【開催報告】国際女性デー記念 駐日欧州連合大使・国会議員・若者&市民団体と語る 「ジェンダー平等とセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」 駐日欧州連合代表部・ジョイセフ共催

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2022.4.5

2022年3月16日、ジョイセフは駐日欧州連合(EU)代表部と共に国際女性デー(IWD)議員会館イベント「ジェンダー平等とセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツ(SRHR)」を開催しました。本イベントは、昨年に続き2回目となる国際女性デーを記念したイベントです。ユースたちが会を進行しました。
 

司会を務めた#男女共同ってなんですか 代表の櫻井彩乃さん、持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)事務局長の高橋真也さん

まず、共催者としてパトリシア・フロア駐日欧州連合特命全権大使、来賓として鈴木貴子外務副大臣がご挨拶した後、林陽子前女性差別撤廃委員会委員長が海外から見た日本のSRHRの状況について問題提起を行いました。

その後、若者・市民社会、大使、国会議員の参加者それぞれ6名ずつ発言。Zoom参加者からの質問にも会場参加者から回答や意見が述べられ、活発な議論が展開されました。

最後に、阿部俊子前衆議院外務委員長、ジョイセフ理事長の石井澄江が挨拶をして会を締めくくりました。

会場には発言した大使を含め計23カ国の大使館が参加され、各国のSRHR課題への関心の高さが伺われました。一般参加はオンラインのみで、約130名がライブで参加しました。

議論の詳細は以下をご覧ください。

(注)動画の中におきまして、優生保護法の改正が1993年とあるのは、1996年の間違いです。

 


国際社会から社会課題にも関わる必要不可欠なSRHR 日本での問題とは

開会の挨拶として、主催者のパトリシア・フロア駐日欧州連合特命全権大使、来賓の鈴木貴子外務副大臣が行われた後、林陽子弁護士・前女性差別撤廃委員会(CEDAW)委員長による問題提起が行われました。

パトリシア・フロア駐日欧州連合特命全権大使 主催者挨拶

「SRHRの実現は、人間の尊厳に不可欠な要素であり、ジェンダー平等の達成とジェンダーに基づく暴力との闘いに本質的に関連しています。来年のG7サミット日本開催に向けた4つのイベントの共催を軸に、駐日欧州連合代表部とジョイセフは協働していきます」

鈴木貴子外務副大臣 来賓挨拶

「これまで議員個人としても、若者の性教育、特に包括的性教育の重要性を訴えてきました。ジェンダー平等やSRHRの推進は、女性の健康を守り、労働市場への参画を促すだけでなく、貧困や教育格差といった社会課題の解決にも繋がるものです。市民社会団体の皆様の日頃の御活動に、心からの敬意を表します。日本国内でも、まだまだ解決していかなければならぬ課題があり、苦しんでいる方々がいらっしゃいます。本日の皆様の発表は、こうした方々と政治との間の架け橋となり、多くの方に希望を与え、その励みとなるものと考えます」

(今回のご挨拶の様子は外務省のサイトでもご紹介されています)

林陽子弁護士・前女性差別撤廃委員会(CEDAW)委員長 問題提起
「世界から見た日本のSRHRとして」

「日本には3つのSRHRに関する課題があります。1つは安全な避妊具(薬)へのアクセスや性教育が不十分であること。2つ目は刑法堕胎罪の廃止、そして性暴力犯罪に係る刑法を被害者中心アプローチに改正すること。3つ目はG7そしてOECDのメンバー国として、ジェンダー平等を主導することです」

さらに、旧優生保護法下での強制不妊手術に関する訴訟で、大阪、東京高裁が損害賠償を認める判決を出したことを報告された後、最後に、継続する戦争下で、民主主義、法の支配という、日本とEUが共有する価値観を強調されました。

市民社会から日本のSRHR課題について

市民社会からの発言では6人の方に日本におけるSRHR課題についてお話しいただきました。

①緊急避妊薬の現状と課題

緊急避妊を薬局でプロジェクト 事務局 矢澤瑞季さん

「緊急避妊薬は女性の人生を決める重要な局面で使用される薬剤であり、そのアクセスは女性の権利です。意図しない妊娠のリスクを抱えた女性が、適切かつ安全で迅速に緊急避妊薬にアクセスできるように。服用する女性の立場に立って権利の枠組みの中でアクセス改善が実現できるようにお力添えください」

②性被害者の現状と課題

一般社団法人Spring 奥出智行さん 

「性暴力を受ける時、人は「NO」を奪われます。被害者はその後トラウマと周囲からのセカンドレイプにより長期間苦しみ続けます。海外では同意の有無を重視した性暴力の実態に即した刑法改正が行われています。日本の刑法ではいまだ暴行脅迫要件などが残っています。これらが被害者の痛みを放置し、新たな被害者を今日も生み出しています。日本の刑法性犯罪規定が「Yes means Yes」型になる事と、不同意性交等罪の創設を目指しています」

③男性参画の現状と課題

SRHRユースアライアンス 山口賢聖さん

「日本の男性や少年が抱えるSRHR課題について、DV・性暴力被害は男性も被害者になり得るにも関わらず、十分な支援体制が整備されていません。日本社会における「男らしさ」のジェンダー規範により、被害を相談しづらい状況があります。また中咽頭がんや肛門がん、陰茎がん、性感染症の予防につながるHPVワクチンの定期予防接種に男性が除外されています。定期接種の対象に男性も加えていただくことを希望します」

④LGBT/SOGIの現状と課題

LGBT法連合会 神谷悠一事務局長

「日本にはLGBT平等法はもとより、SOGIに関する法律が一つもありません。LGBTやSOGIの課題に関係する大臣や省庁も無い事から、SRHRについてもSOGIの文脈でとらえることもできていない状況です。しかしながらG7においてはLGBTIQ+への暴力・差別に対処すること。またSRHRを促進し、保護する為にSOGIを含む多様性への支援をすることを各国リーダーがコミットしています。日本がEU諸国と共通の価値観を持つ国として、SRHRやSOGIを推進するよう願います」

⑤安全な中絶の現状と課題

「SOSHIREN 女(わたし)のからだ」から 岩崎眞美子さん

「日本では100年以上も前に制定された刑法『堕胎罪』が今も残っており、今でも法律上では、人工妊娠中絶した女性は罰せられることになっています。実際には、1948年にできた優生保護法によって、女性は「経済的な理由」があれば、中絶をしても罰せられないことになりました。今の日本は「少子化」が問題視されていますが、その政策は、端的にいえば、今はまだ産む予定がない女性、産まない選択をした女性に対して『産め産め』とプレッシャーをかけながら、実際に産んだ女性たちに対しての支援は非常に乏しいという状況です。リプロダクティブ・ライツの問題は、すべての女性差別の根源にあるものだと感じています。望まない妊娠をした女性は、現在世界で80カ国以上で認められ、WHOでも安全な中絶法と認められている経口中絶薬を使用することは未だ認められず、高額な外科的中絶手術を受けざるを得ない状態にあります。ひとりひとりが、自分のからだに関する選択を、最良の選択を自分で自由に選べるようになることを希望します」

⑥包括的性教育の現状と課題

SRHRユースアライアンス 稲荷桃香さん

「若者は、日本のSRHR保障の実現に向け、積極的なアクションを起こし続けています。私は、包括的セクシュアリティ教育の導入が重要な手立ての一つとなると考えます。SRHR ユースアライアンスでは、今年2月に開催した国会議員と若者の意見交換会で、若者へのセクシュアリティ教育の、内容と年齢と機会の幅を広げていただくよう提言しました。若者が自分と他者のからだを大切にするためには、生殖の仕組みだけでなく、性の自己決定権も学ぶことが必要であることから、これを次回改訂される学習指導要領に確実に導入していただくようお願いをしました。さらに、若者に科学的で正確な知識を届けるには、セクシュアリティ教育の学習開始年齢を義務教育以前に広げ、継続的な学習を提供することが重要だとお伝えしました。併せて、教員や保護者世代の学び直しの機会も増やしていただくよう求めました」

駐日外国大使による各国の経験と課題の共有

ノルウェー、パラグアイ、フランス、セルビア共和国、モロッコ、アイルランドの駐日外国大使からは、各国のSRHRの状況や実績、課題について発言いただきました。

インガ M. W. ニーハマル駐日ノルウェー大使

「ノルウェーでは、『セクシュアル・ライツ』という言葉には、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスを支える一連の幅広い人権が含まれると理解されています。差別からの自由、暴力からの自由、プライバシーの権利、健康の権利、子供を持つ(または持たない)権利、表現の自由、効果的な司法救済へのアクセス、そして特に情報と教育を受ける権利など、これらの権利は、さまざまな形で、100年以上にわたって、わが国の男女平等の課題の最前線に立ってきました」

「ノルウェーでは、すべての女性が育児をサポートされています。経済的支援、安価な保育料、家庭環境にかかわらず子どもを広く社会的に受け入れること。そして子どもを持つことが女性が職業に就くことの妨げとなってはならないという規範。これらの改革はすべて、ノルウェーの人々に新しい可能性をもたらしています」

ラウル・アルベルト・フロレンティン・アントラ駐日パラグアイ共和国大使

「ラテンアメリカ・カリブ海諸国では未成年の少女の出産が12%と世界で2番目に多いことが課題です。コロナ禍においては、経済的依存、家族の孤立、家庭内暴力が増加した一方、外出制限の影響で保健や保護サービスへのアクセスやSRHRに関する医療サービスへのアクセスが減少しました。ラテンアメリカ・カリブ海諸国地域では中絶が違法である国が多い事から問題は複雑です。パラグアイでは、すべてのヘルスセンターで避妊薬(具)を無料で利用できるようにしています。緊急避妊薬も無料で入手できます。それでも47%の妊娠が計画外であることが分かっています」

フィリップ・セトン駐日フランス大使

「フランスの政策は2つの柱に基づいています。第一の柱は、自分の身体をどうするかという選択の自由です。妊娠14週目以前であれば、いつでも妊娠を終了することができます。その選択は全て女性自身に任されています。緊急避妊薬は薬局で安く入手できます。中高生の女子は緊急を要する場合には、他の誰の承認も得る必要もなく、学校の保健医に依頼して緊急避妊薬を入手することもできます。今年の1月からは、25歳までの女性の避妊に関わる費用は、フランス社会保険で全額カバーされるようになりました」

「2つ目の柱は、教育・情報の重要性です。第1の柱が定めたツールを適切に使うためのマニュアルにあたるのが、第2の柱の役割です。性的な話題にまつわる誤解やタブーによって引き起こされるリスクを減らすために、学校のカリキュラム全体を通じて、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスの教育を行います。ここには若者と接する労働者や教育者への特別なトレーニングも体系化されています。さらに中絶に関する専用のウェブサイトや、政府のウェブサイト「Youth Compass」に「セクシュアルヘルス」のカテゴリーを設け、若者が仕事やトレーニング、健康問題に関して自分の住む地域で助けを得られるようにするなど、関連する公的情報に簡単にアクセスできるようにしています」

アレクサンドラ・コヴァチュ駐日セルビア共和国特命全権大使

「ジェンダー平等の推進はセルビア共和国の政策の中でも極めて重要なものの一つです。SRHRに関する課題についても、情報、教育、カウンセリング、健康サービスの提供を最優先事項として対応を進めています。ジェンダーに基づく暴力への対応、若者の意図しない妊娠の防止、HPVワクチン接種の推進も行っています。政府、関連組織、メディア、市民社会が一緒に努力をしていく必要があります」

ラシャッド・ブフラル駐日モロッコ大使

「モロッコは女性のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスの保護と権利の促進に完全にコミットしています。モロッコはこのテーマに関連する国際機関、特に世界保健機関や国連人口基金と密接に連携しています。モロッコが避妊具の使用を促進し、妊産婦の死亡、望まない妊娠、危険な中絶の減少につながっていることが高く評価されています」

ポール・カヴァナ駐日アイルランド大使

「アイルランドは、SRHRが男女平等と人権の促進・保護に不可欠なものであると考えています。国内また国際政策においても、アイルランドは女性と女児の包括的なSRHRへのアクセスの促進に尽力しています。アイルランドに住むすべての人が生涯を通じて質の高いSRHRに関する情報、教育、サービスを利用できるようにすることで、国民の健康とウェルビーイングを改善し、SRHRに関するネガティブな影響を軽減することを国家戦略の一つとしています」

また、これを受けて、日本の各政党を代表する国会議員7名から発言がありました。

上段:左から、松川るい参議院議員(自由民主党国際局次長、女性局次長、国防部会長代理、前防衛大臣政務官)、源馬謙太郎衆議院議員(立憲民主党国際局長)、谷合正明参議院議員(公明党国際委員長)/中段:左から、高木かおり参議院議員(日本維新の会国会議員団幹事長代理兼ダイバーシティ推進局長)、古川元久衆議院議員(国民民主党国際局長)、田村智子参議院議員(日本共産党副委員長、政策委員長)/下段:あべ俊子衆議院議員(前衆議院外務委員長)

まずは知ることが大切 ジェンダー平等とSRHR推進の実現に向けて、引き続き連携と議論を

様々な視点からジェンダー平等とSRHRの課題が見えました。EU諸国の中で、ジェンダー平等を完全に達成した国はなく、SRHR推進においても日本とは異なる問題を抱えた国や地域があることもわかりました。それぞれの成功例、課題を共有することで、女性はもとより全ての人が生きやすい社会を作るために、努力をしていく必要性を確認できました。

ジョイセフでは駐日EU代表部と共に、日本が議長国を務める2023年開催予定のG7に向けて、若者や日本の市民社会とも協働し、ジェンダー平等とSRHRの促進が首脳サミットにおける重要課題の一つとして取り上げられる、声明に明記されるよう努力していきます。

ジョイセフは、今後も、SRHRを実現すべく様々な機会を捉えて取組・発信を続けていきます。ぜひご支援をお願いします。本イベントにご協力いただいた皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。

ジョイセフ理事長 石井澄江


 

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