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自分らしい生き方の選択を守るために、「緊急避妊薬」への安全で迅速なアクセスを。 【国連「UPR審査」ジェンダー・SRHRに関する人権改善勧告 院内勉強会②】

2023.6.16

緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト共同代表・NPO法人ピルコン理事長
染矢明日香


 
国連人権理事会は、人権侵害を防止し、総合的な政策ガイダンスを提供し、新しい国際規範を発展させ、世界のいたるところで人権順守を監視し、加盟国が人権に関する義務を果たせるように支援する機関です。(国連広報センター引用

国連人権理事会では、全ての国連加盟国の人権状況を定期的に審査する仕組みがあります。この審査はUPR(普遍的定期的レビュー)と呼ばれ、4年半ごとに行われます。
2023年1月末に開催されたUPR日本審査に向けて、ジョイセフは国内外の8つの市民団体* と共同で、日本国内のSRHR(性と生殖に関する健康と権利)の課題をまとめた報告書を2022年7月国連に提出しました。

2023年7月には、第53回人権理事会で勧告採択が行われます。それに先立ち、日本政府に勧告を「受け入れる」採択を求めるため、ジョイセフと「#なんでないのプロジェクト」の主催で、共同レポートを執筆した市民社会が集まった勉強会を、衆議院第一議員会館にて行いました。

この記事は、市民レポート共同執筆団体のひとつ「 #緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」の染矢明日香氏による発言をまとめたものです。日本では、今なお低用量ピルやIUDなど近代的な避妊法の普及が遅れており、失敗する可能性が高いとされるコンドームが主な避妊法です。

避妊に失敗した時、最後のとりでとなるのは緊急避妊薬ですが、高額な費用と医師の診察を必要とするため、多くの若者は使用をあきらめざるを得ません。染谷氏は、若い世代が「予期しない妊娠」への不安に脅かされる日本の現状を説明し、切実なニーズがある緊急避妊薬への安全かつ迅速なアクセスを求めました。

*8つの市民団体:#なんでないのプロジェクト、#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト、SOSHIREN 女(わたし)のからだから、LGBT法連合会、一般社団法人Spring、持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)、Sexual Rights Initiative、Asia Pacific Alliance for Sexual and Reprroductive Health and Rights
 


 

緊急避妊薬の市販化を求める切実な声

本日は貴重な機会をありがとうございます。緊急避妊薬への安心・安全で迅速なアクセスの実現に向けて、市民、若者からの要望をお伝えします。

私は20歳のときに意図しない妊娠と中絶を経験したことをきっかけに、若者とともに、若い世代や保護者を対象として、性に関する健康の啓発活動を行っています。
そして、コロナ禍で10代の妊娠不安に関する相談が急増したことを背景に、緊急避妊薬へのアクセス改善を求める活動も行ってきました。

緊急避妊薬は、避妊の失敗や性被害に遭ったとき、できるだけ早く72時間以内に服用することによって、高い割合で妊娠を防げる薬です。世界約90カ国では処方箋なしに薬局で購入することができ、一部の国では無料で提供されています。
一方、日本では医師の処方箋が必要で、6000円から2万円もの費用が必要です。私達のもとには、「高額で買えない」「人目が気になる」「病院までの距離が遠い」といった様々なハードルによって「緊急避妊薬の入手を諦めざるを得ない」という声が数多く寄せられています。
私達はオンライン署名キャンペーンを立ち上げて、現在までに約17万人の賛同が集まっています。2021年には要望書を提出しまして、同年2021年10月に検討会で参考人として出席する機会をいただきました。ですが、未だに緊急避妊薬の市販化には至っていません。

2023年1月のパブリックコメントでは、異例の4万6000件の意見が集まりました。うち98%が、緊急避妊薬のスイッチOTC化への賛成意見でした。

国際基準の包括的性教育と避妊を推進し、一人ひとりの自己決定が尊重される社会へ

しかし5月に行われた検討会では、性教育の遅れや安易な使用に関する懸念が挙げられ、地域や薬局を限定しての試験的運用が提案されました。その具体的な期間や条件も決まらず、議論の先行きが不透明な状態が続いています。
緊急避妊薬は、誰もが手に入れられるべき必須医薬品としてWHOが指定していて、妊娠の不安を抱える全ての女性や少女にアクセスする権利があり、市販化が強く推奨されています。
今、この瞬間も、緊急避妊薬が入手できず、人生のコントロールを失う感覚で胸が押しつぶされそうになっている女性たちがいます。「検討する」という言葉だけで、肝心の議論は数ヶ月後、半年後、1年後と際限なく先延ばしになるたびに、今まさに緊急避妊薬を必要な人たちを取りこぼしてしまっていると思います。

こちらは2021年10月に政府に提出した要望書ですが、私達の願いは変わっていません。日本における性教育が不十分であるならば、なおさら、ユネスコの国際セクシュアリティ教育ガイダンスに基づく包括的性教育を早急に実現するべきです。
今年から「生命の安全教育」が全国でスタートしました。しかし、自治体や学校によって実施がされていないところも多いと聞いています。
避妊や性的同意等の内容の拡充をするために、学習指導要領における「歯どめ規定」を撤廃し、幼少期からの包括的性教育の導入と実施を進めてください。

最後に、日本では避妊法が非常に限定的で、避妊効果の高くないコンドームがいまだに多くを占めています。他の近代的な避妊法の選択肢の拡大、低用量ピル、IUD/ IUS等の低廉化やアクセス改善、性交後120時間以内の服用が有効なウリプリスタル酢酸エステル緊急避妊薬の認可も進めていただきたいです。また、若者が相談しやすいユースフレンドリーな相談先の整備もあわせて改善していくことで、誰にとっても健康と幸せに繋がるSRHR施策を実現していただきたいと思います。

充分な選択肢と情報提供があった上で、一人ひとりの自己決定が尊重され、健康と幸せにつながるSRHR推進の施策を求めます。

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