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【性暴力被害者支援情報プラットフォームTHYMEより】 犯罪と認められない性暴力をなくすために、今、法改正を。【国連「UPR審査会」ジェンダー・SRHRに関する人権改善勧告院内勉強会から⑪】

2023.8.7

性暴力被害者支援情報プラットフォームTHYME / SRHRユースアライアンス メンバー 卜田 素代香(うらたそよか)


国連人権理事会は、人権侵害を防止し、総合的な政策ガイダンスを提供し、新しい国際規範を発展させ、世界のいたるところで人権順守を監視し、加盟国が人権に関する義務を果たせるように支援する機関です。(国連広報センター引用)

国連人権理事会では、全ての国連加盟国の人権状況を定期的に審査する仕組みがあります。この審査はUPR(普遍的定期的レビュー)と呼ばれ、4年半ごとに行われます。
2023年1月末に開催されたUPR日本審査に向けて、ジョイセフは国内外の8つの市民団体* と共同で、日本国内のSRHR(性と生殖に関する健康と権利)の課題をまとめた報告書を2022年7月国連に提出しました。

2023年7月には、第53回人権理事会で勧告採択が行われました。それに先立ち、日本政府に勧告を「受け入れる」採択を求めるため、ジョイセフと「#なんでないのプロジェクト」の主催で、市民社会が集まった勉強会を、衆議院第一議員会館にて行いました。

この記事は、勉強会に参加した「性暴力被害者支援情報プラットフォームTHYME(タイム)」の運営を担い、ジョイセフが事務局を務める「SRHRユースアライアンス」のメンバーでもある卜田素代香氏による発言をまとめたものです。 犯罪と認められない性暴力があることに触れ、刑法性犯罪に関わる法律の改正を、日本政府に求めました。

*8つの市民団体:#なんでないのプロジェクト、#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト、SOSHIREN 女(わたし)のからだから、LGBT法連合会、一般社団法人Spring、持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)、Sexual Rights Initiative、Asia Pacific Alliance for Sexual and Reprroductive Health and Rights
 


 
性暴力が反対勢力の士気を削ぐための手段として、戦争でも使われることをご存知でしょうか?性暴力は著しく1人の人間の尊厳を踏み躙り、その人が属するコミュニティまでも破壊する暴力です。

これほどの恐ろしい暴力であるにもかかわらず、日本では「犯罪とされる性暴力」と「そうでない性暴力」が存在します。加害者が知り合いというだけで、暴力を振るわれたときの状況が少し違うだけで、なぜその後が大きく変わってしまうのでしょうか。

数年前、私のそれまでの日々は突然変えられてしまいました。

たまたま加害者が顔見知りではなく、突然襲われるという”分かりやすい”被害でした。犯罪と認められ、加害者は責任を正当に負うことになりました。私は早い段階で社会的支援に繋げてもらい、PTSDと診断を受けた後、寛解に向かうことができました。

それでも失ったものは大きかった。回復の途上にある私が見たのは、自分の受けた支援が、今の社会では全く当たり前ではないということです。むしろ先進的な対応であったと知り、衝撃を受けました。

現在の法制度の下では、性犯罪の多くが表に出てきません。凄惨な暴力を受けた人のうち、たった数%しか必要な支援に繋がることができていません。それどころか、被害が認められることさえなく、苦しんでいる当事者が大勢います。

人が凄惨な被害から回復するときは、自分の経験した事実が社会にどのように受け止められ、加害者がきちんと責任を負ったかどうかということが、大きく影響します。

自分の受けた暴力を「あれは被害だった。自分は悪くなかったのだ」と認識することが回復のスタートになります。被害が被害と認められて初めて、支援に繋がれます。被害が認められない状況では、その人の記憶も感情も、身体の感覚も、”あのとき”に置き去りにされたままなのです。

なぜ自分がこんなにも苦しいのか、被害に遭ったことは自分の責任ではないと、自分は悪くないと、私たちは今まで教えてもらうことができませんでした。その暴力は仕方ないこととされてきたからです。

今、「同意のない性交は犯罪である」と、法をもって広く示してください。私たちのように犯罪被害に遭ったにも関わらず、何年も何十年も自分を責め続ける人がいなくなるように。

現在審議中の不同意性交等罪、公訴時効、性交同意年齢、グルーミング罪など刑法性犯罪に関わる法律を、当事者の声・現実に沿って改正することを日本政府に求めます。

※追記 -2023年6月21日に通常国会の閉会を迎えて-

7月13日、改正刑法が施行され同意のない性行為は犯罪となりました。

性暴力被害のその後は、被害が被害として認められるかどうかで大きく変わってしまいます。今回の刑法改正は、この社会が「被害のその後」を変えていけるか、その転換点だと思っています。

これまで”なかったこと”にされてきてしまった被害が、社会のなかできちんと認められ、誰もが本来受けられるべきサポートに繋がっていくよう、新しい刑法の運用や社会の意識変化を引き続き見ていきたく思います。

THYMEもそのなかで、被害回復のための情報を集め、発信、交換できるプラットフォームにしていきます。

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