ジョイセフLounge 活動報告&交流会 レポート
2025.5.7
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1.はじめに
2025年4月23日、ガーナ視察の活動報告と参加者同士の交流を目的とした「ジョイセフLounge」を開催しました。
本イベントでは、先日ガーナで行われた視察に参加した4名の企業リーダー(ボンイマージュ代表取締役/ジョイセフ評議員:馬淵 哲矢氏、産婦人科医/丸の内の森レディースクリニック院長:宋 美玄氏、株式会社MIYOSHI:河合 勇一氏、笠原 誠氏)が登壇し、現地の若者たちが直面している課題や支援のニーズについて報告しました。
さらに、毎年3月に実施している「ホワイトリボンムーブメント2025」の成果発表や、ファッションとの新たなチャリティ連携に関するトークセッションも行われ、充実したプログラムとなりました。
今回のレポートでは、当日の内容をダイジェストでお伝えします。
2.ジョイセフ事務局長あいさつ
公益財団法人ジョイセフ 事務局長の山口悦子より、以下のポイントが紹介されました。
- 新体制の開始
- 今年度(4月1日)より、6つあったグループを3グループに統合。
これにより、従来の草の根支援、啓発、政策提言活動を、より有機的かつ効果的に連携させ、SRHR推進とジェンダー平等の実現を目指していきます。
- ジョイセフ創設の原点
- ジョイセフは、1968年の創設当初から、「人口政策ではなく、一人ひとりの生き方を尊重する家族計画」を大切にしてきました。
SRHRを人権の問題として捉えるという姿勢を、今も変わらず貫いていきます。
- 今後の課題と展望
- 現在、世界情勢の変化により、支援国での医療物資不足や事業継続の困難といった課題が生じています。
こうした状況に対しても、市民社会からの声を一層強めながら、国内外での啓発活動と政策提言を着実に続けていく決意をここに示します。
ジョイセフ事務局長・山口のあいさつでは、組織体制の刷新を起点としながら、ジョイセフが一貫して大切にしてきた価値観と、これからの展望が力強く示されました。
グループ統合により、草の根活動から政策提言までの連携強化を図るとともに、創設以来の理念である「一人ひとりの生き方を尊重する家族計画」を改めて共有。
世界が大きく揺れ動く今、ジョイセフはSRHRを人権として捉える姿勢を堅持し、市民社会とともに声を上げ、未来に向けて着実に行動していく決意が表明されました。
持続可能な支援の在り方を模索しながら、今後も国内外でリーダーシップを発揮していく姿勢が明確に伝わるメッセージでした。
3.ガーナ視察報告
3-1.視察概要
2024年3月22日〜31日、西アフリカ・アッパー・マニャ・クロボ郡を訪問しました。今回の訪問には、ボンイマージュ代表取締役/ジョイセフ評議員の馬淵哲矢氏、産婦人科医で丸の内の森レディースクリニック院長の宋美玄氏、株式会社MIYOSHIの河合勇一氏、同社の笠原誠氏の4名が同行しました。
一行は保健施設や学校、地域コミュニティを訪れ、若者たちの声に耳を傾けながら、現地が直面している課題を直接調査。舗装されていない道路を何時間もかけて移動し、村々を訪問。そこでは、日本では想像できないような現実が待っていました。
3-2.動画上映と現地のリアル(株式会社MIYOSHI/笠原 誠氏より)
株式会社MIYOSHIの笠原氏は、視察の内容をよりリアルに伝えるため、自主制作した動画を上映し、現地の様子を共有しました。
映像には、若年妊娠が抱える深刻な課題や、厳しい環境の中でも前向きに生きる人々の姿が映し出されており、参加者の心を打ちました。
笠原氏は「支援するという一方的な関係ではなく、現地の人々と共に未来を築く“共創”の姿勢を大切にしたい」と語り、「今後は単なる寄付にとどまらず、より本質的な支援のあり方を模索していきたい」と企業としての意欲を力強く表明しました。
3-3.若年妊娠と医療アクセスの課題(産婦人科医・丸の内の森レディースクリニック院長/宋 美玄氏より)
産婦人科医であり、丸の内の森レディースクリニック院長の宋 美玄氏は、現地で目の当たりにした深刻な状況について、産婦人科医の立場から次のように報告がありました。
- 避妊・性教育の不足
- 避妊に関する正しい知識や医療サービスへのアクセスが極めて限られており、10代の妊娠と出産が多発している状況にあります。
特に深刻だったのは、少女たちの間で「ガラスを砕いたものを飲めば避妊できる」という誤った情報が信じられていたことです。
根拠のない民間療法に頼らざるを得ない現実が、少女たちの命を危険にさらしています。
- 貧困と性的搾取
- また、わずか50円を得るために売春を強いられている少女たちの存在にも直面しました。
ほんのわずかな収入が家族を支えるために必要とされる中、少女たちが尊厳や未来を犠牲にしている現実に、宋氏は強い危機感を覚えたと語りました。
- 包括的支援の必要性
- 性教育だけではなく、経済的な自立支援、就学継続支援など、さまざまな側面からの包括的なサポートが必要であると訴えました。
3-4.若者主体の啓発活動(株式会社MIYOSHI/河合 勇一氏より)
現地では、若者たちが自ら課題を発信し、未来をより良くしようとする主体的な啓発活動が活発に行われています。
こうした取り組みの一環として開催された啓発イベントについて、河合勇一氏からは以下のように報告がありました。
イベントでは、若い世代が自らの言葉で課題を語り、大人たちに対しても臆することなく意見をぶつける姿が印象的でした。「私たちも学びたい」「未来を変えたい」と涙ながらに訴える若者の姿に、参加者一同が深い感動を覚えました。
河合氏は、「課題の中心にいる若者たち自身が、自分たちの手で未来を切り拓こうとしている。そのエネルギーに応えられる支援の在り方を、私たちも真剣に考えなければならない」と語りました。また、現地の助産師が「若者の声に耳を傾けなければ未来は変わらない」と力強く訴える場面もあり、対話と共創の重要性を改めて実感する機会となりました。
3-5.既存支援の成果と新たな挑戦(ボンイマージュ代表取締役/ジョイセフ評議員 馬淵 哲矢氏より)
ボンイマージュ代表取締役であり、ジョイセフ評議員馬淵氏からは、これまで積み重ねてきた支援の成果と、そこから見えてきた今後の展望について、熱意を込めた報告がありました。
現地の変化を肌で感じた経験を踏まえながら、持続的な支援のあり方と、これから私たちが果たすべき役割について語られました。
- 寄付の成果が可視化されている
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建設された保健施設では、妊産婦健診や性教育活動が行われており、地域住民の健康改善に確かな効果を上げていました。
また、ミシン教室をはじめとする就労支援プロジェクトも、若者たちの自立支援につながっていました。
- 今後の新プロジェクト構想
現地でのニーズを踏まえ、啓発教育、保健医療サービス、就労支援を三本柱とする新たなプロジェクトを今後3年間で展開していく予定です。
プロジェクトの成果が実を結んだ際には、再び現地を訪問し、支援のあり方を参加者全員で見直す機会を設けたいと語りました。
4.ホワイトリボンムーブメント2025 成果報告
ホワイトリボンムーブメント統括の森田より、今年度の取り組みと成果について発表がありました。
ホワイトリボンムーブメントは、すべての女性が安全に妊娠・出産できる社会の実現を目指す国際的な市民運動であり、森田より国内外での啓発活動やパートナーシップの広がりを紹介。
一人でも多くの命と健康を守るために、今後もムーブメントを通じた連携と行動を強めていく意義が語られました。
- 参加者と寄付金の拡大
- 参加者4,583名(前年比5.7%増)、拠点59か所(前年比約1.7倍)、寄付金総額1,700万円(前年比44%増)。
- 連携の広がり
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マラソン大会など外部イベントとの連携や、企業スポンサーとのコラボレーションが進展しました。
特に、アンダーアーマー、オン、THE NORTH FACE、アシックスといったスポーツブランド4社によるパネルディスカッションでは、競合を超えたコラボレーションの可能性が議論されました。
国際女性デーのある3月を起点に、各社が連携して新たなチャリティ企画やイベントを共に開催する構想もあり、さらなる広がりが期待されています。
「走ろう、自分のために、誰かのために」というスローガンのもと、女性をはじめすべての人が健康的なライフスタイルを実現できる社会を目指す、前向きなエネルギーに満ちたイベントとなりました。
国際女性デー50周年記念 スポーツブランド4社と語る女性の健康・エンパワーメント
- 支援対象の拡大
- これまでの海外支援に加え、日本国内支援にも本格的に着手。チャリティランナーや全国イベントを展開予定。
ホワイトリボンムーブメントは、単なるイベントにとどまらず、社会意識を高める大きなムーブメントへと成長しています。
5.トークセッション「ファッションで健康ライフを」
今回のイベントにて、会場提供をした株式会社シンゾーン 代表取締役・染谷裕之氏と、ジョイセフ 広報ブランドストラテジストでPGディレクター・小野による対談が行われました。
- 株式会社シンゾーンの取り組み
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アパレルブランド「Shinzone(シンゾーン)」を展開する株式会社シンゾーンは、ファッションの力で社会課題に向き合う取り組みを続けています。
服を通じて自己肯定感や誇りを育む機会を届ける、シンゾーンならではの温かな支援活動として、ジョイセフのホワイトリボンムーブメントに賛同・協賛し、この度新しいコラボレーションが生まれました。
- ジョイセフとのチャリティコラボ
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竹由来の素材「takes.(テイクス)」で作ったチャリティホワイトリボンTシャツを共同開発し、Tシャツ1枚につき5000円が寄付される新しい仕組みを生むことで、ファッションを通じた女性の健康支援を推進しています。
takes.は、「竹を使った素材で人々を健康に」という思いから生まれた環境配慮型のファッションブランドで、竹100%の天然素材(TAKEFU)や厳選したオーガニック素材のみを使用した糸を独自に開発。竹が本来もつ消臭・抗菌・吸湿・保温・制電性を活かし、365日快適で肌に優しい着心地と、誰にでも似合うベーシックなデザインの洋服を提案しています。
この取り組みは、人々の健康と地球環境の両面に配慮した新たな支援の形として注目されており、今後さらなる広がりが期待されています。takes.公式サイト:https://takes.jp/
6.まとめ
今回開催された「ジョイセフLounge」では、ガーナでの現地視察の報告をはじめ、ホワイトリボンムーブメント2024の活動成果、ファッション業界とのチャリティ連携など、さまざまな取り組みが紹介されました。
現場の声や実際の支援事例を通じて、参加者一人ひとりが改めて「いのちの尊さ」や「支援のあり方」について深く考える時間となったように感じます。
イベント終了後、支援いただいている参加者からは、次のような声が寄せられました。
株式会社TENGA様
今回は貴重な機会をありがとうございました!ジョイセフの皆様をはじめ、想いを同じくする企業の皆様との交流会は大変有意義で刺激を受けました。微力ではございますが、弊社ブランドもSRHRを通してセクシュアルウェルネス向上に寄与できるよう、ひき続き伴走させていただければと思います!今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
伊藤忠ファッションシステム様
今回は初めて参加させて頂きました。ガーナの現状や、ジョイセフがどのような活動をされているのかなどお伺いすることができ、とても有意義な時間でした。今後何か一緒にお取り組みが出来ればと考えております。具体的なアイディアが生まれた際には、改めてご連絡させて頂きます。
株式会社MIYOSHI様
参加させていただき、誠にありがとうございました。登壇者の皆さまのお話をお聞きする中で、ガーナの現状を肌で感じさせていただきました。日本でもガーナでも、学校教育の中で正しい性教育が実施され、知識の格差が起きない仕組みが確立されてほしいと心から願います。「知って感じて誰かと語ること」が理解に共感に支援につながっていくことを強く実感したので、ジョイセフさんとの連携を強化しながら、より一層、広報活動に力をいれてまいります。
会場内では参加者同士の活発な交流も行われ、新たな連携やプロジェクトの可能性が広がる場面も見られました。
ジョイセフは今後も、SRHRの推進とジェンダー平等の実現に向けて、多様な分野のパートナーとともに活動を続けていく方針です。社会全体を巻き込んだ支援の輪が、今後さらに広がっていくことが期待されます。