知るジョイセフの活動とSRHRを知る

すべての人に身近な「服」を通じて、もっと良い世界へ。ファーストリテイリングとジョイセフが協力する「服のチカラを活かした支援」とは。

2021.10.24

ユニクロやジーユーなど、誰もが知るブランドを展開するファーストリテイリング。日本はもちろん世界中の人々にとって、良質な普段着を身近なものに変えてきたアパレルグループです。

「服を通じて世界を良い方向に変えていくこと」を目指し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や国連女性機関(UN Women)等とグローバルパートナーシップを結んで活動するほか、女性のエンパワメントや支援にも注力。ジョイセフとは2009年、スマトラ島沖地震での緊急支援を発端に、東日本大震災の被災地支援やアフリカでの保健プロジェクトなど、世界各地で協力して様々な支援に取り組んできました。

ファーストリテイリングとジョイセフが連携することで実現したのは、単なる衣料の寄贈にとどまらない「服のチカラを活かしたコミュニティ支援」。同社サステナビリティ部でジョイセフとのプロジェクトを担当する伴めぐみさんにお話を伺いました。

伴 めぐみ(ばん めぐみ)
株式会社ファーストリテイリング
サステナビリティ部 ビジネス・社会課題解決連動チーム
 
大学院修了後、難民支援のNGO・国際機関勤務を経て、2020年1月にファーストリテイリングに入社。ジョイセフとの衣料寄贈等を通じた女性支援プロジェクトの他、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とのパートナーシップ下での難民支援事業や難民雇用プログラムなどを担当。
 
ファーストリテイリングは、「服のチカラを、社会のチカラに。」というサステナビリティステートメントのもと、服のビジネスを通じて、社会の持続的な発展に寄与できるよう、社会的課題の解決に積極的に取り組んでいます。
https://www.fastretailing.com/jp/sustainability/community/policy.html


 
― 社会貢献において、服はどんな意味を持っていると考えられますか。人が生きるために必要とされる「衣食住」の最初に「衣」がありますね。

「服」の機能は、まず第一に寒さや暑さ、厳しい気候から身を守ったり、ケガを防いだりすること。まさに命と健康を守るものですが、それだけでなく、人の尊厳を保つためにも不可欠です。

服がないために、自信を持って学校に行けないという子どもたちや、仕事を探して職につくこともできないという人もいます。そんな状況を変えるためにも、ファーストリテイリングは服を届ける支援を続けています。

― 服を通じた女性支援の実例について教えてください。

たとえば2020年の熊本豪雨災害では、ジョイセフと一緒に被災地への支援を実施しています。熊本の助産師会の助力を得て妊産婦の皆さんをサポートし、その一環としてファーストリテイリングから衣料を寄贈しました。

赤ちゃんを迎えるのは、大変ながらも楽しく嬉しいことです。素敵なベビー服などを準備されていた方もいるはずですが、洪水で多くが失われてしまいました。少しでも気持ちが明るくなる支援を社内で検討し、赤ちゃんだけではなく、ご家族の皆さまにも新しい服をお贈りすることにしました。

寄贈した1000点の衣料は、ベビー服と兄姉用のキッズ服、お父さまのメンズ服、お母さまにはよそゆきになるワンピースなど。ユニクロだけでなく、ジーユーやプラステといったグループブランドからも寄贈しています。

女性支援においては当事者である女性だけでなく、コミュニティ全体への支援や働きかけが欠かせません。環境が安定し、周囲の人々の理解やサポートがあってこそ、女性の健康や権利が守られるからです。

その点、ジョイセフを通じてアフリカにお送りした衣料は、現地の方々が健康を守るために行動するきっかけ作り(インセンティブ)として、コミュニティ全体の支援に生かされていると聞きました。

― 例えば、ジョイセフがザンビアで取り組んでいる、妊産婦に医療保健サービスを提供するプロジェクトですね。保健施設で妊産婦健診を受けてもらうきっかけのひとつになったのが、ファーストリテイリングから寄贈された衣類のプレゼントでした。

そうですね。アフリカでは、多くの地域でいまだに自宅出産が多く、高い妊産婦死亡率の一因となっています。誰もが妊産婦健診を受けたり、医療設備の整った環境で出産できれば、妊産婦や新生児の死亡率を下げることができます。

ジョイセフがザンビアで支援する医療保健施設では、妊産婦健診を受けるとベビー服や家族のための衣類がもらえるということで、大勢の女性が訪れたとお聞きしました。現地では衣類が簡単には手に入らないため、夫や家族も「それなら行っておいで」と快く送り出してくれると伺っています。女性たちにとっても、服のプレゼントが待っていると思うと楽しい外出になるかもしれません。

「服のチカラ」を引き出してコミュニティ全体を支援し、同時に女性の健康と権利が推進されている、とても嬉しいケースです。このようなプログラムをさらに支援したいと私たちは考えています。

― ファーストリテイリングのリサイクル衣料の寄贈先では、「新品のようにきれい。ニーズに合ったものが届く」と喜ばれています。

リサイクル衣料はユニクロ等の店頭で回収していますが、お客様にはきれいに洗濯してお持ち下さるようお願いしています。そして協力先の倉庫会社に運び、カテゴリー別に仕分けして、倉庫スタッフの方々が服の状態をひとつひとつ丁寧にチェック。寄贈に適した服を選別して下さっています。さらに、露出の多い服は避けるなど、寄贈する国や地域の気候や文化、現地のニーズも考慮します。

難民キャンプなど海外の寄贈先には、ファーストリテイリンググループの従業員も定期的に訪問しています(現在はコロナ禍のため自粛)。支援先の方々に私たちが直接衣料をお渡しすると、喜ばれるアイテムもあれば、そうでもない服もあるのがわかります。それをフィードバックして次回に活かしたり、現地の状況をリサーチして必要な支援を企画することもあります。

― 現地の必要に応えた支援といえば、ザンビアのプロジェクトがあります。ザンビアでは村から保健施設までの道のりが遠く、多くは自宅出産になっていました。そこでジョイセフは「マタニティハウス」(出産前から滞在可能な宿泊棟)の建設を計画。ユニクロに協力していただきました。2棟のハウスがそれぞれ保健施設の近くに完成し、多くの女性が安心して出産まで過ごせるようになりました。

そうですね。ユニクロの服を買って下さるお客様にとっても、お気に入りの服を選ぶことが国際的な女性支援につながる、新しいチャリティの機会となりました。このように、服を通じて「ビジネス上の課題」と「社会の課題」を同時に解決するために、ジョイセフや世界中の団体、企業とのパートナーシップは大きな力になっています。

ファーストリテイリングがまず大切にしているのは、良質で長く愛用できる、生活を豊かにする服を作ること。役割を終えた衣料を素材やリサイクル衣料として再生し、新しい価値とともに社会へ還元していくこと。

そんなファーストリテイリングの「服のチカラ」は、さまざまなパートナーシップの中で、新しい社会貢献の発想や可能性を生み出しています。今後も女性支援の分野でジョイセフと協力し、服を通じて、女性を取り巻く現実に良い変化を起こしていきたいと考えています。

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