日本の将来推計人口:平成29年(2017年)推計発表
(国立社会保障・人口問題研究所)

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2017.6.8

平成24年(2012年)推計と比較すると人口減少の速度や高齢化の進行度合は緩和

国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)が2017年4月10日に平成29年推計を発表しました。基本的な分析結果としては、「平成24年(2012年)推計と比較すると人口減少の速度や高齢化の進行度合は緩和」されているというものでした。本推計は社人研が平成27(2015年)年に国勢調査の確定数が公表されたことを受け、その確定数に基づいて、新たな全国将来人口推計(日本の将来推計人口)を行ったものです。

日本の将来推計人口とは、全国の将来の出生、死亡、ならびに国際人口移動について仮定を設け、これらに基づいて日本の将来の人口規模ならびに男女・年齢構成の推移について推計を行うものです(対象は外国人を含めた日本に在住する総人口です)。

推計の結果のポイント

今回の推計のポイントとして社人研が発表した主なものは以下の通りです。

① 30~40 歳代の出生率実績上昇を受け推計の前提となる「合計特殊出生率」は上昇

推計の前提となる合計特殊出生率は、近年の30~40 歳代の出生率実績上昇等を受け、前回推計の1.35(平成72(2060)年)から1.44(平成77(2065)年)に上昇(中位仮定)。「平均寿命」は、平成27(2015)年の男性80.75 年、女性86.98 年から、平成77 年(2065)年に男性84.95 年、女性91.35 年に伸長(中位仮定)する。

② 前回推計と比較して人口減少の速度や高齢化の進行度合いは緩和

・総人口は、平成27(2015)年国勢調査による1 億2709 万人から平成77(2065)年には8808 万人と推計(出生中位・死亡中位推計、以下同様)する。老年人口割合(高齢化率)は、平成27(2015)年の26.6%から平成77(2065)年には38.4%へと上昇する。

  • この結果を前回推計(長期参考推計の2065 年時点)と比較すると、総人口は8135 万人が8808 万人、総人口が1 億人を下回る時期は2048 年が2053 年、老年人口割合(2065年)が40.4%から38.4%と、人口減少の速度や高齢化の進行度合いは緩和される。
  • 老年人口(高齢者数)のピークは2042 年で前回と同じ(老年人口は3878 万人から3935 万人へと増加)。
③ 出生仮定を変えた場合の2065 年の総人口、高齢化率

出生の仮定が、高位仮定(1.65)の場合の平成77(2065)年の総人口と老年人口割合(高齢化率)は、それぞれ9,490 万人、35.6%、低位仮定(1.25)の場合は、8213 万人、41.2%と推計。また、出生率(平成77(2065)年)を1.80 に設定した場合には、1 億45万人、33.7%と推計。

日本政府は「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28 年6 月閣議決定)において、「希望出生率1.8」の実現を政策目標に掲げて関連施策の拡充に取り組んでいますが、今回の結果を踏まえても、政策目標の達成には依然として困難が想定されます。

私見としては、人口は「数」の問題と言うよりも、一人ひとりの人生や生活の「質」の課題が重要だと思います。質の問題が改善されない限り「数」を論じることがあってはならないと考えます。ましてや、子どもの数は、女性やカップルが自らで決める自己決定権であると思います。よって、「数を問う」のではなく、そのことをしっかり踏まえた改善や人々に寄り添う対策が必要となってくるのではないでしょうか。換言すれば、出産可能年齢人口の生活環境や子育て・教育支援など、包括的な環境の向上や子育て世代の生活の改善をまずは考えるべきだと思います。

(公益財団法人ジョイセフ 常務理事 鈴木良一、2017年5月)