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WHO:中絶ケアの新しいガイドラインを発表 2012年版 ⇒ 2022年版へ更新

2022.3.11

2022年3月9日、世界保健機関(WHO)が中絶のケアに関する新しいガイドラインを発表しました*。国ごとに、法や規則、政策、サービス提供の環境は異なるとしつつも、50を超える推奨事項とベストプラクティスを示したこのガイドラインは、質の高い中絶ケアについて、エビデンスに基づいた意思決定を可能にすることを目的としています。

世界では年間7300万件の中絶が行われ、予期しない妊娠の60%が中絶に至ります。安全な中絶は全体の約半分に過ぎず、安全でない中絶によって、毎年約3万9000人が亡くなり、合併症で入院する女性が数百万人にのぼります。

こうした状況を改善するため、今回のガイドラインでは、質の良い、人(女性)を中心に据えた中絶へのアクセスを可能にすることが推奨されています。

中絶とその後のケアは、医学的に安全であることはもちろん、年齢にかかわらず女性のニーズ、意思と決定を尊重し、尊厳を持って提供されなければなりません。中絶を犯罪と見なしたり、パートナーや家族など本人以外の承認が必要となる要件など、安全な中絶のために医学的に不要な条件による障壁を取り除くことも推奨されています。こうした障壁は医療へのアクセスを遅らせて、安全でない中絶につながり、女性に汚名を着せ、合併症のリスクを高めるなどの可能性があります。結果的に、女性・女児の人生に取り返しのつかない影響を与えることもあります。

ガイドラインには、より安全な中絶サービスを可能にするために、正確な情報を、必要とするすべての人が入手でき、経口中絶薬へのアクセスを確保すること、より幅広いタイプの保健医療従事者がサービスを提供できるようにすること、遠隔医療が適切である場合には、導入するなどの推奨事項も含まれています。

日本でも、経口中絶薬が年内に承認されることが期待されています。ジョイセフは、アフリカやアジアの国々でSRHRプログラムを実施すると同時に、このガイドラインの発表によって、日本の女性が国際基準の選択肢を得るための議論が活性化し、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)の理解が深まり浸透するよう、市民社会の一員として関係機関に働きかけていきます。

*この2022年版ガイドラインは、2012年のWHOのガイドライン“WHO Safe Abortion technical policy guidance for health systems”の内容が上書きされたものであり、今後は2022年度版が優先されます。 

世界保健機関(WHO)発表記事
https://www.who.int/news/item/09-03-2022-access-to-safe-abortion-critical-for-health-of-women-and-girls

国際家族計画連盟(IPPF)事務局長の歓迎のメッセージ
https://www.ippf.org/media-center/ippf-statement-who-abortion-care-guidelines-2022

 


 
WHOが、より安全な中絶法と推奨し、80カ国以上で使われている「経口中絶薬」は、日本では承認されていません。2021年12月に、イギリスの製薬会社が厚生労働省に日本国内で使用する承認の申請を行い、ようやく検討が始まったところです。

ジョイセフは、日本でも、より安全な人工妊娠中絶へのアクセスを含むSRHRの状況が改善するように、日本の現状を積極的に取り上げて発信していきます。

2021年9月30日に開催した勉強会で、講師の遠見才希子さんと大橋由香子さんにお話していただいた内容を記事にして、以下に公開しました。

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