知るジョイセフの活動とSRHRを知る

I LADY. とジョイセフ

2022.10.5

国際協力で培った経験を活かし、日本の若い世代をエンパワーする

I LADY. が始まったきっかけは、国際協力NGOとして活動してきたジョイセフが、日本の男女格差やSRHRをめぐる深刻な状況に気づいたことでした。

日本には優れた医療保険制度(国民皆保険)の仕組みや先進的な医療があり、世界で最も妊産婦死亡率が低い国のひとつと言えるでしょう。けれどもSRHRをめぐる状況や性教育、ジェンダー・ギャップなどの面では、今なお多くの課題を抱えています。

たとえば現在、国内では1日あたり398件*の人工妊娠中絶手術が行われており、その多くが「時代遅れ」と指摘される搔爬法(外科的に子宮の内容物を掻き出す手術)です。参考:令和2年度の人工妊娠中絶数の状況について/厚生労働省

日本では世界標準の安全な中絶法にアクセスできないだけでなく、世界で広く流通している、女性が主体的に使用でき、より確実性の高い避妊法が手に入りません。中学校の学習指導要領で「避妊、性交、中絶を扱わない」とされていることから、正しい性の知識を身につけられず、予期しない妊娠につながっているという指摘もあります。

特に女性は妊娠や出産が起こりうる性であり、自分の意思で生き方を選択するためには、性と生殖に関する自己決定権や、家族計画を含む予防の正しい知識とヘルスケアへの安全なアクセスが不可欠です。しかし今の日本では、多くの女性がその「当たりまえの権利」を手にできず、人生における主体性や、自分らしい生き方の選択が阻まれているのです。

こうした現実を変えるためのプロジェクトが「I LADY. 」です。特に、性と生殖に関する知識が今後の人生を大きく左右する、若い世代への支援に力を入れています。

 

“自分らしく生きる”ライフスキルを、日本でも

I LADY.は、主に日本の10〜20代へSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)について情報を伝え、一人ひとりのアクションのきっかけをつくる、国際協力NGOジョイセフの活動です。

主な活動は、全国各地でのワークショップや、ユース世代のアクティビスト「I LADY. ピア・アクティビスト」養成研修の実施です。著名人や専門家にご協力いただくことで、正確な知識や最新の情報を得られるプログラムを構築しています。

掲げるメッセージは「自分を大切にし、自分から行動し、自分の人生を自分で決める」。情報が真偽入り乱れて氾濫するこの時代だからこそ、真実を見極める力や、あらゆる選択肢の中から自分に合うものを選び抜く力=ライフスキルが求められます。

I LADY.では、SRHRに関する信頼性の高い情報を提供するとともに、日本そして世界における課題を広く共有することで、一人ひとりが自分と向き合い、性に関する思い込みや先入観に気づくきっかけを伝えてきました。

性と生殖は、尊厳であり、生命をつなぐこと、生きることそのものです。その「いのち」をどう生きるか、自分で考え、自らの意思で選択できる未来へ。I LADY.はSRHRの情報発信や場づくりを通じて、誰もが「自分らしい人生」を歩める社会づくりを後押ししていきます。

「I LADY. ピア・アクティビスト」とは

ジョイセフは半世紀以上にわたり海外で実施してきた支援プロジェクトにおいて、性と生殖が今後の人生を大きく左右する、ユース世代のエンパワーメントを大切に考えてきました。その要となるのは若者アクティビストの養成です。アクティビストたちはSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)について、ジョイセフの研修やさまざまなワークショップで学び、自ら実践するとともに、同世代の仲間たちに向けて発信しながらアクションを広げてきました。

若者アクティビストによる呼びかけや活動は、地域の仲間たちが意識や行動を変えるきっかけをつくります。多くの若者が性や健康に関する正しい知識を得て、性感染症や子宮頸がん、予期しない妊娠などを防げるよう、必要な検査や医療サービスを受けるようになりました。これらは自分の体への自己決定権や、自分らしい人生の選択につながっているのです。

国によって「ピア・エデュケーター」「ユースチャンピオン」などの名称で呼ばれるアクティビストたちは、ユース世代の声を集め、それを国の政策に届けるアドボカシーも積極的に行っています。こうした若者たちの活躍により、草の根から生まれる地域の変化と、国レベルでの大きな変化が生まれています。

ジョイセフは、国際協力で培ったこの経験と知見を活かして、主に日本のユース世代を対象とするプロジェクト「I LADY.」を2016年にスタートしました。SRHRに関する最新の動きや情報を幅広く提供するとともに、ユース世代の「I LADY. ピア・アクティビスト」の養成と支援を行っています。今後は国内外のアクティビストが意見交換や協力する機会を増やし、国境を越えたSRHRの普及活動を推進していきます。

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