G7シャルルボワ・サミットを振り返って
2018.6.19
- レポート
- アドボカシー
2018年6月8日~9日、カナダのシャルルボワで主要7カ国首脳会議(G7シャルルボワ・サミット)が開催されました。報道では、米国と6カ国首脳との貿易不均衡と制限措置、環境問題等をめぐる議論の対立や、閉会を待たずに米朝会談のためにシンガポールに出発したトランプ大統領が、移動中に、いったん合意された成果文書の承認を撤回するなど、会議の混乱や不協和音を印象付けるものが目立ちました。サミット閉会後は、世界の目はトランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の会談に集中し、サミットの影が薄くなってしまったようです。
しかし、G7シャルルボワ・サミットには、特筆すべき点があります。
カナダのトルドー首相が、ジェンダーの平等は議長国としての最優先事項であるという声明を4月に発表し、女性と少女を支援しエンパワーすることは、G7が行う決定の中心になければならないと述べました。そして、G7に向けて、トルドー首相に具体的な助言をするジェンダー平等諮問委員会(the Gender Equality Advisory Council)を設置しました。諮問委員のひとりに、日本人の弁護士で国連女子差別撤廃委員会前委員長の林陽子氏が選任されたことは、大変喜ばしいことでした。
セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)については、トランプ政権の反発が必至であったことから、残念ながらG7サミットの中では取り上げられませんでしたが、議長国カナダの姿勢が貫かれ、ジェンダーが分野横断的に取り上げられたことで、SRHRに関連する重要な課題も議論されました。ジェンダーの平等は、人権の達成にとって根本的なものであること、少なくとも12年間の安全で質の高い教育を平等に受けることは、女児と女性のエンパワーメント及び生涯における平等な機会を達成するためには不可欠であること、ジェンダーに基づく暴力の撲滅はすべての人に利益をもたらすこと、人身取引、強制労働、児童労働及び現代の奴隷 (注1)を含むあらゆる形態の奴隷の撲滅のために具体的な行動を取ることの重要性等が、首脳コミュニケ(声明文)と成果文書に明確に記されています。
G7サミットに先立って5月31日~6月2日にカナダ・ウィスラーで開催されたG7開発大臣会合でも、ジェンダーの平等が集中的に協議されました。議長総括文書には、性やジェンダーに基づく暴力、児童婚、早婚、強制婚、女性性器切除などの有害な慣習を終わらせること、少女たちに適切な栄養、清潔で望ましいトイレ施設、衛生的な製品やサービスを保証することなどと共に、包括的なセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスサービスと家族計画・性感染症予防を含む情報へのアクセスが重要であることが盛り込まれました。
日本政府は、G7シャルルボワ・サミットで、途上国の女児・少女・女性のための質の高い教育,人材育成のために、2億ドルを拠出し支援すると発表しました。また、2019年のG20議長国として、W20 (注2)と合わせて、2014年から継続しているWAW!(World Assembly for Women!)の開催を表明しています。
さて、世界経済フォーラムが毎年発表する「世界ジェンダーギャップ指数」の2017年の結果で、日本は調査対象の144カ国中114位でG7の中で最下位。日本にとっても、ジェンダーの平等と女性のエンパワーメントは最優先事項のひとつなのです。
公益財団法人ジョイセフ
業務執行理事・事務局長
勝部まゆみ