SDGsと女性の健康・権利の関係とは

  • 世界のデータ
  • ジョイセフコラム

2020.4.1

最近よく聞くようになった、SDGsという言葉。ジョイセフの活動は、特にSDGsの目標3と5に関連しています。SDGsとは何か、私たちやジョイセフの活動と具体的にどうつながっているのかについて振り返ります。

2030年に向けた「全人類の目標」

 SDGsは「Sustainable Development Goals」の略で、日本語では「持続可能な開発目標」と呼ばれます。Developmentを「開発」と訳しているので、日本などの先進国とは縁遠い話だと思う人もいるかもしれませんが、Developmentには発展という意味もあります。先進国も含めて地球上のすべての場所で、開発・発展が行き詰まることのない、バランスの取れた社会づくりを目指すための目標が、SDGsなのです。

 SDGsには17の「目標(Goal)」が設定され、それぞれの目標に、延べ169の具体的なターゲット(2030年までに実現すべき数値目標など)が定められています。

 ジョイセフの活動と強くかかわりを持つSDG3は「すべての人に健康と福祉を」、SDG5は「ジェンダー平等を実現しよう」です。
 SDG3のターゲットのうち、3.1は「2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を、出生10万人あたり70人未満に削減する」で、ジョイセフが途上国で行っている母子保健の向上を目指し、妊産婦死亡率の改善に向けたプロジェクトは、まさにこのターゲットを実現するための取り組みです。

 また、これらのプロジェクトや、ジョイセフが日本国内で展開しているI LADY.などは、 SDG5のターゲット5.6「国際人口・開発会議(ICPD)の行動計画及び北京行動綱領、ならびにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康及び権利(SRHR)への普遍的アクセスを確保する」にも当てはまります。

 他にも、SDGsには「働きがいのある仕事の確保」や「クリーンエネルギーの推進」、「水と衛生の確保」、「気候変動対策」など、幅広い分野の目標とターゲットが設定されています。

実現できなかった2000年の約束

 SDGsが採択されたのは、2015年9月の国連サミットでした。しかし、国連が国際的な開発目標を定めたのは、これが初めてのことではありません。SDGsの前身として、2001年に策定された「ミレニアム開発目標(MDGs)」がありました。

 MDGsは2000年の国連ミレニアムサミットで採択された「ミレニアム宣言」に基づいて作られた8つの目標で、主に途上国の課題を解決することに重点が置かれていました。
このうち、「目標1:貧困と飢餓の削減(1日1ドル未満の所得で生活する人の数を半減させる)」などが実現できた一方で、「目標5:妊産婦死亡率の改善(2015年までに、妊産婦の死亡率を1990年の4分の1に削減する。2015年までにリプロダクティブ・ヘルスへの普遍的アクセスを実現する)」は実現には至りませんでした。1990年の出生10万あたり385と比べて216(目標値は96)と、25年間で約半減の成果にとどまったのです。 (出典:WHOほか「Trends in Maternal Mortality: 1990 to 2015」:2019年発表)

 実現できなかった目標を達成し、達成できた目標に対してもより改善していくこと。そして何より、「途上国」「貧困層」といった一部の人だけを対象とするのではなく、 “誰一人取り残さない”社会の実現に向けて世界中のすべての国がともに行動することが、SDGsの特徴です。

妊娠・出産を安全に

 ジョイセフが開発途上国で取り組んでいるさまざまなプロジェクトの多くは、妊産婦死亡率の改善を目標に含んでいます。たとえば、ザンビアでは出産を控えた女性たちが保健施設の近くに寝泊まりできる「マタニティハウス」を作ることで、出産時に必ず保健スタッフの介助を受けられる態勢を整え、より安全な出産環境を実現しています。

 また、日本では14回が基本となっている産前健診を十分な回数(WHOは8回を推奨)受けてもらうことは、母子の異常や危険な出産の兆候を見つけることに大きく役立ちます。あらかじめ危険がわかれば施設で出産まで経過観察することができるので、死亡のリスクを大きく減らすことにつながります。

 その他、水道のないクリニックに水タンクを設置したり、アルコール消毒薬を活用したりするプロジェクトは、目標3に加えて、目標6(水と衛生へのアクセス)にも関わってきます。母子保健クリニックを運営しているアフガニスタンで、日本で役目を終えたランドセルを性別問わず配付する活動は、目標4「すべての人に質の高い教育を」につながります。SDGsの17の目標は幅広い分野にわたっていますが、互いにつながりがあり、切り離すことはできないのです。

日本でも、SRHRへのアクセス実現を

 一方、日本では、ほとんどすべての出産が医師や助産師に介助され、産前・産後健診も受けやすい環境が整っているので、妊娠・出産に伴う母子の死亡リスクは低くなっています。その一方で、包括的な性教育が十分に行われておらず、自分や異性の体について知る機会がほとんどないことや、認可されている避妊手段が少ないことなど、十分なSRHRサービスが一人ひとりに届いていないという課題があります。特に、女性が主体的に避妊手段を選ぶことへの社会的な偏見など、制度ではなく社会の障壁、根深いジェンダー規範がSRHRへのアクセスを妨げています。
参考:I LADY. 性と恋愛2019意識調査
 I LADY.は、SRHRについての情報を発信し、意識を高めることで、SDGsの目標5の実現を目指しています。途上国のプロジェクトを通して得た経験を生かして日本でのSRHR認知拡大・意識向上をはかり、途上国のプロジェクトとの連携を進めて互いに学びながらSDGsを達成していくことが、私たちの目標です。

参考
SDGsの目標とターゲットの日本語訳は、外務省の仮訳に従いました。

ICPDの残された課題と、対策を議論した「ICPD25(ナイロビサミット)」については、こちらの記事をご覧ください

カイロ会議(ICPD)から25年~ナイロビサミット開催

「世界人口白書2019」日本語抜粋版の発行と、ナイロビサミットを記念するイベントを開催