電車を止める看護師(ミャンマー)

2017年4月25日

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  • ジョイセフコラム

ミャンマーで、患者のためなら「電車を止める」看護師長に会いました。
私の驚きを皆さんとも共有させていただきます。

2017年2月ミャンマー中央部のマグウェイ管区にあるタウンジー・タウンシップのココゴン・ステーション病院を訪ねた時のことです。看護師長にインタビューを行っていた時に彼女から出た、私にとっては驚きの言葉でした。

私の質問はごく単純なものでした。
「緊急搬送の時には村からどのように車両を調達するのですか」
「村の人々は協力的ですか」
「雨季の時は道路が悪いと思いますが、どのようにして対応していますか」
というものです。

「私たちは、車で間に合わない場合や雨期の時は、この病院のすぐそばを走っている電車を止めて、患者の搬送を鉄道会社に依頼します。まずは最寄りの駅に電話。次の電車の時刻を聞きます。そして皆で妊産婦や患者を駅まで運びます。そこから電車に乗せるのです。必要であれば電車を待たせることもできますよ。また電車は待ってくれます。これは、この地域では昔から行われています」。平然として、しかし、力強く彼女は言いました。そして彼女はさらに「公共輸送機関は緊急患者を搬送する義務があるのです」。

「来る電車の方向により、目的地も変わることはありますが。電車にさえ乗れれば、首都ネピドーにも行くことができます。泥道の悪路では、揺れによる患者への負担も大きく、悪影響も想像できます。電車の方が間違いなく揺れが少ないと思います」。

「電車がそのタイミングに来ない時間帯の場合は、6人乗り人力トロッコに乗せて、線路を使って搬送することもあります。どちらも多少の費用はかかりますが、自動車よりもこの地域では確実です」。雨期の悪路のなかの自動車による搬送よりも、間違いなく鉄道での搬送の方が確実で安全なのだと、看護師長は繰り返し説明してくれました。

ミャンマー社会には互助精神がしっかりと根付いています。患者のためなら一致団結、「電車を止める」ことができるのだと思います。この話を聞いて、私は非常に清々しい気持ちになったのですが、それはいったい何だったのでしょうか。

ミャンマー(総人口5142万人・2014年人口センサス)では、妊産婦死亡の推計では年間に1,700人の妊産婦が亡くなっています。妊産婦死亡率では出生10万対178(Trends in Maternal Mortality: 1990 to 2015, WHO 他、2015年)です。現在ミャンマー全土で330のタウンシップ(行政区)があります。地域によって偏りはありますが、タウンシップ単位の平均では年間で妊産婦死亡数は計算上では5.15人となります。各タウンシップの妊産婦死亡率削減の努力が日々行われているのです。

ミャンマーでは、妊産婦死亡数ゼロまで、さらなる取り組みが続きます。「電車を止める」看護師のような一つひとつの努力が、きょうも、妊産婦や乳幼児をはじめ多くの人々の命を救っているのです。

(公益財団法人ジョイセフ 常務理事 鈴木良一 2017年2月、マグウェイ管区にて)

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