ザンビア保健セクターの課題と戦略

2017年1月19日

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新5カ年国家開発計画の国家保健戦略(2017~2021年)

ザンビア保健省による2017年1月からの新しい国家保健戦略の概要を、この機会に概観しておきます。

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母子保健・家族計画関連

母子保健に関しては、2015年末までの達成された指標(保健省)においては、5歳未満児の死亡率(出生千対63)、新生児死亡率(出生千対、1990年に34が2015年に24)、妊産婦死亡率(出生10万対、1990年598から2015年に398)について、それぞれの着実な進展を見せています。

しかし、依然として多くの課題を残しているのも事実で、SDGs(持続可能な開発目標)においては、妊産婦死亡率は、2030年までにすべての国で出生10万対70未満を目指しており、ザンビアにおいてもさらなる尽力が求められています。

子宮頸がんの35万件のスクリーニングが行なわれる計画です。罹患率は依然として高いと考えられます。予防可能であることから更なる予防接種が望ましいと保健省では考えており、2020年までには全ての郡でスクリーニングが可能になるようにしたいと発表しています。

乳幼児の課題としては、麻疹(はしか)・風疹、ポリオなどが抑制できておらず予防接種の継続が必須となっています。

また、母子栄養もキーワードです。栄養状態は母親も乳幼児ともに良いとは決して言えないのが現状です。飢餓からの脱出の後は、バランスのよい栄養摂取へと栄養教育も含めて重要となってきます。妊娠期(270日)そして出生後の乳幼児期(2年間365日×2年=730日)の栄養状況の改善、「人生最初の1000日間」の栄養の摂り方がさらに改善されることが目標です。

家族計画の普及活動の強化も計画に織り込まれています。とりわけ農村地域では、女性が家族計画の方法も知らないまま多くの子どもを産んでいるという現状があります。さらに女性は出産間隔(スペース)を空けることや、自分たちで扶養できる範囲での子どもの数を望んでいることはよくわかっています。課題は「男性の巻き込み」です。確実な近代的避妊法を推進することが計画に織り込まれています。これに関して保健スタッフの教育訓練も必要となるといっています。

HIV/AIDSおよび感染症対策に関して

ザンビアは依然としてHIV/AIDSの深刻な国です。南・中央アフリカの中でHIV陽性率が依然として最も高い国となっています。最新のDHS(人口保健調査)では、HIV感染率が13.3%となっており、人口1502万人で試算すると約200万人が感染していることになります。かつて国民の25%以上
と言われた時点から見れば相当の改善がみられてはいますが、依然として驚異的な数字です。また新規感染者の71%が思春期の若者であると言われていることも看過できません。このような現状でも、若者をはじめとして、その予防には依然として取り組みが少なく、国民の認識も低いと言わざるを得ません。一例を挙げると、コンドームの使用率は、保健省の調査によると、最近のセックスでコンドームを使った男性は平均で14%、女性では11%と低い使用率を示しています。これが農村地域では、それぞれ10%、9%とさらに低率です。また性行為の相手が妻や恋人ではなく不特定多数であるという比率が高い(女性で17%、男性で38%、2009年)という数字もあります。試算によると毎日約1000人がHIVに新規に感染しているといわれています。母子感染も課題です。予防に関する知識の普及やコンドームの使用の奨励などの取り組みがさらに求められます。

HIVとあわせてマラリア、結核なども依然として課題となっています。マラリアについてはマラリア蚊がジンバブエとの国境で蔓延しており、国を超えた対策を訴え、黄熱病の対策も強化するとしています。輸血も現行体制では予算化されていないことを指摘し、今後、予算ラインを追加するとしています。

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農村保健施設(ヘルスポスト)650カ所増設計画とその課題

目下の保健戦略の一環でザンビア保健省は、全国の無医村・無助産師地域を対象に、ヘルスポスト(保健ポスト)を650カ所建設しています。現在活動している助産師や看護師などの保健従事者が数人配置されている農村保健所の下部施設として、最低1名の保健従事者が配置されることになっています。2016年6月までに199カ所が完成し、2016年末日までにすべてが完成すると表明していますが、依然として完了したと言う報告は聞こえてきておらず、依然として課題があるようです。

建物だけをつくればよいということではないはず。水や電気、施設や機材、基本的なサービスが可能な医薬品の配置、助産師施設の設置、派遣される保健従事者の居住環境などが今後どうなっていくのか。また保健ポストができたとしても住民へのサービスの質の確保のためにも保健医療従事者(助産師や看護師)が喜んで、赴任できる環境づくりも重要ではないかと考えます。

保健に関するさらなる改善点

新5カ年計画では、保健省はさらなる改善点についても言及しています。それらは、保健予算の確保、基本薬品や資機材の確保と適正な配付、保健事業におけるガバナンス(よい統治)やリーダーシップの強化などです。また、HMIS(保健統計)の整備、とりわけコミュニティで保健指標の適切な回収と整備及びモニタリングでの活用です。

さらにはユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の一環で、ザンビアでも社会保険制度の早期の実現を目指します。目下法整備を急いでいるとのことです。ザンビアでは、依然として、高度の医療サービスを受けようと思うと相当の費用が要ります。「お金が命を救う」のではなく、誰もが自分のできる費用負担で手の届くところに質の高い医療が望ましいのです。これは持続可能な開発(SDGs)で謳われていて、すべての国が取り組むことになっています。

加えて最近の傾向としてザンビアでも死因が、生活習慣にかかわる疾患やがんなど高度の医療を要するものとなってきています。そのための対策が早急に必要となってきていることが保健セクターの会議でも指摘されています。

以上、保健省が最近、当地で連携協力している多くの開発パートナーとのセクター・アドバイザー・グループ(SAG)の会合の折に発表したものをベースとして、最新の資料も含めて報告しました。

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(ジョイセフ常務理事 鈴木良一、2017年1月、東京にて)

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