【開催報告】「どうする日本のSRHR―若者と国会議員意見交換会」
SRHRユースアライアンス、#男女共同参画ってなんですか 共催
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2022.3.10
2022年2月28日、SRHRユースアライアンスと #男女共同参画ってなんですか は「どうする日本のSRHR―若者と国会議員意見交換会」を参議院議員会館で開催しました。
当日は超党派の国会議員14名と、若者17名(うち8名はオンライン参加)が、日本の若者が直面するセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)の課題について、意見を交わしました。
SRHRユースアライアンスメンバーの遠藤豊琉さん作成のレポートを掲載します。
「どうする日本のSRHR―若者と国会議員意見交換会」ではユースを取り巻くセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)の課題7つを、リレートーク形式でユースが提案しました。超党派の国会議員のみなさんは熱心に耳を傾けて、前向きに現状を変えていくユースたちの努力を応援するとコメントしました。以下にユースの提案と、国会議員のコメントの一部を報告します。
ユースアクティビスト 津田塾大学3回生 江連千佳さん
日本では2013年にHPVワクチン接種の積極的推奨や無料接種が中止されました。しかし、積極的接種が中止された世代、とりわけ接種率が低いまま定期接種対象年齢を超えた2000年~2003年生まれの女子の将来の子宮頸がん罹患増加は合計約1万7000人、死亡増加は約4000人と推計する研究結果があります*。ユース当事者からは「親の判断で接種を受けられなかった」、「費用が5万円と高すぎ、接種できない」、「SNSから副作用報道が流れてきて怖い」などの声が上がっています。江連さんはそういった友人たちの声を聞き、HPVワクチンの無償のフォローアップ接種の署名活動を実施しました。その成果もあって2022年4月以降**にワクチン接種の積極的推奨が再開され、中止期間に接種対象年齢であった9学年にも無償での接種機会が提供されるようになったことをうれしく思いました。さらに江連さんは、現状ではワクチンの無料接種は女性に限られており、HPVが性交渉によって感染するウイルスであることから、男性にも積極接種が拡大されることが必要だと強調しました。
参考
*https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20201021_1
**https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_catch-up-vaccination.html
ユースアクティビスト 一般社団法人ソウレッジ 鶴田七瀬さん
鶴田さんは、北欧での性教育と緊急避妊薬について現場を視察した経験から、日本における性教育やSRHRに関する政策が遅れていると感じたそうです。
日本で緊急避妊薬を入手するためには処方箋が必要で、価格は1錠1万5000円程度もします。一方、イギリスなどでは緊急避妊薬は処方箋なしで薬局などの身近な場所で安価で購入することができます。日本では妊娠した15~19歳の若者のうち約62%が中絶手術を受けています***。これだけ若者の中絶率が高い背景には、性暴力や周囲からのプレッシャー、性教育の機会不足などがあると考えられます。また、鶴田さんは家庭内暴力を受けている人が、自宅に帰りたくない思いからSNSなどで知り合った人の自宅に行き、その場で性交渉を求められ、断り切れないケースなどもあると説明。若者の中絶は当事者が非難されがちであるが、その要因にはほかの大きな社会問題が重なり合っていることを理解し、若者の健康が守れる環境整備の必要性を訴えました。
***「厚生労働省令和元年人口動態調査」、「厚生労働省令和元年衛生行政報告例」から算出
ユースアクティビスト LGBTQ+ Bridge Network 西良朋也さん
一橋大学のサークル団体、LGBTQ+ Bridge Networkは、2020年に学内でハラスメント調査を実施しました。それによると合宿でのホモネタや教授から「結婚しなければOBOG会には参加させない」などの様々なハラスメントがあったそうです。西良さんは2015年に一橋大学で発生したアウティングによる学生の自死事件から6年半が経ち、風化が進む中で、同様の事件が再発する可能性を危惧していると訴えました。SOGIハラスメントをなくすためには、LGBT/SOGI差別禁止法の制定や、義務教育・市民教育を通じた啓発が必要であると主張しました。
ユースアクティビスト #男女共同参画ってなんですか 櫻井彩乃さん
櫻井さんは若者の政治参画、特に政策策定への参画の必要性について提起しました。若者の声を政策作成者に「伝える」だけではなく、若者自らが政策の意思決定の場に参加する必要があると訴えました。
具体策として、若者を対象とした政策には「若者部会」や「若者だけで構成される常設の審議会」等の設置を提案。策定過程に子ども・若者がパワーを持てると実感でき、自己効力感を持てる機会をつくって欲しいと主張しました。
SRHRユースアライアンスメンバーによるリレートーク
SRHRユースアライアンスからは、「男性のSRHR」「生理」「情報と医療へのアクセス」「性教育」の4つの課題について話し合いました。
男性のSRHR課題については、若者男性が抱える問題の中でも、不十分な教育から引き起こされる「性犯罪加害者としての男性の課題」と「性犯罪被害者としての相談ができない男性の課題」について発表しました。包括的性教育導入と、男性が相談できる支援センターの拡充・情報周知の必要性を訴えました。
生理の課題では、「生理=恥ずかしい=言いづらい」という社会の認識によって、若者が直面する「生理へのタブー視の再生産」「男子の生理に対する無知(教育欠如による)」「正しい生理の衛生管理を知らない(生理用品の交換頻度を知らない)」などの課題について発表しました。
情報と医療へのアクセスの課題については、まず金銭的な理由や病院に行きたくても健康保険証を親が管理をしていることよって「情報を受け取っていても医療にアクセスできない若者」と、インターネットに混在する不確かな情報を頼りにしてしまう「正確な情報が届いていない若者の」の2つの観点から課題を提示しました。若者が正確な情報と、安心・安全に相談できる医療サービスが必要であると強調しました。
性教育の課題では、日本における不十分な性教育を解消するために、内容・対象年齢・機会(学校・地域)に留意した包括的な性教育の必要性を訴えました。「寝た子を起こすな」と性教育を行うことに難色を示す大人の声を聞くが、現代の若者は寝てはおらず、社会によって起こされている状況にある。インターネットの普及により情報があふれ、正しい情報を判別するのが難しい。小さな子どもでもパソコンやスマートホンを使用することが当たり前になってきた現代の社会において、性に関する情報に意図せずアクセスしてしまうことも増えている。子どもや若者が自分を守るために、正しい性教育の提供は喫緊に必要であり、若者の持つ教育を受ける権利を妨げることがあってはならないと主張しました。
当日は超党派の国会議員も対話に参加しました。
私は玉木議員の「被選挙権を18歳にする」という政策案は若者にとってとても有意義なものになると感じました。#男女共同参画ってなんですかの櫻井さんの発言にもあったように、現在の日本において若者の声が政策に直接的に反映されることが少ないのは問題です。もし、玉木議員の発言にある「高校生・大学生議員」が誕生すれば、若者の声を国会に届けることが格段に多くなるだろうと考えました。
堤議員はユースの話を受けて、妊娠検査薬などに相談窓口の一覧の紙を入れることで、「望まない妊娠」をした人がすぐに相談窓口にアクセスできるのではとの提案を示しました。インターネット上だけの体制を拡充するのではなく、情報が必要な人に確実に情報を届けるためにはオフラインでも効率的な対策を行うことができると考えさせられました。
国重議員は、日本では政策の意思決定は中高年男性が中心になっており、女性や若者が少ないことを指摘しました。多様性を活かした幸福度の高い国づくりがしたいと述べ、若者の声が政治の中心に届くようにしていきたいとの力強い発言を頼もしく感じました。
倉林議員は、ユースの発言を非常に重くしっかりと受け止めたいとして、若者が抱く「自分たちのことは自分たちで決めたい」という想いを、政治を行う上で重要視していきたいと発言しました。
福島議員は現状の日本にあるリプロダクティブヘルス・ライツの分野での課題を挙げ、それらの問題に若者の声が反映される制度づくりの必要性を主張しました。若者の話を受け止め、その先に活かす方法を考えていることに期待したいと感じました。
会の最後に橋本聖子議員が、「スポーツとSRHR」をテーマに発表しました。現役のスポーツ選手時代の様々な経験、当時は無月経になるほど体を酷使し、練習を重ねて、結果を出すことが一人前と考えられていたこと。またオリンピックでも、毛髪を使った遺伝子検査による「女性診断」をしなければ女性アスリートとして参加できなかったことを述べました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは男女アスリート比がほぼ等しくなり、またトランスジェンダー女性がオリンピックに出場したこと。時代と共にスポーツ界でもSRHR、ジェンダー平等の取り組みが進んでいる。日本国内でもSRHR・ジェンダー平等の課題は多く残っているが、今後もユースのみなさんと国会議員との継続した対話を重ねながら、課題解決に向けて取り組んでいきたい、と力強く発言しました。
私はSRHRユースアライアンスメンバーと、SRHR課題について共に情報収集や会議を重ねることで、若者を取り巻く課題がどれほどあるのか、若者が課題と認識すらできていないことは何なのか、解決するためには若者のどの「声」にフォーカスして、どのように国会議員に伝えればよいのか、たくさんの経験を積むことができました。いつの日か誰もが「性に関する健康と権利」をしっかりと享受できる社会になることを目指し、これからもユースとして活動を重ねていきたいと決意しています。