「誰一人取り残さない」世界の実現をめざす

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2017.3.15

SRHRとナショナリズムの台頭:2017年は正念場です

2017年1月のトランプ大統領就任直後から、世界のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)を取り巻く環境の急激な変化は、まさに「歴史的な変化」と言っても過言ではないほど、いま世界を震撼させています。トランプ大統領は「グローバル・ギャグ・ルール」(口封じの世界ルール:中絶ケアを実施している機関に対する支援援助を中止する大統領令)に就任早々署名しています。また英国も欧州連合(EU)離脱に向けての準備段階に入っており、今までグローバルな視点から多くの国際NGOに対して行なっていた資金援助の方法の変更を表明しています。これらの余波は実に大きく、今までの国際協力の環境が抜本的に変わることを意味します。ジョイセフにとっても、2017年は今後のあらゆる困難に立ち向かうべく新たなチャレンジの年となるでしょう。

ヨーロッパの難民・避難民の課題、テロとの戦いなど、戦略課題は確実に変化してきています。多くの国で今までの人道主義から反転し、国内政策や国益のみを主張する論調が聞かれ、国によっては国民的支持を得ています。ナショナリズム(国益主義)が台頭し、いわゆるグローバリズム(地球規模的な考え方)が萎んでいるのです。政治アナリストは、「内政重視主義」、「保護主義」、「国益重視」あるいは極端には「右傾化」「国粋主義」などと論評しています。昨日まであった、全ての人々の明日を考える「人類愛」はどこかに消えてしまったかのようにみえます。

セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)分野の
試練と挑戦

すべての国連加盟国が採択し、2016年1月に始動した国際的な開発目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」があります。17目標のうち、ジョイセフに関連するのは、主に目標3と目標5です。目標3の「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」には、妊産婦死亡率の削減、新生児死亡率の削減、家族計画・リプロダクティブヘルスサービスの普及、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC:Universal Health Coverage)の達成などが謳われています。目標5の「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」には、カイロ国際人口開発会議(1994年、ICPD)の行動計画および北京世界女性会議(1995年)の行動綱領等の成果文書に従い、SRHRへの普遍的アクセスの確保が盛り込まれています。

現在の世界の潮流は、SDGsにもSRHRにも影を落としていると多くの人々が感じています。各国のグローバリズムに基づいたODA(政府開発援助)や国連中心主義のスピリット(精神)や方針がナショナリズムを基盤とする国益主義の方向に大きく舵を切ろうとしています。ヨーロッパや米国をはじめとして、難民・避難民救済や人権擁護よりも、国内の経済成長・産業保護などの思想が浸潤して来ているのではないでしょうか。

ジョイセフは、SDGsを推進する国連主義をとる日本政府をはじめとした、国連機関や国際機関並びに日本のODA機関やNGOとも密接な連携協力のもと、世界の満たされていないニーズ(Unmet Needs)や差別の中で日々苦しむ人々への支援を継続してまいります。

私たちのミッションは終わっていません

現在でも、世界では年間に30万3000人の女性が妊娠や出産が原因で命を落としています。その数は毎日830人と推計されています。妊産婦死亡がゼロになる日まで私たちのミッション(使命)は終わりません。

「誰ひとり取り残さない」世界の実現を目指すSDGsを再確認し、心をひとつにして日々の活動を推進してまいります。妊産婦死亡率の削減、SRHRならびにユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)などの普及・促進のため邁進していきたいと思います。

皆さまの引き続きのご理解とご支援・ご協力をお願い申し上げます。

(公益財団法人ジョイセフ 常務理事 鈴木良一 2017年3月、東京にて)