知るジョイセフの活動とSRHRを知る

各国の現場から。学びのエネルギーが高まる研修事業

2023.8.2

国内事業グループ  林未由

「このビデオを見るのは本当につらい」と、研修を受けていたタジキスタンの医師が言いました。

ジョイセフの研修事業では、ある女性の妊娠にまつわる死を題材にした映像を教材として活用しています。このストーリーは私にとって、特定の個人の顔も、名前も重ならない「世界のどこかの妊産婦死亡の話」。でも医師である彼女にとっては「自国で見てきた話」。この死に重なる顔や名前が呼び起されたのでしょう。彼女が日々命の重みを背負いながら闘っていることを垣間見た瞬間でした。

同じビデオを見たタンザニアの研修員は言います。「早くから妊婦健診をしないと」と。パキスタンの研修員は「妊婦の低栄養が深刻」と。他の研修員からも「地域の健康教育が足りない」「女性の元々の健康状態が問題、特に貧血」「児童婚も原因の一つだ」「男性の参画を促さないと」「医療施設のケアの質にも問題が……」と続々とポイントが挙げられます。きっとそれは、行政官や医療従事者である彼らが、このストーリーにそれぞれに重なる顔や名前を持っているからこその声なのでしょう。

「あの時、あの人がこれで苦しんでいた……」「この対処があれば……」という思いが、研修員の学びのエネルギーとなって、議論が熱を帯びてきます。このようなエネルギーを持った方々と共に学ぶことで、現地の状況を追体験でき、不思議と私もその顔と名前を知ったような気がしてくるのです。

ジョイセフの研修を経た研修員は、そのエネルギーを保ったまま、小さな変化をもたらすために計画を立て実行していきます。

今回の妊産婦の健康改善という研修を受けたタジキスタンの研修員は研修の中で、医療現場のモチベーションを保つことや、医療と住民の心理的距離を近づけることが大切と考えました。「地域住民の視線に立ってケアできるチームを表彰しよう」と計画し、自分の上司やチームを巻き込んで、協力者を募っていきます。彼女の計画が1年後どうなっているのか、経過を楽しみにしています。

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