル事業」、「子育て世代包括支援センター」、「産後ケア」、「フィンランドの家族政策・子育て支援プログラム:ネウボラ」などをキーワードに、地域における妊娠期から「切れ目のない」子育て支援の仕組みづくりについて、とくに「産後ケア」を中心に議論が展開されました。シンポジウムでは、少子化時代の子育て支援について行政の役割、地域の支援協力体制などの重要なテーマが終日熱心に話し合われました。ワンストップで各種のサービスやケアが受けられるフィンランドの事例「ネウボラ」に今注目が集まっています。目下「日本型ネウボラ」のモデル事業が実施されているところでもあり、大変タイムリーなシンポジウムとなりました。

シンポジウム(主催:母子保健推進会議)の参加者は、日本各地の自治体から母子保健・子育て支援担当者、医療機関(産婦人科等)の関係者、看護系大学教員、関連団体・NPOの代表の方々等、赤坂区民センター区民ホール満席の約400人が集まり熱い討論が繰り広げられました。

newvola02「最近の母子保健を取り巻く状況―子育て世代包括支援センター事業の全国展開を中心に」を神ノ田昌博厚生労働省母子保健課長が講演

妊娠・出産包括支援モデル事業の実施による成果や課題

2年前の2014年(平成26年)度に「妊娠・出産包括支援モデル事業」が、全国29市町村で実施され、関係部署、機関の連携による支援の重要性が改めて認識されました。現在は妊娠期から子育て期にわたる「ワンストップ」拠点を立ち上げ支援しようと「子育て世代包括支援センター」の法制化が進められているところです。

目下「切れ目のない」子育て支援システム作りがモデル事業として行われています。それには、地方自治体(市町村)・行政、地域、医療機関、地域のNPOなど多くの関連機関や関係者間の連携協力が必要となります。開始から2年が経過し、成果や課題が徐々に明らかになってきていると同時に、今後の取り組みへの課題も見えてきています。

フィンランドの「ネウボラ」に学ぶ

今回の課題の一つであった「産後ケア」は、出産後間もない母親の心身の健康と子育てを支えていくために重要であるが、この事業について自治体と医療機関等の理解度に「温度差」が生じていることがすでに散見されると報告されました。

フィンランド(人口約550万人)で、1922年から始まり、1949年にはすべての自治体で実施され、長い歴史のなかで実績を上げている「ネウボラ」(子育て支援プログラム)から学ぶことが多いことも一同の共通認識となりました。ネウボラ(newvola)とは、フィンランド語で「アドバイス(neuvo)の(la)場」という意味です。このプログラムの中には、母子保健等の保健政策のみならず家族福祉政策も統合されており、社会保障制度も、並行して継続的に改善されてきています。母親手当、母親休業、親休業、父親休業、給与の保証制度、児童手当、保育所等の保育制度の充実など幅広い事業が統合されています。また「ネウボラ」では、就学後についても手厚く保証されています。教育では大学院まで授業料が無償となっています。このような長年の歴史を持つフィンランドの事例が、妊娠から始まり「切れ目のない」国や地域社会による支援事業があって、結果として、フィンランドの合計特殊出生率も平均1.8で推移してきていることが紹介されました。日本がフィンランドからどこまで学べるかが今後の課題であると思いました。

newvola01フィンランド大使館から「ネウボラ」について激励のメッセージがありました

ネウボラについての詳細は、以下を検索してください。
http://www.finland.or.jp/public/default.aspx?contentid=332415

日本型ネウボラに期待する

フィンランドの子育て支援プログラムの経験を踏まえて「日本型ネウボラ」として先駆的に取り組んでいる自治体、医療機関等からの報告を聞き、今後の地域での妊娠期から切れ目なく親子を支えていく仕組みづくりや、出産後の産後うつや産後の子育て不安に陥っている母親や家族に寄り添う「産後ケア」についても、今回のシンポジウムでは、考える絶好の場になったと思います。議論は始まったばかりですが、今後の広がりや展開に期待しています。

  • newvola03シンポジウムⅠ「地域で妊娠期から切れ目なく親子を支えるために」のテーマで議論されました
  • newvola04シンポジウムⅡ「これからの産後ケアを考える」では、それぞれの立場からの経験の共有と取り組みについて意見交換が行なわれました

日本においては、各地域や医療機関等で実施されている母子保健の各種事業が、「ネウボラ」の新しい考え方のもとで整理され、切れ目のないサービスのパッケージ化が促進されることが望まれます。

ジョイセフでは、長年、途上国からの母子保健関係者を受け入れて研修プログラムを組んでいますし、途上国での母子保健家族計画の包括的支援を実践的に行っています。私たちは地域に根差した日本型ネウボラの今後の取り組みに高い関心と期待をもっています。そこから途上国が得ることも多いのではないかと考えています。今後も新しいチャレンジにさらに注目して行きたいと思います。

(ジョイセフ 常務理事 鈴木良一、2016年10月、東京にて)

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