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9月26日は世界避妊デー

2026.9.25

避妊は「自分の人生を選ぶ」ための手段です

毎年9月26日は、世界避妊デー(World Contraception Day)です。この国際デーは、2003年にラテンアメリカで始まった「若者の予期しない妊娠を防ぐ日」という取り組みを起点とし、2007年、性と生殖に関する健康に取り組む国際NGOや学術団体などの連携によって制定されました。その根底にあるのは、若い世代が、科学的に正確で、社会規範等による否定や決めつけのない情報をもとに、自分自身で選択できるようにするというビジョンです。

避妊は、単に妊娠を避けるための技術ではありません。
いつ、誰と、何人の子どもを持つか、あるいは持たないか。
その決定を自分自身で行えるということは、進学や就職、パートナーシップも含めた人生全体の選択につながる人権であり、一人ひとりの尊厳に直結する問題です。誰もが必要なときに最適な避妊手段にアクセスできること。それは、性と生殖に関する健康と権利(SRHR:セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)の中核にあるものです。

世界の状況:年間1億2,100万件の予期しない妊娠

国連人口基金(UNFPA)によると、世界では毎年、日本の全人口とほぼ同じ規模の予期しない妊娠が起きています。その数、約1億2,100万件。これは全妊娠のおよそ半数にあたります。背景にあるのは、避妊手段へのアクセスの課題です。1990年以降、近代的な避妊法を利用する人の数は世界全体で倍増しましたが、それでもなお、安全で効果的な避妊法を利用できていない女性が約2億2,400万人います。その多くは低・中所得国で暮らす人々です(※1)。

避妊手段へのアクセスの課題は、妊娠できる身体をもつ人々や、その子どもたちの命そのものにも関わっています。世界保健機関(WHO)は、妊娠と妊娠の間隔を2年以上空けることを推奨しています。短い間隔で妊娠を繰り返すと、母体が十分に回復できないだけでなく、次に生まれる子どもの健康にも影響が及びます。ある調査では、出産間隔が18〜23カ月の場合と比べて、5カ月以内で次の妊娠をした女性は、妊産婦死亡のリスクが2.5倍高いという結果が出ています(※2)。適切な出産間隔をあけることで、乳児期の死亡リスクは最大10%、5歳未満児の死亡リスクは21%低下すると報告されています(※3)。

また、予期せぬ妊娠の6割以上(61%)が人工妊娠中絶に至り、そのうち約45%が安全でない中絶にあたります。安全でない中絶によって、世界では毎年約3万9,000人が命を落としているとWHOは推計しています(※4)。

避妊は社会全体にとって、ローリスク・ハイリターンの投資でもあります。家族計画に1ドルを投じるごとに、妊産婦・新生児の医療費として1.47〜4.00ドルが節約されると試算されています。実際に、2008年には、避妊の利用によって世界で約27万2,040件の妊産婦死亡が回避されたと推計されており(死亡削減効果44%)、避妊を必要とする女性全員が利用できるようになれば、年間さらに10万4,000件の妊産婦死亡を防げるとされています。
さらに、思春期の妊娠を防ぐことは、教育の機会を守ることにも直結します。思春期の妊娠によって若者が生涯にわたって失う所得は、国によっては国内総生産(GDP)の1〜30%に相当すると推計されており、避妊への投資は少女たちの将来の生計にも直接影響を与えるのです(※3)。

世界の予期しない妊娠と避妊へのアクセス

日本の状況:「選べる」環境は、まだ整っていない

日本は、経済規模でみれば世界有数の国です。しかし避妊に関しては、選択肢そのものが限られています。WHOが「安全で効果が高い」と位置づけている近代的避妊法は数多くありますが、日本で承認されているのは、男性用コンドーム、低用量経口避妊薬(低容量ピル)、IUS(子宮内避妊システム)、避妊手術の4種類のみです。
 

WHOが「安全で効果が高い」と位置づけている近代的避妊法の10種類


 

性交後に服用することで妊娠を防ぐ緊急避妊薬については、2026年2月に処方箋なしで薬局で入手可能になりました。ただし、特定の研修を受けた薬剤師のいる薬局でしか取り扱えないこと、薬剤師の見ている前での服用が義務づけられていること、価格がまだ高いことなど、諸外国と比べると利用しづらい状況が残っています。
多様な避妊手段の特徴を理解したうえで、一人ひとりが自分の状況や体質に最も合ったものを選び、利用できること。それは、個人の健康と生き方に直結する、とても重要なことです。

情報へのアクセスにも課題があります。ジョイセフが2019年から隔年で実施している「性と恋愛」意識調査(2025年、約9,000人が回答)では、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)という言葉を「知らない・初めて聞いた」と回答した人が81.6%にのぼりました。SRHRは、私たちが心も体も健やかに、自分らしく生きるうえで欠かせない基本的人権です。しかし、その言葉自体がほとんど知られていないのが実情です。
また、学校の性教育が「役に立った」と感じている若者は約半数にとどまり、さらに、学びたかった内容として「セックス(性交渉)」「避妊」が世代を問わず上位に挙がっていました。現在の教育内容には「妊娠の経過は取り扱わない」とする「はどめ規定」もあり、十分に対応できていない実態も見えてきました。

こうした課題の鍵になると考えられているのが、ユネスコをはじめとする国際機関の指針に基づく、世界的に推進されている「包括的性教育」です。科学的根拠と人権を土台に、身体のことでなく人間関係や意思決定まで幅広く学ぶ教育です。

ジョイセフの調査結果から見えてくるのは、性に関する情報へのアクセスの不十分さが、単なる個人の知識不足という問題ではなく、科学的根拠と人権に基づく性教育が十分に実施されていないことの表れだということです。誰もが自分の身体や避妊について正確な情報を基に選択できる社会をつくるには、避妊手段の選択肢を広げると同時に、学校教育に包括的な性教育を組み込むことが欠かせません。

ジョイセフの取り組み

1950年代の日本では、人工妊娠中絶が急増し、女性の健康を脅かしていました。そうした中、「中絶から家族計画(避妊)へ」というスローガンのもと、助産師や保健師、草の根の女性たちが中心となって運動を展開し、中絶数の減少と、妊産婦死亡の劇的な減少を実現しました。この日本発の住民主体モデルを世界に届けるために、ジョイセフは誕生しました。

創設者の國井長次郎は、家族計画を「人口抑制の手段」ではなく、「自分の生活を守り、母と子の健康を願う気持ちに基づくもの」と位置づけました。この「人間的家族計画」、「住民主体」という考え方は、以来58年間、ジョイセフの活動の核として受け継がれています。これまで日本を含む43の国と地域で、避妊を中心としたSRHRの情報と医療・ケアへのアクセス改善に取り組んできました。

こうした経験で培ってきた知見をもとに、国際基準に基づくSRHRの啓発や、行政職員や医療従事者、教員、地域組織などへの研修を行うと同時に、すべての人のSRHRが守られる社会の実現に向けて、国会議員や地方議員への政策提言(アドボカシー)にも取り組んでいます。

私たちの決意

避妊へのアクセスは、わがままでも、恵まれた人の特権でもありません。性別、ジェンダー、年齢、国籍、居住地にかかわらず、誰もが持つ権利です。情報があること、選択肢があること、そして安心して選べること。これらは基本的人権の一部として保障されるべきものです。

ジョイセフは、この実現のために設立されました。すべての人が、必要なときに最適な避妊手段を利用できるようになるまで、国内外でこの歩みを止めません。

自分の身体と人生について、自分で決められる社会へ。
9月26日を、その現在地を確かめ、次の一歩を踏み出す日にしたいと考えています。

出典
※1  UNFPA “Family planning”/ UN News「Around 224 million women still don’t access family planning」(2025年11月) https://news.un.org/en/story/2025/11/1166257
※2 Conde-Agudelo A, Belizán JM. “Maternal morbidity and mortality associated with interpregnancy interval: cross sectional study.” BMJ. 2000;321(7271):1255-1259.
※3 Starbird E, Norton M, Marcus R. “Investing in Family Planning: Key to Achieving the Sustainable Development Goals.” Global Health: Science and Practice, 2016, 4(2):191-210.
※4  WHO “Abortion” fact sheet(2025年12月8日更新) / 死亡数(約3万9,000人)はWHOによる2022年の発表

Author

山口 悦子
ジョイセフ事務局長。2004年にジョイセフ入職後、一貫してアジアとアフリカでSRHRを推進する国際協力プロジェクトに従事している。特にHIV/エイズ、妊産婦保健、男性参加、若者のエンパワーメントといった分野で、コミュニティを中心とした仕組みづくりに携わる。JICAのHIV/エイズ専門家としてガーナで5年の経験、JICAインドネシア事務所の保健分野の企画調査員経験を持つ。第二の故郷はガーナ。趣味は犬(ガーナ生まれ)とテニス。