
【令和8年熊本地震 現地レポート】 熊本YWCA・くまにじ 吉村千恵さんとのミーティングより
2026.8.25
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熊本地震の少し前に発足した「くまにじ」は、LGBTQ+やSOGIに関する活動を行う団体です。火の国会議やコムスタカなど、熊本で活動する複数の団体のメンバーがそれぞれの活動を続けながらゆるやかにつながっており、同性婚訴訟に関わる弁護士もメンバーの一人です。吉村さんは熊本地震当時、熊本学園大学で「災害と福祉」を教えており、以来、女性・子ども・LGBTQ+など、災害時に取り残されやすい人たちへの支援に取り組んでこられました。

母体である熊本YWCAは、もともと留学生支援から活動を始めた団体です。ハラル食を必要とする人のために事務所を開放したり、子ども食堂「なかよしクラブ」を運営したりしてきました。東日本大震災後には福島支援として子どもの保養キャンプを約15年間継続し、当時の参加者が今では中高生や社会人リーダーとして運営を支えています。今回の地震でも、大規模支援団体が撤退した後もおおがき地区に入り続け、大学生による田植え支援「米米くらぶ」など、地域に寄り添う活動を続けています。
熊本地震の経験から、熊本学園大学を障害者や高齢者の受け皿として活用するなど、指定避難所以外の居場所づくりにも取り組んできました。今回もその必要性を実感しているといいます。LGBTQ+の人は避難所での居心地の悪さから離れてしまうことがあり、発達障害のある人も避難所でのトラブルから生活を続けにくくなるケースがある一方、同じ立場の人同士が「ピア」として過ごせる場では問題なく生活できた例もあったそうです。母子・外国人・LGBTQ+・ろう者など、属性やニーズに応じて避難場所を細分化する視点を、平時の防災計画に組み込む必要性が指摘されました。

熊本YWCAでは「カラフルペース」としてLGBTQ+の居場所づくりを行っており、参加者にはトランスジェンダーの子どもが多いといいます。今回の地震では、LINEグループ等を通じて被災地にいる約60人の安否を確認した一方、自身の性的指向・性自認を周囲に明かしていない当事者の状況把握は難しいとのこと。現在、トランスジェンダーの相談も含む「くまにじSOSライン」の開設を進めており、吉村さんと高校生リーダーを含む5人で対応する体制を想定していますが、相談員の人件費確保が課題となっています。
避難生活では、服装やトイレ利用、生理用品へのアクセスなど、トランスジェンダーを含む当事者が具体的な困難を抱えています。外見上男性と見られる人が生理用品を取りに行きにくいといった声もあり、障害者用トイレ等への生理用品の設置を求める意見もありました。また、ホルモン治療を受けていた当事者が、処方元の病院の被災・閉院や交通手段の喪失により、治療を継続できなくなるケースも起きています。

ジョイセフからは、「くまにじSOSライン」の広報・情報拡散への協力、また相談員の人件費支援の可能性について意見交換を行いました。吉村さんからは、発災から1年程度はSOS相談等による対応が必要である一方、1年を超えたころから精神的な不調が顕在化する可能性への懸念も語られました。今回の支援を契機に、将来的に他地域で大規模災害が起きた場合に備え、東京以外の支援団体と平時から連携関係を築いておく重要性についても意見が交わされました。
吉村さんをはじめ、被災したLGBTQ+当事者のカウンセリングやケアを担う「くまにじ」のスタッフは、完全ボランティアでこの活動を支えています。その負担の大きさは、活動の持続性そのものに関わる課題です。ジョイセフは、対応にあたるスタッフへの支援を中心に、くまにじの運営をサポートしていきます。
災害時、性のあり方によって直面する困難は異なります。「取り残されやすい人」への視点を平時の備えに組み込んでいくことの大切さを、あらためて実感する訪問でした。
