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④ 1994年 国際人口開発会議(ICPD)

2021.3.18

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リプロダクティブ・ヘルスが誕生してから2021年の現在に至るまでの変遷をポイントを抜粋しながら、シリーズで紹介しています。

1994年―国際人口開発会議(International Conference on Population and Development:ICPD)、カイロ

これは、今日実施されているサービスに関する世界的政策を形成した画期的会議であった。この会議はそれまでの人口会議よりも幅広い視野に立ち、人口と貧困の関連にも十分な配慮が向けられた。

会議の成果文書は、179カ国が採択した「カイロ行動計画」(United Nations Population Fund (UNFPA), Programme of Action – Adopted at the International Conference on Population and Development (ICPD), Cairo, 1994)であり、そこには住民中心の開発を通した人口、教育、保健、環境、貧困撲滅を目指すさまざまな戦略が包括された。この行動計画は、国際社会と各国政府に、1974年の世界人口行動計画に替わる新たな指針を与えた。

* 行動計画は以下のURL参照
https://www.unfpa.org/sites/default/files/event-pdf/PoA_en.pdf

ICPDはリプロダクティブ・ヘルスという全く新しい概念を確立した。

「リプロダクティブ・ヘルス(reproductive health)とは、人間の生殖システム、その機能と(活動)過程のすべての側面において、単に疾病、障害がないというだけでなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態にあることを指す

したがって、リプロダクティブ・ヘルスは、人々が安全で満ち足りた性生活を営むことができ、生殖能力を持ち、子どもを産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを決める自由を持つことを意味する。

この最後の条件で示唆されるのは、男女とも自ら選択した安全かつ効果的で、経済的にも無理がなく、受け入れやすい家族計画の方法と、法に反しない他の出生調節の方法に関する情報を得、その方法を利用する権利であり、さらに女性が安全に妊娠・出産でき、またカップルが健康な子どもを持てる最善の機会を得られるよう適切なヘルスケア・サービスを利用できる権利である」。(Paragraph 7.2)

「包括的リプロダクティブ・ヘルス(リプロダクティブ・ヘルスパッケージ)」はこの目標達成のために考案されたもので、家族計画、性教育、安全な母性、HIV/AIDSを含む性感染症の予防で構成される。

カイロ行動計画は、「全ての国は…死亡率を引き下げ、リプロダクティブ・ヘルスケアを含め、プライマリー・ヘルスケアが90年代の終わるまでに全世界で利用可能になるよう務めるべきである」としている。(Paragraph 8.5)

リプロダクティブ・ヘルスサービスが重要な役割を担うという認識から、乳児死亡率と妊産婦死亡率についても新しい目標が立てられた。

  • 2000年までに乳児と5歳未満の乳幼児死亡率を3分の1引き下げること、長期的には2005年までに乳児死亡率を出生千人当たり50以下に、5歳未満の死亡率を60以下にすることをめざす。(Paragraph 8.16)
  • 妊産婦死亡率を2000年までに1990年のレベルの半分に、2015年までにはさらにその半分に減らす。(Paragraph 8.21)
思春期の若者

思春期に関する文言はこれまでになく強くなった。
カイロ行動計画は、十代の妊娠を大幅に減らすことを目指して、思春期のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス(SRH)に取り組むことが急務であると強調した。

「思春期の若者が自分のセクシュアリティを理解し、望まない妊娠や性感染症、それに起因する不妊症の危険から自分を守ることができるようにするため、特に情報とサービスは、思春期の若者に利用可能でなければならない。これは男性に対する教育と結びついていなければならない。それは男性が、女性の自己決定を尊重し、セクシュアリティと生殖に関する事柄について、女性と責任を分かち合うためである」。(Paragraph 7.41)

安全でない人工妊娠中絶

1984年の国際人口会議で、中絶を家族計画の手段のひとつとして推進してはならないことがうたわれ、安全でない中絶の危険が明言された。また、中絶後の合併症についても認識された。

「…全ての政府に強く求められることは…、女性の健康への取り組みを強化し、安全でない中絶…が健康に及ぼす影響を公衆衛生上の主要な問題として取り上げ、家族計画サービスの拡大と改善を通じ、中絶への依存を軽減することである」。(Paragraph 8.25)

注:安全でない中絶とは、必要な技術を持たない人によって、または最低の医療水準にも満たない環境の中で、あるいはその両方に当てはまる条件の中で行われる、妊娠を中断する処置と定義される。(WHO)

予算

ICPDは、基本的なリプロダクティブ・ヘルスと人口計画に関する予算を設定した。合意された年間予算額は、2000年は170億ドル、2005年は185億ドル、2010年は205億ドル、2015年は217億ドルであった。このうち、3分の1は先進国が拠出し、残り3分の2は途上国が負担することが示唆された。

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