知るジョイセフの活動とSRHRを知る

ジョイセフと8の市民団体が国連に提出したレポートとは。省庁、国会議員、市民を対象勉強会を開き、人権についての勧告受け入れを目指す【国連「UPR審査会」ジェンダー・SRHRに関する人権改善勧告院内勉強会から①】

2023.6.14

国連人権理事会は、人権侵害を防止し、総合的な政策ガイダンスを提供し、新しい国際規範を発展させ、世界のいたるところで人権順守を監視し、加盟国が人権に関する義務を果たせるように支援する機関です。(国連広報センター引用)

国連人権理事会では、全ての国連加盟国の人権状況を定期的に審査する仕組みがあります。この審査はUPR(普遍的定期的レビュー)と呼ばれ、4年半ごとに行われます。
2023年1月末に開催されたUPR日本審査に向けて、ジョイセフは国内外の8つの市民団体* と共同で、日本国内のSRHR(性と生殖に関する健康と権利)の課題をまとめた報告書を2022年7月国連に提出しました。

2023年7月には、第53回人権理事会で勧告採択が行われます。それに先立ち、日本政府に勧告を「受け入れる」採択を求めるため、ジョイセフと「#なんでないのプロジェクト」の主催で、共同レポートを執筆した市民社会が集まった勉強会を、衆議院第一議員会館にて行いました。

この記事は、院内勉強会での草野洋美(ジョイセフ)の発言をまとめたものです。UPRが国際社会において果たす役割と、今回のUPR日本審査に向けて、ジョイセフと8の市民団体が提出した、SRHR(性と生殖に関するの健康と権利)に焦点を当てたレポートについて、作成の経緯と内容について触れたものです。

*8つの市民団体:#なんでないのプロジェクト、#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト、SOSHIREN 女(わたし)のからだから、LGBT法連合会、一般社団法人Spring、持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)、Sexual Rights Initiative、Asia Pacific Alliance for Sexual and Reprroductive Health and Rights

国連加盟各国の人権状況を評価する仕組み「普遍的定期的レビュー」

国連人権理事会の仕組みであるUPR(普遍的定期的レビュー)には、国連加盟国がお互いに審査し、同僚や友人からのアドバイスを受ける、いわばピアレビューの意味合いもあります。

審査は、3つのレポート(被審査国の政府が作成したナショナルレポート、国連機関が作成したレポート、市民社会や独立人権機関が報告したレポート)に基づき、加盟国が被審査国の人権状況を評価します。我々9団体(※)もSRHR(性と生殖に関する健康と権利)に焦点を当てた市民社会レポートを作成しました

8つの市民団体とともに、SRHRに焦点を当てたレポートを提出

ちょうど1年前、2022年の5月に「#なんでないのプロジェクト」の福田和子さんに骨格となるベース部分を執筆してもらいました。

その後、日本国内の市民団体の方々に、各専門について詳細と具体的なデータを追加してもらうことで、さらに内容を充実させました。共同レポートは英語で最大5630単語までに納めなければいけないルールなので、ジョイセフが全体のバランスを調整や、英文の参考資料の追加などを行い、レポートの体裁を整えて最終化しました。。その後、7月に、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)にレポートを提出し、無事にウェブサイトに掲載されています。

Universal Periodic Review Fourth Cycle – Japan – Reference Documents

国連人権理事会の事務局も務めるOHCHR(国際連合人権高等弁務官事務所)によって、市民社会レポートをベースに作成した「サマリーレポート」も作成されました。その内容は、国連人権理事会のウェブサイトに作成された、各国のUPRの情報が掲載されるページで閲覧できます。私たちの報告書の内容は「JS4」として7回引用されています。

UPR日本のページはこちら

UPR審査の2ヶ月前にはプレセッションが開催されます。幸いにも登壇の機会を得て、2022年11月に、ジュネーブで各国代表部に向けたロビイング活動も行うことができました。プレセッションでは、市民団体は5分間のプレゼンテーションを行い、レポートの内容を紹介することができます。また、その前後には個別にアポイントメントを取り、国連加盟国の代表部の方々と面談することもできます。ノルウェー、アイルランド、オランダ、メキシコなど約10の国の代表部とも話すことができ、日本のSRHRの課題について意見交換しました。

日本が受け取った115カ国からの300以上の勧告

2023年1月31日に開催されたUPR審査において、日本は115カ国から300以上の勧告を受け取りました。その中には、24カ国からのSRHR(性と生殖に関する健康と権利)に関連する36個の勧告が含まれています。

具体的な勧告の内容としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 避妊薬へのアクセス向上や安全な中絶へのアクセス改善
  • 避妊薬に関する勧告:オランダとノルウェーの2カ国から
  • 安全な中絶へのアクセス改善に関する勧告:6カ国から。中には堕胎罪や配偶者の同意要件の廃止も含む
  • 性的指向、性自認、性表現(SOGIE)に基づく差別禁止に関する勧告:20か国から。前回のUPR(2017年)の勧告数(12カ国)と比べて増加
  • 刑法性犯罪改正に関する勧告:6カ国から
  • 包括的な性教育へのアクセスに関する勧告:2カ国から

2つのUPR勧告の採択方法と日本の回答のゆくえ

日本は7月上旬の第53回人権理事会会期中にこれらの勧告を採択します。日本以外にも12カ国が同時に採択を行う予定です。

UPR勧告の採択には2つの方法があります。一つは「Support」または「Accept」と呼ばれ、勧告を受け入れ、実施する義務を生じさせるものです。以前のサイクルで日本は、ジェンダー不平等の改善や婚姻可能年齢の引き上げ、女性や子供への暴力の撤廃などの勧告を採択しました。もう一つは「Note」と呼ばれます。これは留意するという程度の回答で、具体的な行動を伴いません。前回のサイクルではLGBT差別法や同性結婚に関する勧告に対して、この回答がされました。

G7広島のコミュニケにおいても、SRHRの重要性とその変革的な役割が強調されており、各国の首脳の固い決意をもって促進することがコミットされています。したがって、日本政府がきちんとその役割を果たすように、SRHR関連の勧告を受け入れるよう働きかけることは重要です。

G7コミュニケ

私たちは引き続き、性と生殖に関する健康と権利を実現するために声を上げていきます。

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