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【アイルランドからの提言】すべての人の人権が完全に尊重され、ジェンダーの不平等がなくなる未来へ。【国連「UPR審査会」ジェンダー・SRHRに関する人権改善勧告院内勉強会から⑧】

2023.7.28

アイルランド大使館 ピーター・ニアリー 大使館副代表

国連人権理事会は、人権侵害を防止し、総合的な政策ガイダンスを提供し、新しい国際規範を発展させ、世界のいたるところで人権順守を監視し、加盟国が人権に関する義務を果たせるように支援する機関です。(国連広報センター引用)

国連人権理事会では、全ての国連加盟国の人権状況を定期的に審査する仕組みがあります。この審査はUPR(普遍的定期的レビュー)と呼ばれ、4年半ごとに行われます。
2023年1月末に開催されたUPR日本審査に向けて、ジョイセフは国内外の8つの市民団体* と共同で、日本国内のSRHR(性と生殖に関する健康と権利)の課題をまとめた報告書を2022年7月国連に提出しました。

2023年7月には、第53回人権理事会で勧告採択が行われます。それに先立ち、日本政府に勧告を「受け入れる」採択を求めるため、ジョイセフと「#なんでないのプロジェクト」の主催で、共同レポートを執筆した市民社会が集まった勉強会を、衆議院第一議員会館にて行いました。

1月のUPR日本審査では、国連加盟国のうち24カ国から、日本へ向けてSRHR関連の勧告が提出されています。今回の勉強会では、その中から4カ国の大使館関係者を招待し、日本に勧告を出した理由や当該国におけるSRHRの理解・推進について話していただきました。

この記事は、勉強会でのピーター・ニアリー大使館副代表(アイルランド大使館)の発言をまとめたものです。

*8つの市民団体:#なんでないのプロジェクト、#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト、SOSHIREN 女(わたし)のからだから、LGBT法連合会、一般社団法人Spring、持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)、Sexual Rights Initiative、Asia Pacific Alliance for Sexual and Reprroductive Health and Rights
 


国民とともに歩んだ、アイルランドの長い社会変化と変革への歩み

ジェンダーの平等と女性と女児のエンパワーメントは、アイルランドの外交政策の重要な優先事項です。

その一環として、性と生殖に関する健康と権利がジェンダー平等と人権の促進と保護に不可欠であると、アイルランドは考えています。

アイルランドのナショナル・セクシュアル・ヘルス戦略(性の健康に関する国家戦略)は、セクシュアル・ヘルスとウェルビーイングを向上させ、セクシュアル・ヘルスへの悪影響を減らすことを目的としています。アイルランドに住むすべての人が生涯を通じて、質の高いセクシュアル・ヘルスに関する、情報、教育、サービスを利用できるようにするためです。

近年アイルランドは、リプロダクティブ・ヘルス/ライツを含め、社会の変化と変革を目指して、長く困難な旅路を歩んできました。

2018年、アイルランド国民は国民投票で、憲法第40.3.3「母体の生命に対する同等の権利に配慮した、胎児の生命に対する権利」の改正を決めました。この条項は、人工妊娠中絶の医療サービスをより利用しやすくするための法制化を、国会が自由に行えるという規定に置き換えるものです。

国民投票は圧倒的多数(66.4%)の賛成で、改正が可決されましたが、これに先立ち、法改正の方法について、国会内、市民の集会、そして広く社会全体で幅広い議論が行われました。このように段階を踏むことで、私たちはこのデリケートな問題について幅広いコンセンサスを得ることができました。このことは私たちの誇りであり、同様の課題を抱える世界の友人たちに共有していきたい。

ともに全力を尽くし、すべての人の人権が完全に尊重され、SRHRを含むジェンダーの不平等を真の過去に

今日のテーマの1つでもある、性別、性的指向、アイデンティティにかかわらず、すべての人の人権が尊重されることは、本当に重要と考えます。

今年1月に行われた日本の普遍的定期的レビューで、アイルランドは、差別禁止法を立法することにより、性的指向や性別による差別、特に同性家族の差別を撤廃するよう勧告しました。

この勧告は、LGBTIQ+の権利の促進・保護に関する近年のアイルランド自身の社会的変化と変革の歩みを踏まえたものです。

2015年、アイルランドは国民投票で同性カップルの結婚に賛成した世界初の国となりました。1993年まで同意のある男性同士の性的関係が犯罪とみなされていたアイルランドでは、多くの人にとって思いもよらないことでした。

同年、アイルランドはジェンダー承認法(Gender Recognition Act 2015)を成立させ、トランスジェンダーの市民がパスポートや運転免許証の更新、新しい出生証明書の取得、結婚の際に、自分の性別を自己申告できるようにしました。

2018年、アイルランドは「LGBTI+ユース国家戦略」を発表しました。この戦略は、LGBTI+の若者の生活を向上させ、彼らが日常生活で直面する可能性のある重要な課題に対処するために、政府横断的な取り組みを行うことを目指すものです。

LGBTIQ+の平等な権利の促進と保護は、現在、アイルランドの国内政策および外交政策の優先事項であり、二国間および多国間の場で人権と平等を促進するために、EUや他の志を同じくするパートナーと緊密に協力しています。

アイルランドと日本は、持続可能な開発目標に示されたものを含め、多くの基本的価値を共有しています。

持続可能な開発、持続可能な社会、そして国際的な平和と安全の確保は、ジェンダー平等と女性と女児の地位向上、そしてあらゆる形態の差別の撤廃の達成なしには真に達成され得ないことは、今やかつてないほど明らかです。

アイルランドも日本も共に、すべての人の人権が完全に尊重され、SRHRの側面を含むジェンダーの不平等が真に過去のものとなるような、明るい未来を築くことに全力を尽くしましょう。

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