知るジョイセフの活動とSRHRを知る

【第2回】世界人口デーに寄せて。国際機関で、制度の内側から変えていく仕事 林陽子理事×國井修評議員

2026.7.31

【第1回】では、国連「健康の権利」特別報告者*トラレン・モフォケンさんが語った、日本のSRHRと世界共通の課題について紹介しました。第2回では、その対話の場に参加した、ジョイセフの林陽子理事と國井修評議員、それぞれの歩みを紹介します。
*国連「健康の権利」特別報告者:国連人権理事会から任命され、各国政府や国連事務局から独立した立場で、健康と権利について調査・勧告を行う無給の専門家。

お二人に共通するのは、国連の場、あるいは国際機関の現場で、長く「制度の内側」から変化を起こそうとしてきた経験です。
 


 

林陽子理事

弁護士。女性の権利問題を長年テーマとし、2008年から2018年までの11年間、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)の委員を務めました。

女性差別撤廃委員会という「国際基準」の番人

私は弁護士で、女性の権利問題に関心を持ってきました。1980年代、日本にできた最初の、外国人女性のための暴力被害者向けシェルターでボランティアをしていたこともあります。その後イギリスに留学し、そこで出会った親友が、南アフリカのダーバン出身の女性でした。彼女の影響を受けて日本に帰国したあと、人権団体の中に反アパルトヘイト委員会をつくり、その議長を務めました。ネルソン・マンデラ氏が釈放されてから数年後、日本で二度、お会いする機会がありました。
 
2008年から2018年まで、女性差別撤廃委員会の委員を務めました。国連の条約機関と日本のジェンダー組織との間で、最も大きなギャップの一つがSRHRへの取り組みだと感じてきました。それは、情報が少ないという問題であり、だからアクションも少ないという問題でもあります。ただ、この数年で状況は大きく変わってきました。2024年、日本政府との建設的対話が行われ、フォローアップ項目として4つの勧告が出されました。選択的夫婦別姓の実現、供託金の見直し、そして中絶における配偶者同意の撤廃、緊急避妊薬などへのアクセス改善です。政府は今年10月までに、この勧告への対応を国連に報告する予定になっています。市民社会として、政府がどう動くのかをしっかり見届け、必要なロビイングを続けていきたいと思っています。

対話の冒頭、林理事はモフォケンさんに、国連の特別報告者になる前、南アフリカでどのような活動をしていたのかを尋ねています。その問いから始まったモフォケンさんの答えが、【第1回】で紹介した「原点」の物語でした。
 


 

國井修評議員

医師。緊急人道支援からJICA、外務省、ユニセフ、グローバルファンドまで、現場と国際機関の両方でグローバルヘルスに携わってきました。現在はグローバルヘルス・イノベーティブ・テクノロジー・ファンドで、アフリカの医療課題に取り組んでいます。

現場から、資金の構造を変える

もともと日本の地方で医師として働いたあと、NGOを通じて難民キャンプでの緊急援助に携わりました。アフリカ、ソマリアなどです。その後、JICAのプロジェクトでアフリカや南米を回り、大学で教育と研究に携わったのち、外務省でポリシーの仕事をしました。それから、ユニセフのニューヨーク本部、ミャンマー、ソマリアと、7年ほどユニセフに。その後グローバルファンドに7年間勤め、日本に戻り、エボラの診断薬やワクチンといった開発を通じて、アフリカの医療を支えています。
 
SRHRという意味では、子ども、母親、若年成人女性という、3つの脆弱な人々に関わってきました。5歳未満の子どもの死亡率は高く、特に女の子はネグレクトされやすい。母親については、妊産婦死亡を防ぐための緊急産科ケアが重要です。そして若年成人女性は、たとえば南アフリカでは、同世代の男性と比べて8倍以上のHIV罹患率がありました。
 
グローバルファンドに移った当初、ジェンダー・エクイティ(注:性別に関わらず公平な状態をつくること)を担当するのは私一人でした。だからまず、コミュニティ・人権・ジェンダーを担う部署をゼロからつくりました。大切なのは、アドボカシーだけでなくプログラムに落とし込むことです。指標を決め、市民社会を巻き込みながら、具体的なプログラムをつくっていきました。
 
ただ、南アフリカで実際に必要なHIV対策予算のうち、グローバルファンドの資金は10%にも満たないというのが現実です。世界的にグローバルヘルスの資金は減っています。だからこそ、国内での資金調達をどう上げていくか、保健医療予算の15%以上を、SRHRを含む形で主流にしていくことが必要だと思っています。世界保健機関(WHO)にすべてを任せるのではなく、アフリカ疾病対策センター(アフリカCDC)など、地域の力を支えるという発想も、これから大切になってくると考えています。

國井評議員が語った資金構造への視点は、【第1回】でモフォケンさんが語った「慈善ではなく投資として」という主張と、深く重なり合うものでした。

次回は、法学者の谷口真由美理事と、ジャーナリストの竹信三恵子評議員、メディアの最前線に立つお二人を紹介します。

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世界人口デーに寄せて。
Author

JOICFP
ジョイセフは、すべての人びとが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:SRH/R)をはじめ、自らの健康を享受し、尊厳と平等のもとに自己実現できる世界をめざします