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COVID-19の人口動向に与える影響

2021.2.15

2020年度 人口問題協議会・明石研究会(2020年12月2日開催)
「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)が人口に与える影響」より


 
発表者:
国立社会保障・人口問題研究所副所長
林 玲子

COVID-19の感染者は、世界全体では2020年3月に大きく増えた後、なだらかに増え続けている(2020年12月2日時点)。日本は新規患者・死亡者数ともに、5月の第1波を皮切りに、第2波、第3波という形で波状に推移しているが、他国と比べて少な目となっている。

人口動態速報に基づき、日本の人口の高齢化を考慮した今年の予測死亡数と実際の死亡数を比較したところ、2020年の死亡数はむしろ予測を下回る結果となった。他国、例えばフランスと比較すると、同国では3月・4月の死亡数が例年を大きく上回っており、COVID-19を原因とする超過死亡が発生したことは明確である。

国立社会保障・人口問題研究所(社人研)では自治体の公表に基づき、毎週COVID-19による死者の集計を発表しているが、そこからはCOVID-19による死者の分布に、性別・年齢において大きな偏りがあることがわかっている。性別では男性の死者が多く、年齢では80歳以上が極めて多い。

ただし、全死亡でも高齢者に偏る傾向にあるので、男性に偏っているという点がCOVID-19による死亡の大きな特徴と言える。

死因別死亡率については、現在2020年6月までの統計が公開されているが、年齢構造調整して2019年と比べると、全体に死亡数が減少し(特に肺炎などが減少)、5月まではやや老衰が増えている一方で、6月にはわずかであるが肝疾患や糖尿病による死亡が増えている。これは、感染対策によって肺炎や感染症などによる死亡を抑制できた反面、対策の長期化によって持病が悪化した人が増えている可能性を示唆している。

一方、出生数については、出産年齢の女性が減少していることにより毎年大きく減少しているが、2020年は2019年と比べそこまで減っていない。

死亡数は昨年より減り、出生数は昨年と大きく変わらないことから、人口の自然減少数も、2020年初めから横ばいで、「COVID-19によって人口の自然減が停滞した」と言える。その一方で、妊娠届出数は2020年5月から大きく減少しており、11月ごろから出生数も大きく減っていくのではないかと見込まれる。国際人口移動は今年に入って激減し、現在の外国人入国者数は5月に5000人程度まで落ち込み、1955年ごろと同じ水準となった。

現時点では、出生、死亡、移動のうち一番大きく影響を受けたのは移動である。

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